行き違い
甘い紅茶を飲んだ後だからか、
無性に塩っぽいものを食べたくなった。
だが、晩飯は何が出るか分からない。
なら、買い食いしかない。
秋悟の奴も茶菓子くらい出ないのかと。
やはりここは王道のポテトチップスだな。
周助と別れた後、一人で望の婆ちゃんが働いてる駄菓子屋に行った。
「いらっしゃい」
新聞を読みながらの挨拶に会釈で返した。
老眼ってどんな風に見えてるんだろう?そんな事を考えながら、コンソメかのりしおで迷っていた
両方買ってもいいけど、これから冬休みに入るのにあまり無駄遣いするのも…
しょうがないので新味で妥協した。
クレイジーソルト。。
何がクレイジーなのか?
まあ食えば分かるか。
よっしゃ!
気合いを入れて学校に行く。
明日から冬休みだぜ!
教室に着く。
ヒャッフー!
席に着く。
あー、早く校長の話終わんねぇかなぁー!
まだ始まってもないが。
いやぁ、やっぱ教室内も騒めくよなぁ!
にしても、みんな背が縮んだか?
ていうか、明らかに視線が俺に集まってるけど、
どっかおかしいか?
トイレに確認しようとした所で担任と鉢合わせた。
「あ、あの、どちら様?」
「え?」
さすがに生徒の顔忘れるのはどうかと。
仮に知らない生徒にしても反応がおかしい。
「部外者立ち入り禁止なんだけど、
誰かのお兄さん?」
「え、いや、
俺兄弟居ないっすけど。」
てかこの先生は担任じゃないんだけど。
てか見た事ない先生だが。
「じゃあ、何の用でここに?
許可証は?」
「いや、普通にこの学校の生徒だから。」
でも、よく考えたら、どこだここ。
「もしかして卒業生?
誰か先生の許可を得ましたか?」
よく見たら、周りの生徒の制服が違う。
あれー?
そうなるとつまりは、
「あの、すいません。
ちょっと学校間違えました。」
だよな。
「えぇ??」
そりゃびっくりするよな、俺もびっくりだ。
「寝ぼけてました!
すいません、お騒がせしました!」
廊下を走らない様に全力で早足で下駄箱に向かう。
ようやく自分が上靴を履いてないことに気が付いた。
靴を履いた走り出そうとして足が止まった。
「あ」
目の前に誰かに似ている子がいた。
いや、この子に似ている誰かを知っているのかもしれない。
「??」
こうしてる場合じゃない、早く自分の学校に戻らないと遅刻する。
というか、遅刻は確定してる。
「じゃあな!」
「え?」
それでも走るしかない。
じゃないと恥ずかしくて死にそうだ。
どこの世界に高校と中学校を間違える奴が居る。
それに自分の母校でもないのに。
あ〜ー恥ずかしっ!
もういっそ帰ってしまおうかと途中で思ったが、家に連絡が来たとしたら怖いから素直に、今度こそ自分の学校に行った。
人目を気にしながら校門をよじ登る。
「コラ!何しとる!」
びっくりして心臓が止まるかと思った。
「あ、えっと、」
「今開けるからちゃんと入って来い!」
「はいっ」
うぉおお、冷や汗止まんねぇ。
「ありがとうございます。」
「寝坊か?」
「いえ、違います。」
「なんだ、サボりか?」
「あ、いえ、違います…」
「まあええわ。今みんな体育館に居るから。」
「あ、ありがとうございます。」
「おう。」
これで用務員さんに助けられるのは2回目だ。
ともかく、今の内に教室に荷物を置いて、みんなが戻って来るまでトイレに隠れた。
遠くから喧騒が聞こえて、しばらくしてトイレに誰かが話をしながら入って来る。
素知らぬ顔で水を無駄遣いし、トイレを出て教室に戻る生徒たちに合流する。
そして、着席。
「おい、修也。
サボりかぁ?」
まあ見つかるよな。
「寝坊です。」
無難な嘘をつく。
「やらかしたな。」
「やちまった。皆勤賞が…」
「ちょくちょく風邪で休んだりしてただろ。」
「まあな。」
「ま、俺は皆勤賞だけどな。」
「お前は演劇バカなだけだろ。」
「まあ、それほどでも。」
2人のおかげで教室にはいつも通りに馴染めた。
これで流石にバレないだろう。
と、思ってたが、通知表を配る時にあっさりバレて怒られた。
しかも、俺が中学校に行った事もバレてた。
後で周助と秋悟に質問攻めにあったし。
最悪だ…
唯一の救いは、成績が少し上がった事。
留年もなくなりそうだし、それだけが今日一番の癒しだった。




