て ス と
昨日の晩はテスト内容をしっかりと振り返った、はず、なのに。
何故だ、何故、
いざテストになると空欄部分が空欄になってしまうんだ。
思い出せない。
文章丸暗記する勢いで覚えたはずなのに、テストに出て来ている空欄がそのまま暗記したはずの文章までも空欄にしてしまう。
周りの削られている文章ならハッキリと思い出せるのに。
何故に何故だ。
結局埋まったのは記号問題だけ。
終わった。
仮に記号全問正解していたら赤点は回避のはずだが、そんな奇跡は起こらない。
悩んでいるうちにだんだん腹痛を催しはじめ、苦し紛れに突っ伏していると次に意識が戻った時にはチャイムが鳴り響いていた。
あ
思わず声が漏れた。
後ろからの回収が始まっているので、悪足搔きはできず、が名前をちゃんと書いてあるかだけを確認するにはギリギリ間に合った。
自分で書いた自分の名前を見て再度認識する。
字が汚い。
何度かそれのせいで点を落としたことがある。
先生が俺の書いた字をそうとは読めないというだけで。
が、いまさら書道などする気もないし、努力なんて浮かばず、先生の理解力が足りないと押し付けた。
そんな事は無駄なんだとどこかでは気付いているのに。
だから、勉強するのも嫌。
言い訳ばかり並べてきたツケが回ってきている。
留年。
2年に上がれたが、既に受験は難しいし就職は厳しいと言われた。
暗に今年も留年の可能性があるとも言われた。
悔しかった。
が、今さら。
でも、それでも間に合うと先生は俺を見捨てなかった。
それに応えるために、今度は先生から教えてもらった事全てを出し切った。
テスト1日目は2教科のみ。
ホームルームが終わると支度をしてすぐに帰った。
秋悟や周助に声をかけられたが、寄り道してる暇はないので断った。
今日の事を活かして、全部を覚えた上で、重要箇所とその関連性があるものをより記憶した。
寝るときも、意識が消えるまでなるべく頭の中で復唱していた。
目覚ましが鳴る前に起きた。
昨日よりは調子がいい。
寝る前にすぐ家を出れる準備を済ませてあったので、顔を洗い着替えとトイレを済ませて家を出た。
コンビニで肉まんと眠気覚ましのドリンクを買い、急ぎ足でブツブツと呟きながら学校を目指した。
昨日より早く来たはずなのだが、校門は既に開いていた。
昇降口がまだ閉まっていたので待っている間に教科書を眺めて居ると後ろから用務員さんが来た。
「おはよう。今日も早いね。」
「あ、おはようございます。」
「いつも早いの?」
「いえ、今回が初めてです。」
「そうかい。まあ頑張れよ。」
用務員さんは鍵を開けてから、俺の目を見て応援してくれた。
「はい。」
やはり今日は調子が良さそうだ。
荷物を片付け教科書を開くとちょうど望が教室に入って来た。
「おはよう。」
「おはよう。今日も早いんだね。」
「まあね。」
それだけ交わして
今日も今日とて早朝の教室には静寂が流れていた。
それはそんなに長くは続かない。
もしかしたら長いのかもしれないが、俺にはそう感じられない。
次々の人々が教室に増えていき、同時に騒めきが増していく。
いつしかそれはいつも通りのものになる。
「やべぇわ、勉強してねぇ。」
から、
「ここの答えは...」
など様々な声が耳を通り抜けていく。
その内、有用なものだけに意識を傾けていると、元やっていた事に集中出来なくなっている。
同時に出来るほど器用じゃないし、騒音の中集中出来るほど器用でもない。
ふと、望はどうだろうと視線をやると、秋悟達が絡んでるが適当に流しながら手元の本を捲っている。
たまにつまらない奴だと思う時もあったが、なるほどそういう訳か。
俺には出来ないな、と自嘲気味に自分の勉強に戻ろうとすると望と視線が交差した。
望はすぐに視線を外すと黒板の上を見上げた。
つられて見ると、チャイムが鳴るまで5分前だった。
それから忙しなく暗記に励み最後の最後まで教科書にかじりついていた。
おかげか、今日のテストは昨日より楽に感じた。
先生が読書に夢中なのを確認して、望の方を見やる。
まだ最初の方の問題を解いてるようにも見えたが、そのスピードは早く、
秋悟たちは既に眠っている。
自分もうつ伏せになってやっと、それは見直しだと気付いたが埋めた頭は重い。
きっと大丈夫だろう。
結局3科目とも見直しする事は無く、今日もテストが終わった。
明日でやっと最後だ。