想 望
「いや、さすがに『愛してる』はないだろ。」
「僕もそう思う。」
「…」
「だよね〜」
「てか部活サボってそんな話ししてたのかよ。」
「あ、」
「墓穴を掘ったね。」
「あはは〜」
「笑って誤魔化すな。」
「まあ絶対出席って訳でもないんだけどね。」
「せめて一言欲しかったなぁ〜?」
「何あってからじゃ遅いからね。
それに、困り事なら力になれるかもしれないし。」
「ありがとうございます、以後気をつけます。」
「それで、先輩の気になる人って結局誰なんですか?」
さっきまで黙っていた未鏡さんが突っ込んだ。
「蒸し返さないでよぉ」
「「気になる気になる」」
昨日サボったツケか…
「…結局、結局…昨日言われたのがきっかけだけど、
今は陰府乃さんと数田さんかな。」
「へ〜、2人なんだ。」
「似てるところがあるからね。」
「そうか〜?」
「2人ともお姉ちゃんだし、しっかりしてると思うよ。」
「へ〜数田さんはお姉ちゃんだったんだ。」
「あ〜、そうだったな。
それに2人とも弟と妹を「杏くん」
あっ、悪い…」
「俺が忘れてるのがいけないんだけどな。」
「あんまり自分を責めちゃダメだよ。」
「ありがとうございます…」
「…。」
「それにしても変な奴だな。
そいつは何者なんだよ。」
「俺も気になってたから昨日聞いたら『願いを叶える神』って、言ってたよ。」
「また突拍子無いね。」
「何かお願いしたのか?」
「ずっと道路に仰向けで寝転がってるだけなのに、既に願いを叶えているって言ってた。
だから、俺の願いは叶えられないってさ。」
「…それってどっちの意味ですか?」
「「え?」」
「確かにどっちの意味とも取れるね。」
「どういう事なの、金ちゃん?」
「【願いは1人1回までで、悠也くんの願いは既に叶えている】
と
【既に誰かの願いを叶えている途中で、2人以上は同時に叶えられない】
だね。」
「「なるほど」」
「私が思ったのは前者はほぼ同じですが、後者が
【先輩の願いを既に叶えている真っ最中】
ですね。
2人以上同時に叶えられるかは状況的には少し違う気がするので。」
「あー!確かにね。」
「「なるほどなるほど」」
「それでなんてお願いしたんですか?」
今日の未鏡さんはやたらグイグイくる気がする。
「…まあ、『忘れている記憶を思い出したい。』ってとこかな。」
「「あぁ〜…」」
なんとも微妙な空気になってしまった。
聞いてきたそっちが悪いんだからな。
「なんでそのお願いなんですか?」
「自力で思い出せたら、それは苦労しないけど、」
「他人任せでいいんですか?」
「まあ、願掛けみたいなもの?
実際に叶うかどうかよりも、今はそれが何よりの望みだから。」
「思い出した後はどうするんですか?」
「それは…まあ…思い出してみないと分からないんじゃないか?」
「…」
「兎にも角にも、寝ても覚めても、今のままじゃスッキリしないしハッキリしない。
かと言って、出来ることもない。
だからおいおいその内思い出して行きますよ。」
「そのわざとらしいセリフはどうしたの?」
「昨日1日演劇部の部長と一緒にいたからですかね。」
「なるほど。」
部活後の帰り道、
ふと2人きりになったので聞いてみた。
「未鏡さんは俺の話を信じてるの?」
「どうしてそう思うんですか?」
「や、今日はやけに質問された気がして。」
「私は先輩を信じてますよ。」
真正面から言われて少し戸惑った。
「あ、ありがとう。」
「それに、まだまだ全然先輩の事知らないですから。
先輩は私の事どのくらい知ってますか?」
「う〜ん、全くって程ではないけど、確かにあんまり知らないね。」
「ならもっと私の事を知って下さい。
先輩の事をもっと教えて下さい。」
これってもしかして
「この後暇ですか?」
「あ、うん。」
帰って夕飯の準備をするくらい。
「お腹空いてませんか?」
「うん。」
「奇遇ですね、私もです。
せっかくだし、一緒に食事でも?」
「うん。」
もしかしてもしかしてもしかする?
のか?




