卵焼き
それからは特に何事もなく至っていつも通りにお昼。
と思っていたが、周助が転校生の所に行き、
秋悟は部活内で用があるらしく今日の昼は1人だった。
部活、そういえば別のクラスの田淵がそんな事言っていたな。
確か、『オカルト天文部』いや、同好会だった気がする。
とりあえずそこに行ってみることにした。
お弁当を持って。
「お」
部室の鍵は開いていた。
と言うよりは理科室なのだが。
中には先客が2人いた。
扉を開ける音で2人とも手を止めてこちらを見る。
「?」
「あ。」
後輩女子2人だった。
後輩と呼んでいいのかは分からないが、
互いに名前は知っている。
「あ、ごめん。」
後輩の、それも女子2人の間に、
男1人で入って行けるほどの対女性経験は持っていない。ので、撤退する。
「待った!!」
閉めようと扉に手をかけたが、惜しくも呼び止められてしまった。
「いつになったら汀に会いに行くんだよアンタ。」
よりによって答えづらい事を。
出来ればその事に触れずに去りたかったけど。
「…俺が行ってもしょうがないだろ?」
…この際、この際だ。スッキリさせておこう。
向こうにはもう1人いる。
俺が悪者になればそれで終わる話だろう。
「本気で言ってんのか?」
後輩とは思えない迫力。
「ああ、本気だ。
理由はこの前言った通りだ。」
でも、この際。
ここで言わなければいけない気がする。
「ふざけんな。
ふざけんな。」
「…」
「じゃあなんの為にアンタは命をかけたんだ?
「誰の為だよ!?」」
「…」
「陰府乃さん」
「どうして私の手をとった!?
「どうして汀の手をとって!?
「覚えていないはずはない!
「忘れる訳がない!!
「じゃあ私たちはなんだったんだよぉ!!」」」」」
「っ」
「っ!!?」
「え?」
「本当なんだな?」
「ああ」
「嘘はないな?」
「ああ」
「後悔は、ないんだな?」
「、--、ああ。
…ごめん。」
「陰府乃さん、相手は年上だよ。」
「ごめん、なさい。」
「これで、2人とも仲直り出来たよね?」
「…。」
「出来ましたよね?」
「あ、ああ。
元は俺のせいだけど…」
「もう責めないよ。
その代わり、せめて、せめて汀に挨拶だけはしてくれ。
アンタが誰であれ。」
「陰府乃さん?」
「ん、んん。
た、…お願い、します。」
「分かった。
俺でよければ行くよ。」
「ありがとう!
ございます。」
「それでは一緒に食べましょう。」
「俺もか?」
「ええ。当然。」
「いや、俺は」
「仲直りしたんですよね?
何か問題でも?」
「あ、いや、その、」
「男ならハッキリしろよ。
して下さい。」
「こっぱずかしい」
「じゃあこれを機に慣れましょう。」
「えー」
「ほら、卵焼きやるから。」
「そういう事なら。」
「あっ、それでいいんだ。
じゃあ私のもあげますよ。」
「や、さすがに貰ってばっかりは。」
「む、私のは食べれないと?」
「そういう事じゃなくて。」
「お、なんだアンタも弁当じゃん。
見せて見せて。」
「あ、おい。」
「で、私のは食べないんですか?」
「以外と女子っぽいな。」
「分かった分かった。いただきます。」
「中身はザ男子って感じだな。」
「どうですか?美味しいですか?」
「美味い美味い。」
「この隙に卵焼き貰い!」
「なら私も。」
「あっ!おい!」
「中々いい腕してるじゃねぇか!」
「うんうん、美味しいですよ。」
「ほら、約束通り私のもやるよ。」
「あ、うん。ありがと。」
「美味いだろ?」
「…うん、うまいうまい。」
「そうだろそうだろ?」
「うん、うまいうまい。」
「そんなに褒めても唐揚げくらいしかあげないぞ?」
「うん、うまいうまい。」
「あ、私にもちょうだい。」
「そしたら私のがなくなるだろ。」
「じゃあ好きなのと交換で。」
「それならまあ。」
「うん、うまいうまい。」
「「ごちそうさまでした」」
「でした」
「それでは私達はこれで。
同好会、顔出すだけでも来て下さいね。」
「汀にはしっかり顔出してくれ、下さいよ。」
「もう、陰府乃さんは。」
「別に脅しで言ってるわけじゃねぇよ。」
「なら良いけど。」
2人が遠ざかっていく。
俺も自分の教室に戻った。
自分の席に着く。
そこに数田さんがやって来た。
「おかえり、どこ行ってたの?」
「部室に。」
そう言って弁当箱を何気なく返そうとした。
「また演劇部の手伝い?」
「いや。」
「どこかの部活に入ってたっけ?」
「いいや。」
「んー?じゃあどこの部室に行ってたの?」
「同好会の。」
「あー、それじゃあ部室だけど、部じゃないね。」
「そういう事。」
「それで何の同好会なの?」
「…天文と…オカルトの」
「掛け持ちしてるんだ。」
「いや、2つで1つの同好会の」
「へー。変な組み合わせだね。
あ、馬鹿にしてふとかじゃないよ。」
「うん、俺も変だと思う。」
「だよねー。」
「それで、本題だけど。」
「うん。」
「お弁当、どうだった?」
「うん。うまいうまい。だった。」
「そっか。思ってた感想と違ったけど。
そっか。」
「うん、うまかったうまかった。」
「そっか、なら、良かった。」
「…。」
「ほとんどレトルトで、ほとんどお母さんが作ったけど、卵焼きだけは自分で焼いたんだ。」
「…………」
「2個しか入れれなかったけど、私史上最高の出来だったんだよ。お口にあって良かった。」
「…」
「(ものすごい罪悪感。
ごめん、ほんと、ごめん)」




