製菓
「あ、お兄ちゃんだ。」
「ん?」
「何しに来たの?」
あれ、俺がおかしいのか?
確か一人っ子で妹も居なかったと思うが。
「オヤツを買いに来た。」
「一緒だね!」
「うん。」
テンションについて行けない。
「この人誰?」
蕨ちゃんの隣に現れて指を指す、蕨ちゃんと同い年であろう子。
「お父さんの生徒さんの鈴木お兄ちゃん。」
「へぇー」
なんだか照れくさいな。
「よろしく。」
「ん。」
その子は頷いただけで、お菓子の袋を開け出した。
淡白だ、と言うよりは少し寂しさを感じたが、俺も俺で買う物を選ぶ。
「何買うのー?」
「まだ決めてないよ。」
「じゃあ、これオススメだよ。」
「お、いいね。」
「こっちのも美味しいよ。」
「ほいほい。」
「それもいいよ!」
「これか。」
蕨ちゃんに従って色々なお菓子を小さい買い物カゴに入れていく。
「蕨ちゃん以外と策士。」
「え、何のこと?」
店番のお婆ちゃんと会計を済ませている間に、聞いちゃいけないような会話が聞こえた気がしたので、ここは一つ強がってみる。
「いいんだよ、正直で。はい、食べたかったんでしょ。」
「え!?いいの?お兄ちゃんが買ったのに。」
「気にしない気にしない。ここ前の料理のお礼とか先生にもお世話になってるからね。」
「ありがとう!」
嬉々としてお菓子を受け取る蕨ちゃんの横で
「じゃあ、私はコレがいい。」
「…正直なこって。」
呆れる、と言うには相手は子供で、奢る額もたかが知れてるのでまたお婆ちゃんのところに持って行った。
「なかなかいい男だね、あんた。」
「はあ、ありがとうございます。」
咄嗟で礼を言うだけだった。
ここで上手く返せたらモテたんだろうな、といつも思うだけ。
「ほい。」
「ん。」
受け取るだけでそっぽを向いた。
可愛げがないな、まあ小さい子にモテてもな。
「さて、じゃあ俺はもう帰るよ。」
「またね、お兄ちゃん!」
蕨ちゃんが元気よく手を振る。
眩しい。
その後ろで小さく手を振ってボソッと「ありがと」と言う生物。
以外と可愛げは有ったようだが、
俺はロリコンじゃないからな。
「じゃあな。」
たかだか駄菓子屋をちょっとカッコつけて後にした。
後でちょっと恥ずかしくなって寝る前に枕に顔を埋めた。
それとは別に、来週からのテスト返しにちょっと緊張して眠れなかった。
夢を見ながらいつの間にか夢を見ていた。
良い点数で有りますように。
翌週、
奇しくも、最悪の点数で補習が確定する所で目が覚めてしまった。
今回は短いですが切りが良かったので。
蕨ちゃんの友達は後でまた名前が出ると思います。
その時までには考えておきますちゃんと
それでは