ミ
猫
赤い首輪の 猫
赤い首輪の 白い 猫
そんな猫をどこかで見た覚えがある。
ちょうど、今みたいに俺が寝転がってて、
それでそこに 猫 が、
来て?
今は自宅のベッドの上。
ここに猫は居ない。
なら、俺は、どこで猫を見たんだ?
誰か追っていて気が付いたら猫が居て、
また、気が付いたら陰府乃のベッドで眠っていた。
俺はどうして誰を追いかけていた?
いや、誰かに追いかけられていた?
確か、それは陰府乃で、
あれ?
記憶が少し繋がった。
思い出してしまった。
それからは景色が変わった。
正気を保つので精一杯だが、それでも学校に行った。
「顔色悪いってこの事か?」
「あ?何が?」
「お前だよ。怠いか?」
「別に…」
「いつもよりノリが悪いな、下手したら重症だ。」
「うるせぇよ…!ほっとけ…」
「荒れてますな」
「ですな。」
「うっぜぇ…」
「おーい、もう授業終わってるって。
これから昼飯だぞ〜。」
「…ほっとけ、腹減ってないんだよ…」
「どうする?」
「まあ今日ぐらいそっとしておいてやるか。」
「そうだな。
辛かったら言えよ。」
「……」
「…言ったって、分かんねぇよ…」
その後も出来るだけずっと机に突っ伏してた。
目を開けると疲れる。
ほんと、最悪な覚醒だよ。
だったらいっそ、何も知らない方が良かったのに…
中途半端に最初の頃の記憶、それも断片的に思い出すなんて。
昨日覚醒したきっかけすら分からない。
こんな事は初めてだ。
思い出したのはこれから起こる事の記憶。
起こるはずだった事の記憶。
それに背いても変えられない絶対の運命。
皆、行き着く先の死。
死の匂いが漂ってるような気がする。
そこらかしこに充満してる。
ほんと、最悪だ。
これから起こる事の夢を見た。
目が覚めた時に朧げに、立ち上がった時には霞のように、夢は散っていった。
今はもう放課後、誰もいない教室。
陽の光は僅かになり、星たちが主張を始める。
「帰ろう。」
荷物を持って階段を登る。
屋上への扉に手をかける。
当然開かない。
「何やってるの?」
横に居た少年に声をかけられた。
「人を待ってる。」
「誰を?」
「何やってるの?」
「!?」
「人を待ってた。」
「誰を?」
「陰府乃さんを。」
「…俺に何の用?」
「私に何の用?」
「少し黙っててくれ。」
「は?」
「は?」
「あの時はごめん。あれしか思い浮かばなかった。」
「は?え?」
「…それで?」
「1人勝手にカッコつけてたわ。」
「あー、あれか。」
「次はないから。」
「ほんとごめん。」
「それだけの為にここに居たの?」
「来たのはついさっきだけど。」
「私が来るのが分かってたのか?」
「なんとなくね。」
「私が来なかったら?」
「その時はその時。」
「変わってる。」
「普通だと思うけど。
少なくともオカルト天文部の人達よりは。」
「不合はまともだよ。」
「そうなんだ。」
「じゃあ、あの時は何してたんだ?」
「ん?」
「道端で寝てた時。」
「あー…あれね。よく覚えてないんだけど、なんて言ったかな、死に触れる奴…」
「は?」
「まあ死にかけてた。」
「はぁ?」
「あの時はありがとう。
超助かった。」
「何やったらあんなとこで死にかけるわけ?」
「さあ?」
「はぁ…もういいや、じゃあ私帰るから。」
「送って「要らない」
そうですか。」
「大体いつも1人で帰ってるし。」
「確かに。そう言えばどうしてここに来たの?」
「…なんとなく。」
「そっか。」
「じゃ。」
「ああ。じゃあな。」
「用事は済んだ?」
「いや、まだだ。」
「俺が見えてるのか?」
「ぼんやりと。」
「俺への用事は何?」
「お前を成仏させようかって。」
「は?」
「いつまでもここに居るつもりか?陰府乃 汀。」
陰府乃 汀
七海ちゃんの弟です




