それは誰
「いつからだ?」
「そこに誰かの手があった。
俺の後ろに別の手があった。
俺はそれをとって、気が付いたらこの学校にいて、
いつの間にかこいつの中にいた。」
「いつからだ」
「この前、様子がおかしいって言ってただろ?
その日から。」
「修也はどこだ?」
「また寝てるよ。しばらく起きないかも。
2日前と同じ様に。」
「お前が何かしたのか?」
「何もしてないよ。俺は何も出来なかった。
だから今ここにいる。」
「修也は知ってるのか?」
「一応。詳しくは俺も分からないけど。」
「今日はなんで来なかった?」
「本人に聞けよ。」
「…分かった。
殴って悪かったな。」
「いや、殴りかかったのはこっちからだ。
俺じゃないけどな。」
「この後はどうするんだ?」
「適当にぶらついてる。
何か目的があって学校まで来たみたいだからな。」
「打ち上げ、来るか?」
「いや、俺に出る資格はない。」
「仮にも1日手伝ってくれたんだろ?」
「それでもやめておく。」
「そうか。
じゃあ、
またな。」
こいつは、俺の友達じゃないんだ。
「またな。」
それは俺じゃない。
さて、どうしようか。
俺には目的がない。
打ち上げに行くのは気まずい。
演劇部の次は確か軽音部。
吹奏楽部、合唱部、他にもいろいろあるようだが、そんなに興味はない。
ボタンを何個か開けて、ポケットに手を突っ込む。
違和感はあるが、いつも通りだ。
体育館の外に出てグラウンドに出た。
「おい、鈴木!」
「…」
教師が俺の前に立った。
「今日はどうしたんだ?
他校の生徒も来てるんだから、ちゃんとした格好をしろ。」
そういえば、そうだった。
慣れないな。
「はーい。」
直す気はない。
「…お前、勉強の方はどうだ?」
なんて答えればいいんだ?
「まあそれなりには。」
「そうか…正直俺はお前の事を諦めていたよ。」
あー、頼むから俺じゃない時にそういう話をしてくれ。
「無理だと分かって叱ってた。
無駄だと諦めていた。
何かがお前を変えたのか?」
…
分からねぇよ…
「さすがに僕もお尻に火がついただけですよ。」
「そうか。まぁ、頑張れよ。
お前なら出来る。」
肩を叩かれたって、
それは俺じゃない。
気まずくなって、教室棟に行った。
いつもの場所に行こうとすると、トイレから出て来た誰かに会った。
「やあ、鈴木くん。」
「こんにちは。」
上級生。
こいつは修也とどういう関係だ?
「体育館に行かなくていいのかい?」
「あっちから出て来たところです。」
そういえば久しぶりに上級生と話すな。
姉ちゃんは家族だし。
「こっちに何か用かい?」
「いや、暇だからブラブラしてただけです。」
「へー。
良かったら部室に寄ってく?」
「…いや、いいです。
ほんとブラブラしてただけですから。
それに…」
それは俺じゃない。
「それに?」
「ちょっと用事思い出しちゃって!
それじゃあまた今度行きますね。」
とにかくその場から逃げ出した。
人気に少ない所に来たつもりだったが先客が居た。
何かを探しているみたいだ。
話しかけるつもりはなかったが、
その人は朝に見かけた人だった。
朝とは雰囲気が違っていた。
まるで別人かのように。
「あの、何か探してるの?」
だから気になった。
「あ、鈴木くん。
前に言ってた探してる猫がこの辺りにいるって聞いて、朝から探してたんだけど、
やっぱり見つからなくて…」
この人は…
数田の姉ちゃん!?




