いつかまた
陰府乃さんの家にあった、まだ幼さが残る
恐らく中学生くらいであろう少年の写真。
どことなく面影がある。
彼を知っている。
なのに
「終わった〜。」
「お疲れさま。」
「アイス食べるかー?」
「待ってましたー!」
「じゃあ俺ももらおうかな。」
「あいよ。」
「じゃあ食べながらの移動になるね。」
「どこに行くんだ?」
「公園!」
肌寒い公園にアイスを加えて3人。
未鏡さんが嬉々としてバケツから取り出したのは花火セット。
「じゃあ水汲んできて下さい。」
「了解。」
空になったバケツを手渡された。
水を汲んでくる間に準備は終わっていた。
「早く、早く、」
今日はいつもと違って子供っぽい未鏡さん。
「落ち着けって、危ないから。」
いつにも増して姉御肌な陰府乃さん。
そうか、
彼が
汀
だ 忘
っ て
た い
た
花火の光に目が眩んで、
眩しい光に
覚えのない光を思い出し
その光の先に
汀
と
三四五
こんな思いを
想いを忘れるはずがない
それでも何も
感じられない
『鈴木 修也』
その名前を思い出した。
記憶はある。
思いはない。
それでもその思いに目頭が熱くなる。
自分じゃない誰かが泣いている。
それでもなお。
それでもなお。
泣いている理由が分からない。
「先輩、花火終わってますよ?」
「そうだな。」
「どうしたんだよ?」
「汀」
「は?」
「三四五」
「本当にどうしたんだ?」
「思い出したんだ。」
「全部全部。」
「それでもやっぱり、どういう感情だったのかは思い出せない。」
「それは、俺じゃないから。」
「ごめんね、七海ちゃん。」
「俺は修也じゃないんだ。」
)
今にも泣き出しそうな顔で謝る悠也。
「…。」
あなたが誰だろうと私には関係ない。
あの人が誰だったかも関係ない。
心だろうと
殻だろうと
違うくらい関係ない
あなたがそこにいる
それだけでわたしは
一呼吸の中に思い浮かんだ言葉達は
発せられる事もなく
飲み込んだ。
「それがどうした。
もう終わった事だから。
辛いから忘れてたんでしょ?
苦しいなら思い出さなくてもいいよ。
私はそんなことを望んでいない。
きっと、二三四先輩も。」
「だから、忘れててもいい。
あなたが生きていてくればそれでいい。」
)
「僕は…」
みんな俺に忘れてくれという
僕は覚えていたいのに
それでもなお思い出したのに
「僕は生きていてもいいのかな?」
「いつかまた生きて会いましょう。」
気付いたら2人とも泣いていた。
この後は泊まりの予定だったが、
このまま解散となった。
「動かないでよ。」
「え、何するんだよ?」
七海に胸ぐらを掴まれる。
「目、閉じて。」
言われるがまま閉じる。
グッと引き寄せられ、
ブチっと糸が切れる音がした。
思わず目を開けると制服の第2ボタンが引きちぎられていた。
「今までこういう事には縁がないと思ってたけど、
案外捨てたものじゃないね。」
そして解放された。
「これ縫うの大変なんだぞ。」
「二三四先輩って裁縫が得意なんだって、知ってた?」
「知らなかったわ。というか返して。」
「これは貰っとく。どうしても返して欲しいなら、
取り返しにくればいい。」
「悠也先輩、お世話になりました。」
暗がりにあっても眩しい限りのその笑顔を
僕は忘れない。忘れたくない。
)
いつかまた、忘れた頃に出会って
そのときにはこの言葉の続きを
あなたの事が
学ランにはロマンがありますね




