つれしょ
相変わらず教室内は賑やかだ。
理由は転校生のとりまき。
転校生自身はそれほど大声で騒いでいるわけではないようだが。
今朝は何だか頭が曇るようにスッキリとしない。
頭痛とまではいかないが、気怠い。
そこに秋悟が笑顔で現れた。
「おはよう。昨日は悪かったな。」
親指を突き立てて連れションの合図。
別に尿意はないが、男の文化?だ。
大声では話せないけど、かと言って最重要な話でもない。
用を足しながらで済む程度の大事な話。
手を洗いハンカチで手をふく。
「杉元は、演劇部の副部長は本当に演技のつもりだったらしい。
それでも、俺は調子に乗りすぎたみたいだ。
改めて、ごめん。」
その謝罪は同年齢とは思えないほど様になっていた。
「あー、もういいよ。」
そのおかげで昨日は…
「副部長にも俺は怒ってない、許したと言っといてくれ。」
「悪いな、こんどラーメンでも奢るよ。」
「大盛りな」
「任せとけ!」
一応の仲直り。
この歳になって本気で喧嘩する事の方が珍しい。
「それで今日も弁当は貰ったか?」
「いや、まだだけど、さすがに毎日は大変だろう。
そういえば何で俺なんかに作ってきてくれるんだ?」
「かー、お前ってばそんな鈍チンだったのか?」
「…お前がそこまで煽るって事は分からない訳でもないが、それでも理由が、それに至るまでの出来事があったっけ?って。」
「まあ俺も深くまでは知らないけど。」
「少なくとも浅くは知ってるんだな。」
「あ、嵌められた。」
「昨日の朝の言動を振り返ればあからさまだからな。」
「あれを演技と見破るとは。
ぜひ演劇部に。」
「部員はもう十分だろ。
少しはこっちにも分けて欲しいくらいだ。」
「あれ?急にやる気なったんだな。」
「あ?」
「ん?」
「あら?」
ばったりと廊下で出会った。
4対2。
比にすると2:1。
圧倒的に不利だ、逃げよう。
すっと手が伸びた。
くるとわかっていた。
下手に挨拶される前に躱そうと思っていたのに。
体が動かなかった。
「すっかり腫れが引いて、良かったですね。」
白くて、綺麗で、柔らかい手が頰に触れた。
「ん、どうも。」
なんて返せばいいか思い浮かばない。
「それでは、鈴本くん。失礼しますね。」
「ん、じゃあな。」
少し名残惜しいが、それでもまだいい匂いがした。
教室に戻ると周助が寄ってきた。
「ようよう、おはよう2人とも!」
「おっす、周助。」
「おはよう」
「修、あ、悠也はどうかしたんだ?
いつもと様子が違くない?」
「ハイエナのお前と違ってモテ期真っ盛りの盛りなんだよ。」
「違わい」
「え、嘘だろ…!?」
衝撃を受ける周助。
彼の場合は演技に見えても本当の場合が多い。
「お盛んで、見ろよ、もうフェロモンダダ漏れだろ?」
「んなわけ」
「なんて羨ましい…!!」
机の中に違和感を感じた。
出すと見覚えのある布に包まれた箱。
恐らく入れた本人の方を振り返ると、こちらに気付いて手を振った。
「だろ?」
「なんて!!羨ましい!!!」
「違わい?」




