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今際の夢  作者: lycoris
今際の夢
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乾燥

冬休みが終わった。

杏くんは悲鳴にも近い嘆きを上げていた。

「うあああああああ〜〜」

「杏くんが悪いんだよ。」

「こんな量が明日までに終わる訳ねぇーだろうがああああ〜〜」

「期限は今日までですよ。」

「まあいつもの事だけどね。

自業自得。」

ひたすら答えを見ながら、時折ワザと間違えて現実味(リアリティ)を追求しつつ、

終わっっているはずの冬休みの課題を終わらせていく。

「10日もあったんだから1日1科目やればよかったのに。」

「終わる訳ないじゃん!

年末だぜ?それにあんな事もあったら、もう課題どころじゃねぇって!」

分からなくはない、が、分かりたくはない。

僕はそういう風には生きられないから。

「でもやらなかったのは杏くんだよね?」

「ちきしょー!金ちゃんタイムマシン出して〜」

「タイムマシンがあったとしても、二度と同じ時間には戻れないよ。」

「え、そうなの!?」

「それにどうせ戻ってもやらないでしょ?」

「確かに!」

「それよりもほら、手を動かさないと。」



「あのー」

部員は既に揃っている。

来るとすれば先生くらいだが、珍しく来客が来た。

「お!」

その声を聞いて、答えを写している杏くんの手が止まった。

「ここは『天文オカルト研究会』で合ってますか?」

「よう!修也!」

「あ、田淵だ。

あと、俺は悠也だ。」

「杏夜でいいっての。

あと、"オカルト"天文研究会な。」

何故か見るからに頰が腫れている悠也が部室に来た。

…。

「やあやあようこそ。

お茶飲むかい?」

「あ、はい。

頂けるのなら」

「お前、その顔どうしたんだよ?

女子に振られたか?」

「なんでそうなる。」

「まあいいけどさ。

氷あるけど冷やすか?」

「いや、そこまででもないと思う。」

「はい、どうぞ。

熱いから気を付けてね。」

「ありがとうございます。」

「お菓子もありますよ。」

「お、ありがとう。」

御鏡さんにしては珍しい。

と言うのは失礼かな?

「それで、今日はどうしたの?」

「真面目な話なんですけど、

俺、記憶喪失みたいなんですよ。」

「何言ってんだお前。」

「杏くん、こればっかりは当人じゃないと分からない事だよ。

それで?」

「ありがとうございます。

それで、

記憶、というか、感情が思い出せないんです。」

「それはどういう意味?」

「最初は本当に覚えていない事でも、

言われてみれば、思い出そうと思えば、

覚えてて、

それで、でも、その時に何を思っていたかがまるで他人事のようにどうしても思い出せないんです。

どうしてそうしたのか。

この後に何を思ったか。

それは紛れもなく自分なのに。

簡単な言葉にすら感情を表現出来ないんです。」

「つまり記憶の中の感情の喪失…って事でいいんだよね?」

「はい。

冬休みの始め辺りからの記憶が特にボンヤリしていて。」

「記憶自体はあるんだよね?」

「はい。」

「ふーん。

君はそれを解決したいのかい?」

「いいえ。あ、まあ、出来る事ならしたいですけど、」

「問題は他にある。って事?」

「はい。」


扉が開いた。

今日は来客が多いようだ。

「よう!御鏡!

本返しに来たぜ!」

1年生の陰府乃(よみの) 七海(なみ)さんだ。

「いらっしゃい。」

御鏡さんは少し待ってとお茶の準備を始めた。

手持ち無沙汰になった彼女は部室を見渡すとこちらに目が止まった。

「あ」


見つけるやいなやこちらに向かって来た。

「せーんぱーい!

身体はもう大丈夫か?

この前はありがとう!」

そして彼の横に座る。

すごく輝いた笑顔で。

「あ、うん。

まあそれなりに。」

一方の彼はどこかぎこちない様子。

「それでさ、今度の休み空いてる?

(なぎ)の墓参りに来てくれよ。

その後にお礼も兼ねて飯でも奢るからさ!」

「あ、うん。

分かった。」

「先輩何か様子おかしくない?」

「いや、なんでもないよ。」


なんでもないんだけど。

そう続けてこちらを向いた。

「ここからが本題で、

その、(なぎ)って子の記憶がないんです。」

「先輩。」

「何?」

部室内に響き渡る音。

「それ、笑えないよ。」


本を机に置いて静かに立ち去った。

彼は以前のように彼女を追いかけはしなかった。

そうすべき場面だったのかは当人達の問題だが。

「こういう訳ね。」

「はい。」

()たれた頰を抑えながら彼は肯定した。

「これで今日何回目なの?」

「まだ2回目ですよ。

これ以上無いといいんですけど。」

「そうなんだ。

これは中々に深刻かもね。」

一方杏くんは話について行けてなかった。

「これ使えよ。」

濡れたハンカチを手渡す。

御鏡さんは余った行き場のないお茶を彼に渡した。

「ありがとう。」

これはなかなか大変そうだ。

なんでこうも間が空くのか。

忙しい忙しい忙しいですです。

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