成果
なんとなく、望に声をかけた。
「なぁ、一緒に帰らない?」
少し間が空いて、
「別にいいよ。」
承諾を得た。
と言っても、結局あんまり会話は無く、俺がずっと望を観察しているだけだった。
「ちょっと寄っていい?」
「ん?どこに?」
「あそこ」
特に行き先を指さなかったそこにはすぐについた。
「へぇー、こんなところにあったんだ。」
感心してると、望はさっさと買い物に向かった。
「何買うの?」
「ガムとチョコ。」
「あー、」
目的はなんとなく分かった。
ので、俺も便乗して買うことにした。
多少望と種類を変えて、同じものを買った。
「食いながら勉強してんの?」
「眠くなった時だけね。こっちはばあちゃんが好きだから。」
「へー、孝行してるんだな。」
「君は?」
「田舎の実家暮らしだからたまに顔見せるくらいかな。」
「まあ普通はそんなものだよね。」
「んだんだ。出来る孝行は出来る内にしておかないとな。」
「うん、人はいつ居なくなるか分からないからね。」
「それはそれでちょっと怖いな。
ま、じゃあ俺はここらで帰るわ。」
「分かった、頑張ってね。」
その一言に胸が熱くなった。
「ありがとう、お前もな。」
お互いにポリ袋を少し掲げて、激励と別れの挨拶を交わす。
ふぅ…
ため息ではない、やる気が湧いて来るのだ。
家に着いて早々に、勉強する体制に入って、
教科書を開いてままベッドに寝転がった。
やる気はあるのだが、睡魔があるのも事実。
幸いにも明日のテストまでの時間は全然あるので、
リラックスに託けて、睡魔に身を委ねた。
「…っは!!?」
学校に遅刻する夢を見て目が覚めた。
最悪の目覚めだ。
慌てて時間を確認すると短針が10の少し上を指していた。
最悪の目覚めだ。
寝汗と冷や汗が混じって、気持ちが悪い。
とにかく目を覚ますついでに風呂に入るついでに、起こしてくれなかった事に親に抗議しに行く事にした。
親は俺が、今日も先生の家で勉強していると思っていたらしい。
確かに親が家にいない間に帰宅したが、あんまりだ。とやり場のないイラだちを追い焚きした湯に浸かって誤魔化した。
まあおかげで徹夜出来るけども、それだとテスト中に眠くなるし、
下手に寝てしまったから眠気もそんなにないし、とあくびしながらボンヤリ考えていた。
まあ夜食は無いけど、買っておいてある菓子でも食いながら考えるか。
「ま、やるかなぁ…」
やる気を絞り出して、開いてあった教科書と向き合った。
深夜、丑三つ時って言ったけ、
ガムを噛みながら、テスト終わったら何するかを考えていた。
要は全然集中出来ていなかった。
気付けばあんなに寝たのにまた眠くなっていた。
怖いからアラームを忘れずにかけておいた。
ガムを吐き捨てると本格的に眠くなったので、1時間寝る事にした。
当然かのように次に起きたら6時前だったのを覚えている。
とにもかくにも顔を洗って歯を磨いて学校に向かった。
まだ取り戻せる。
分からないところはほとんど無いはず。
事務員さんと挨拶を交わしてなんとか1番乗りで教室に着いた。
そのすぐ後に望が来た。
1人じゃ集中出来そうにもなかったので、分からないところを望に聞いてみた。
そうしていると秋悟が来た。
「部活があるから赤点は取れないんだ。」
と、今日は秋悟の苦手科目のようだ。
俺はその秋悟よりも点数が悪いので先生の特別講習を受けたのだが。
まあ、なるようになるだろう。
結局2人で望に質問責めの3人で勉強していたが、教えるのも勉強になると望。
こういう勉強も悪くないな。
そうこうしているとクラスが段々と賑やかになっていく。
チャイムが鳴って先生が来て、プリント配ってさてテスト。
なんでだろうな、初日に比べて頭が軽い気がする。
解答も素直に出て来る。
眠気も皆無だし、そうだ、望みたいに見直しでもするか。
名前もちゃんと書いてあるし、解答欄のズレもない空白もない、なかなかいいんじゃないか?
なおも時間が余って、落書きをしてた。
問題用紙に落書きなんて何年振りだろうな。
久しぶりに無意識に書いた絵は、大きい棒人間と手を繋ぐ小さな棒人間。
そこに懐かしさを感じていると先生が見回りに来たので急いで消した。
「どうだった?」
秋悟が結果を聞きに来た。
「なかなか上出来だった。」
「俺は平均くらいかな。」
「俺も普通くらいかな。」
周助と合流して教室から出た。
「じゃあな。」
「お疲れさん。」
「じゃ、部活がんば。」
「おう。」
秋悟と下駄箱で別れた。
周助と適当に会話を交わして、ふと、駄菓子屋に寄ろうと思った。
「あれ、お前こっちじゃなかったっけ?」
「今日はこっちに用事があるから。」
「なんの?」
「買い物。」
「なんの?」
「おやつ。」
「なんの?」
「はぁ、俺のおやつ。」
「まあまあ、怒んなって。じゃあな。」
「うん、じゃあね。」
周助と別れて駄菓子屋に向かった。
すると、駄菓子屋の出入り口に最近見知った子がいた。
「あ、お兄ちゃん。」