日い暮れ
勢い増し増し
あー、もー、昨日は散々だった。
だが、今日から冬休み。
だが、俺は制服を着て学校に。
別に部活に入ってるわけでもないが、
頼み込まれたので演劇部の秋悟の手伝いをしに来た。
「お前らが手伝ってくれるなら、細かく作り込めるな!」
「それじゃあ俺たちが手伝う意味ないじゃん。」
「と、思うじゃん?」
得意気に指をふる秋悟。
「おう」
「遠目で見れば確かに違いはないかもしれない。」
「おい」
「ただ、細い目で見れば細かい所に気がつく。
細目だけに。」
「気が付かれなきゃ意味ないじゃん。」
「まあな。」
「おい」
「例え自己満足に終わったとしても、『やり切った!』って後悔したくないじゃん?」
「…うん、まあ、そうだな?」
彼はまさしく物語の主人公かのように、
俺には眩しく見えた。
何度もなっていた筈のチャイムが初めて聴こえた。
気が付けばもう昼になっていた。
「腹減ったー」
誰が言ったかその言葉で自分も腹を空かせていることに気づいた。
「俺も腹減ってきたわ。」
「飯にしようぜ。」
「午後も手伝ってくれんの?」
「午前だけなの?」
「いや、手伝ってくれる分にはありがたいんだが、せっかくの休みを奪うの悪いと思って。」
「ま、気にすんな。」
「すまん、お礼は弾むから。」
それから次に気がつけば日が暮れていた。
「あっという間だったな。」
「うん、まさか今日でここまで進むなんて思ってなかった。
いや、ほんと、ありがとう。」
「おう。」
それだけ言われたんならやった甲斐はあったのだろう。
「それじゃあ、帰ろうぜ。」
着崩していた制服を正し、荷物をまとめて帰る。
それにしたって今日はあっという間だった。
どこかで自分の体内時計がズレているのではないかと思うほど。
そんな帰り道、明日も手伝うといい秋悟と別れた後、
暗がりに見間違えかと思った。
少女が闇から手を伸ばしていた。
上手く見えないのに、それだけは分かった。
それだけだった。
それより何より不気味だった。
体が勝手にその手を掴みそうになる。
すぐに反転し、光の方へと走った。
それからはもう夢中で、
いつもより遠回りと分かって光を目指した。
逃げるように、怯えながら、凍えながら、
身を震わせて辿り着いた自宅。
ノブに触れた手が冷たく、一思いに開けた。
すぐに布団に身を包み、精一杯丸くなる。
自分の心臓の音、それでも手足が寒い、
まだだ、何かが胸を締め付ける。
後悔が、震えで涙が滲み出す。
胸がグチャグチャで、頭も、
それでも俺には、
今の俺には手を差し伸べることなんて出来ないんだ。




