絵チケット
「こんにちは。」
「やあ、来てたのか。
そっちは?」
「こんちは。」
「ただの付き添いです。」
「じゃあ、君は誰かに用があるのか?」
「はい、風雛先輩です。」
「私?
て言うか知ってたんだ。」
「今日表彰されてたじゃないすか。」
「あー、なるほど。
悪いけどあの絵はここには無いよ。」
「知ってますよ。」
「…君、物知りだね。」
「ソレです。」
教卓に広げたままの学校新聞を指した。
「あー、これね。
写真には映らない良さ、ってものがあるのに。」
そのまま教師用の椅子に腰掛け足を組む風雛先輩。
「でも、写真にしか映らない良さ、ってのもあると思いますよ。」
何でコイツは対立してるんだ。
「面白い事言うね。」
「面白い男ですから。」
どうです?とでも言いたげにキメ顔をする周助。
「遠慮するよ。モデルになってくれるなら考えなくもないよ。」
「ぜひ。」
「でも生憎、先約がいるからね。」
俺の方を向く風雛先輩。
「お前、今日来たのはそういう事だったのか?」
本気で驚いている周助に呆れる。
「そんな訳ないだろ。モデルの方だよ。」
「あー、だよな。そういえばそんな話聞いた。」
うざ。
「てか、このモデルがお前なのかよ。」
所々微妙に違うけどな。
「そういう事。」
「それで何の用だったの?」
話がやっと本題に戻った。
「あー、そういえば描いたの君に見せてなかったね。」
「はい。それで金賞とったんだからどんなものだったんだろうって。」
「ふーん。まあ、見ての通りさ。
せっかくなら実物を見て欲しかったけどね。」
「まあしょうがないすけど。」
「うん、しゃーないしゃーない。」
「と、ちょうどここにチケットがあります。」
すっとポケットから取り出し見せつける。
「お礼してなかったし、あげるよ。」
「え、良いんすか?」
「この絵を見るためにここに来たんでしょ?
それに、私は絵を見るよりも描く方が好きだから。」
「じゃあ、ありがとうございます。」
「うん。それ1枚で2人までタダから。」
「へー」
「で、これで用は終わりかな?」
「あ、はい。ありがとうござました。」
「ん、じゃあ雨に気をつけて帰りなよ。」
「はい。」
「と、その前に、この絵の感想は?」
「実物を見てないっすけど、まあ、白線の向こうの表情はこっちで考えるんですよね。」
「まあね。どんな表情してると思う?」
「笑ってる、ように見えますけど?」
「そう。君にはそう見えたんだね。」
「違うんですか?」
「私には君が泣いてるように見えたけど。」
「そうなんすか?」
「まあは見方は人それぞれだけどね。」
いつのまにか美術部の部室を探検していた周助を連れて美術室を出た。
渡り廊下でカチャカチャ音を鳴らす箱を運ぶ、おそらく生徒会一同と、その後ろに居たオカルト天文同好会の一行とすれ違った。
田淵がやたらこっちを気にしていた。
「今の連中知り合い?」
「まあ知り合いも居た、って感じ。」
「へー。」
「んで、あの小さい人が谷谷谷谷先輩。」
「あれが?」
「そう。」
「へー。」
「んで、要る?」
展覧会のチケットを取り出した。
「何それ?」
「展覧会だってさ。」
「要らね〜」
「俺もそんな興味無いしなぁ。2人まで無料だってよ。」
「行く相手がいねぇって。」
「俺もだ…」
「悲しいな…」
「ああ…」
周助との悲しい別れをとげ、
せっかく貰ったけど使いそうにないチケットは
一応しまっておいた。




