不変
「なあ、数田。」
「何?鈴木くん。」
「その、『陰府乃 汀』について教えて欲しいんだけど。」
「…どうして?」
「昨日、1年の陰府乃 七海に会って、
同じ事を言って、同じように打たれたから。」
「それで私に?」
「いや、昨日はごめん。
謝るのが先だな。
怒らせてごめん。」
「何で私が怒るの?」
「え?」
「確かにあの時は怒ったかもしてないけど。
それよりも何よりも、私は悲しかった。
あなたに失望した。」
「ごめん。」
「理由は分かってる?」
「ごめん。分からない。
分からないから、良かったら教えて欲しい。」
「それでなんで私に聞くの?」
「…」
「私が教えると思ってる?」
「…
教えてくれ。」
「…。」
「……」
「ああ、もう!
今日の放課後、そこの公園で待ってて!」
「!
ありがとう!」
……
…
「お待たせ。寒かった?」
「いや、大丈夫。」
「…。」
「それでその子は?」
「だってさ、引っ叩いていいよ。」
「…
本当に覚えてないんですか?」
「…ごめん。」
「本当に本当ですか?」
「あぁ…」
「猫を、覚えていますか?」
「…。」
「男の子を、覚えていますか?」
「…。」
「私を、覚えていますか?」
「…」
「私の妹だよ。
『三四五』。」
「自分の名前は覚えていますか?」
「俺は、鈴本、悠也、だ。」
「…。」
「違う! 違いますよ!」
「…違わない。
俺は俺だ。
忘れるはずがない!
でも!!
思い出せないんだ…」
「忘れたくないのに…!!」
「…なら、
それなら思い出してよ!
人が死んで!猫が死んで!
あなたが1人で背負い込んで!
全部全部自分だけで!」
「お姉ちゃん…」
「俺だって…
思い出せたら…
こんな、こんなに苦しくない…!」
「…私、先に帰る。」
「うん…
ありがとう、お姉ちゃん。」
「なぁ、なんで泣いてくれるんだよ?」
「先輩の事が好きだからですよ。」
「…なんで…なんで
こんなに悲しんだよ…」
「先輩は私達のために泣いてくれました。
だから私達は先輩のために泣きます。
先輩は、先輩だから、私達が泣くと、きっと、先輩も泣きたくなるんですよ。」
「俺は…」
「違わない。
変わらないですよ。
私の知ってる先輩は。」
「…」
「汀は、私の知ってる『陰府乃 汀』は、
全然違うのに、でも、
どこか先輩に似てるんですよ。」
「だからきっと、好きなったんです。」
「きっとお姉ちゃんも。
汀も。
だから悲しいんですよ。」
「ね、先輩!今度の休みに展覧会に行きませんか?」




