愛し狂
「目が覚めたか?」
「。」
「生きてるか?」
「。」
「連れて帰ったか?」
「。」
「…はぁ。お前に期待してたんだがな…」
「。」
「まあ、もう少し醒めるのに時間がかかる。
その間ゆっくり寝てな。」
「。。」
「申し訳ない。
君の妹を救えなかった。」
「彼は何をしようとしたんですか?
あなたたちは何がしたかったんですか?」
「彼女を救う為の最後の手段「それをあの子が望んだんですか!?」
「だけど、助ける為にはこれしかなかった。」
「生きるのをやめて死んだ子を生き返らせて、
同じ苦しみを何度もなんども!」
「それでも生きていれば希望はある!
絶望だけが人生じゃない。
そんなのは辛すぎるよ。」
「変わらないよ…自分で死んだ人間が変われるわけがない…」
「それでも!」
「あなたにあの子の何が分かるんですか?
私ですらわかってあげられなかったのに。」
「っ…!」
「…そう言われて返す言葉ないなら、
あなたがやっている事は偽善ですらないですよ。」
「…」
「だからあの子は死んだ。
別にそれは、あなたのせいじゃない。
私でも、彼でも。
あの子が自分で選んだから
、
もう、
静かに寝させてあげて。下さい。」
「…はい。」
「彼は、生きてますよね?」
「はい、この手に誓って。」
「どうやって彼はあの子を生き返らせようとしてたんですか?」
「詳しくは言えないですが、彼は2度心臓が止まっています。」
「…」
「1度目はとある男性が命と引き換えに彼を救い、
2度目は彼が女の子を救う為に、
1度目の男性にも出来なかった生還を果たした。」
「…」
「今は恐らく彼にしか出来ない。
彼にしか見えない夢。
『今際の夢』。
その夢の中で何が起こっているのか誰も憶えていない。
誰にも分からない。
そして彼は記憶を失くす。
それが代償かは分からない。
それでも俺の事を憶えていた。
いつになるかは分からないが、
きっと目を覚ました時、
彼は何も分からないはずだ。」
「私が憶えています。」
「ありがとう。
今日の事は本当にすまなかった。」
私が忘れない。
その為にこの感情を覚えていよう。
私が彼を思い、忘れないように。
彼と出会った夢とともに。




