表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今際の夢  作者: lycoris
今際の夢
31/140

日い暮れ

勢い増し増し

あー、もー、昨日は散々だった。

だが、今日から冬休み。

だが、俺は制服を着て学校に。

別に部活に入ってるわけでもないが、

頼み込まれたので演劇部の秋悟の手伝いをしに来た。


「お前らが手伝ってくれるなら、細かく作り込めるな!」

「それじゃあ俺たちが手伝う意味ないじゃん。」

「と、思うじゃん?」

得意気に指をふる秋悟。

「おう」

「遠目で見れば確かに違いはないかもしれない。」

「おい」

「ただ、細い目で見れば()()()所に気がつく。

細目だけに。」

「気が付かれなきゃ意味ないじゃん。」

「まあな。」

「おい」

「例え自己満足に終わったとしても、『やり切った!』って後悔したくないじゃん?」

「…うん、まあ、そうだな?」

彼はまさしく物語の主人公かのように、

俺には眩しく見えた。



何度もなっていた筈のチャイムが初めて聴こえた。

気が付けばもう昼になっていた。

「腹減ったー」

誰が言ったかその言葉で自分も腹を空かせていることに気づいた。

「俺も腹減ってきたわ。」

「飯にしようぜ。」

「午後も手伝ってくれんの?」

「午前だけなの?」

「いや、手伝ってくれる分にはありがたいんだが、せっかくの休みを奪うの悪いと思って。」

「ま、気にすんな。」

「すまん、お礼は弾むから。」


それから次に気がつけば日が暮れていた。

「あっという間だったな。」

「うん、まさか今日でここまで進むなんて思ってなかった。

いや、ほんと、ありがとう。」

「おう。」

それだけ言われたんならやった甲斐はあったのだろう。

「それじゃあ、帰ろうぜ。」

着崩していた制服を正し、荷物をまとめて帰る。



それにしたって今日はあっという間だった。

どこかで自分の体内時計がズレているのではないかと思うほど。

そんな帰り道、明日も手伝うといい秋悟と別れた後、

暗がりに見間違えかと思った。

少女が闇から手を伸ばしていた。

上手く見えないのに、それだけは分かった。

それだけだった。

 それより何より不気味だった。

体が勝手にその手を掴みそうになる。

すぐに反転し、光の方へと走った。

それからはもう夢中で、

いつもより遠回りと分かって光を目指した。

逃げるように、怯えながら、凍えながら、

身を震わせて辿り着いた自宅。

ノブに触れた手が冷たく、一思いに開けた。

すぐに布団に身を包み、精一杯丸くなる。

自分の心臓の音、それでも手足が寒い、

まだだ、何かが胸を締め付ける。

後悔が、震えで涙が滲み出す。

胸がグチャグチャで、頭も、

それでも俺には、

今の俺には手を差し伸べることなんて出来ないんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ