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今際の夢  作者: lycoris
今際の夢
78/140

いつかまた

陰府乃さんの家にあった、まだ幼さが残る

恐らく中学生くらいであろう少年の写真。

どことなく面影がある。

彼を知っている。


なのに



「終わった〜。」

「お疲れさま。」

「アイス食べるかー?」

「待ってましたー!」

「じゃあ俺ももらおうかな。」

「あいよ。」

「じゃあ食べながらの移動になるね。」

「どこに行くんだ?」

「公園!」


肌寒い公園にアイスを加えて3人。

未鏡さんが嬉々としてバケツから取り出したのは花火セット。

「じゃあ水汲んできて下さい。」

「了解。」

空になったバケツを手渡された。


水を汲んでくる間に準備は終わっていた。

「早く、早く、」

今日はいつもと違って子供っぽい未鏡さん。

「落ち着けって、危ないから。」

いつにも増して姉御肌な陰府乃さん。

そうか、

 彼が

汀 

だ 忘

っ て

た い

  た


花火の光に目が眩んで、

眩しい光に

覚えのない光を思い出し

その光の先に

 と

  三四五


こんな思いを

想いを忘れるはずがない

それでも何も

感じられない

『鈴木 修也』

その名前を思い出した。

記憶はある。

思いはない。

それでもその思いに目頭が熱くなる。

自分じゃない誰かが泣いている。

それでもなお。

それでもなお。

泣いている理由が分からない。


「先輩、花火終わってますよ?」

「そうだな。」

「どうしたんだよ?」

「汀」

「は?」

「三四五」

「本当にどうしたんだ?」


「思い出したんだ。」


「全部全部。」

「それでもやっぱり、どういう感情(きもち)だったのかは思い出せない。」

「それは、俺じゃないから。」

「ごめんね、七海ちゃん。」

「俺は修也じゃないんだ。」


今にも泣き出しそうな顔で謝る悠也。


「…。」

あなたが誰だろうと私には関係ない。

あの人が誰だったかも関係ない。

心だろうと

殻だろうと

違うくらい関係ない

あなたがそこにいる

それだけでわたしは


一呼吸の中に思い浮かんだ言葉達は

発せられる事もなく

飲み込んだ。


「それがどうした。

もう終わった事だから。

辛いから忘れてたんでしょ?

苦しいなら思い出さなくてもいいよ。

私はそんなことを望んでいない。

きっと、二三四先輩も。」


「だから、忘れててもいい。

あなたが生きていてくればそれでいい。」


)

「僕は…」

みんな俺に忘れてくれという

僕は覚えていたいのに

それでもなお思い出したのに


「僕は生きていてもいいのかな?」

「いつかまた生きて会いましょう。」


気付いたら2人とも泣いていた。




この後は泊まりの予定だったが、

このまま解散となった。

「動かないでよ。」

「え、何するんだよ?」

七海に胸ぐらを掴まれる。

「目、閉じて。」

言われるがまま閉じる。

グッと引き寄せられ、


ブチっと糸が切れる音がした。

思わず目を開けると制服の第2ボタンが引きちぎられていた。

「今までこういう事には縁がないと思ってたけど、

案外捨てたものじゃないね。」

そして解放された。

「これ縫うの大変なんだぞ。」

「二三四先輩って裁縫が得意なんだって、知ってた?」

「知らなかったわ。というか返して。」

「これは貰っとく。どうしても返して欲しいなら、

取り返しにくればいい。」


「悠也先輩、お世話になりました。」


暗がりにあっても眩しい限りのその笑顔を

僕は忘れない。忘れたくない。


)

いつかまた、忘れた頃に出会って

そのときにはこの言葉の続きを

あなたの事が



学ランにはロマンがありますね

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