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今際の夢  作者: lycoris
今際の夢
69/140

つれしょ

相変わらず教室内は賑やかだ。

理由は転校生のとりまき。

転校生(かれ)自身はそれほど大声で騒いでいるわけではないようだが。

今朝は何だか頭が曇るようにスッキリとしない。

頭痛とまではいかないが、気怠い。


そこに秋悟が笑顔で現れた。

「おはよう。昨日は悪かったな。」

親指を突き立てて連れションの合図。

別に尿意はないが、男の文化?だ。

大声では話せないけど、かと言って最重要な話でもない。

用を足しながらで済む程度の大事な話。


手を洗いハンカチで手をふく。

「杉元は、演劇部(ウチ)の副部長は本当に演技のつもりだった()()()

それでも、俺は調子に乗りすぎたみたいだ。

改めて、ごめん。」

その謝罪は同年齢とは思えないほど様になっていた。

「あー、もういいよ。」

そのおかげで昨日は…

「副部長にも俺は怒ってない、許したと言っといてくれ。」

「悪いな、こんどラーメンでも奢るよ。」

「大盛りな」

「任せとけ!」

一応の仲直り。

この歳になって本気で喧嘩する事の方が珍しい。

「それで今日も弁当は貰ったか?」

「いや、まだだけど、さすがに毎日は大変だろう。

そういえば何で俺なんかに作ってきてくれるんだ?」

「かー、お前ってばそんな鈍チンだったのか?」

「…お前がそこまで煽るって事は分からない訳でもないが、それでも理由が、それに至るまでの出来事(イベント)があったっけ?って。」

「まあ俺も深くまでは知らないけど。」

「少なくとも浅くは知ってるんだな。」

「あ、嵌められた。」

「昨日の朝の言動(えんげき)を振り返ればあからさまだからな。」

「あれを演技と見破るとは。

ぜひ演劇部に。」

「部員はもう十分だろ。

少しはこっちにも分けて欲しいくらいだ。」


「あれ?急にやる気なったんだな。」

「あ?」

「ん?」

「あら?」

ばったりと廊下で出会った。

4対2。

比にすると2:1。

圧倒的に不利だ、逃げよう。

すっと手が伸びた。

くるとわかっていた。

下手に挨拶される前に(かわ)そうと思っていたのに。

体が動かなかった。

「すっかり腫れが引いて、良かったですね。」

白くて、綺麗で、柔らかい手が頰に触れた。

「ん、どうも。」

なんて返せばいいか思い浮かばない。

「それでは、鈴本くん。失礼しますね。」

「ん、じゃあな。」

少し名残惜しいが、それでもまだいい匂いがした。



教室に戻ると周助が寄ってきた。

「ようよう、おはよう2人とも!」

「おっす、周助。」

「おはよう」

「修、あ、悠也はどうかしたんだ?

いつもと様子が違くない?」

「ハイエナのお前と違ってモテ期真っ盛りの盛りなんだよ。」

「違わい」

「え、嘘だろ…!?」

衝撃を受ける周助。

彼の場合は演技(おおげさ)に見えても本当の場合が多い。

「お盛んで、見ろよ、もうフェロモンダダ漏れだろ?」

「んなわけ」

「なんて羨ましい…!!」

机の中に違和感を感じた。

出すと見覚えのある布に包まれた箱。

恐らく入れた本人の方を振り返ると、こちらに気付いて手を振った。

「だろ?」

「なんて!!羨ましい!!!」

「違わい?」

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