今更の青春
「よう、秋悟!ツラ貸せよ!」
「何しに来たんだ」
「いや、いいよ。みんなごめん。
ちょっと行って来る。」
手伝ったっていうのに、睨まれるとは、
汀は一体何したんだよ。
「悪いな。借りてくぜ。」
部室から離れて、また体育館に来た。
今日の催しは一通り終わってるので、人はそれほど居なかった。
「またここに来たか。」
「もう来ないんだろ?」
「その話か?」
「それ以外ないだろ。」
「それもそうか。」
場がむず痒い空気になる。
それでも俺は、話をしに来た。
「やめるか?」
「ああ、やめる。」
「やめるか…」
「ああ、やめる。」
「どうしてもか?」
「ああ、」
「どーーーしてもか?」
「やめる。」
「何でだ?俺のせいか?」
「かもな。」
「はぁ…」
「やめる。
やめるったら、やめる。」
「お前の演劇は凄いと思うよ。」
「ありがとう。」
「素人の俺でもそれくらいは分かる。
じゃあ何で、演技してるんだ?お前は。」
「分からない。
それを探してたつもりだった。」
「見つかってないのにやめるのか?」
「見つからないからやめた。」
「俺は。
お前の事は何でも分かるつもりだった。
お前の嘘も演技も。
でも違ったんだな。
そしてそれはまさに『現実は小説より奇なり。』。
じゃあ俺が今までやってきた演技は何だったんだ?
俺は誰かになりたくて、演劇をやっていた。
でも、誰かになるだけで、誰かではない。
じゃあ俺は何だ?俺は誰だ?
もう、分からないんだ。」
「そうだったのか、初めて聞いた。」
「良かったよ。
ひょっとして、演劇に飽きたりしたのかと思った。」
「似た様なもんさ。」
「いや、違うよ。
似て非なるもの。
だから続けろよ演劇。」
「全くもって分からない。
なあ、お前は今誰なんだ?」
_「当たり前の事を聞くなよ。
俺は俺だ。」
「で、お前はお前だ。」
「…。」
「だから続けろよ。
お前は変わらない。分からない?」
「分からないよ。」
「けど、分かった。
気がする。」
「はっ、大丈夫だ。
俺はお前の、友達だからな。」
「…」
「なぁ、修也。」
「なんだ?」
「演劇部入るか?」
「何でだ?」
「いつでも臭いセリフを吐けるぞ。」
「お前なぁ…
まあ、でも、部活も悪くはないとは思うけどさ。」
「脈アリか?」
「悪いな。」
「そうか。…
いつでも来いよ。」
「こっちこそ。」
「これが青春って奴かな?」
照れ臭そうに言う秋悟。
当然言われた側も恥ずかしい。
「かもな。」
「本当に打ち上げ参加しなくていいか?
もう少ししたら周助も参加するけど。」
「悪いな、今日に限って珍しく他の用事があるんだ。」
「ならしょうがないか。」
「また今度約束通り何か奢れよ。」
「ああ。」
拳を突き合わせた。




