寸劇
「やい」
「やあ」
「お前だな!」
「俺です。」
「あ、鈴木先輩こんちわ!」
「よう、俺は鈴本だ。」
「あれ?」
「まあまあ座れや。」
「じゃあ鈴本先輩も飲みますか?」
「ありがとう、お構いなく。」
「んで?」
「んで!どうなってるのか説明してもらおうか。」
優雅に演技っぽく紅茶を飲む秋悟。
要らないと言ったのにわざわざ用意してくれた演劇部の1年。
副部長らしい。
そのまま3人でテーブルを囲い
すごい、紅茶、美味しい。
「俺は何もしてないよ。」
「じゃあ今日のアレはどう説明するんだよ。」
「アレじゃ分からないなぁ?」
「っ!
弁当だよ、数田さんの弁当!」
「あー、ソレ。
美味かったか?」
「ああ、美味かったよ。
美味かったけど、けども。」
「けど?」
「なんで今日いきなりなんだ。
そ
して、思い返すと今日の朝のお前は怪しかった。」
「言いがかりかよ。」
「いや、あの時のお前は雑だった。
つまりは演技だった。」
「…ほう?」
「つまりはお前が1枚噛んでいる!」
「…っくっくっく…
バレてしまったならしょうがない。
名推理だよ。」
「お前、何が目的だ!」
「目的?そんなものはない!」
「まさか愉快犯か!?
タチが悪いな、おい。」
「まあ待ちたまえ。
俺は彼女に聞かれた事を答えただけだ。
俺は何もしていない。」
あー、めんどくせ。
ドヤ顔の秋悟を他所目に紅茶のお代わりを貰って一旦気を落ち着かせる。
副部長は俺たち2人のやりとりを嬉々として観ている。
「それで、余った弁当でも持ってきたのか?」
「は?美味かったから全部食ったよ。」
「さすがマザコン。」
「は?何言ってんだよ?」
「まあそう照れるな、照れるな。
ついにお前にも母以外の女を知る日が来たんだよ。
春が、来たんだよ!」
「だから!なんでそこで俺の母親が出てくるんだよ?」
「てっきり俺は弁当が被った事への講義かと思ったけど?」
「被る?何の話だよ。
それと俺の母親となんの関係があるんだよ?」
「ん?」
「あ゛?」
秋悟は俺に喧嘩売ってるのか?
俺が何かコイツに恨まれる事したか?
それとも最初からコイツは「はい!」
副部長が元気よく手を挙げた。
2人の視線が同時に集まる。
「ここで一度話を整理してみませんか?
アレとかソレじゃ分からないです。」
「君には関係ない話だ」
「演劇部には関係のない話ですよね?」
副部長の表情が変わった。
「…」
「今のは一触即発の空気でした。
そう言うのであれば、部室以外で話しあって下さい。」
「だってさ?行くぞ秋悟。」
「おい「部長は置いて行ってください。
今は部活動中です。
邪魔をするなら1人で帰って下さい。」
「…」
秋悟を一瞥して部室を出た。
ここで俺が反論しようが、摑みかかろうが、このまま帰ろうが、
全部同じだ。
「そういう寸劇だったんですよね?」
「は?」
「さすが部長。気付きませんでしたよ。」
「…。」
「ほら、追いかけなくていいんですか?」
「部活動中じゃなかったのか?」
「部員の尻拭いは部長の役目じゃないんですか?」
「それもそうだな。
…いや、大丈夫だと思う。」
「何がですか?」
「あいつは多分大丈夫だ。」
「本当ですか〜?」
「ああ。」




