中の中
はぁ
週明けから雨
なのに全校集会。
普段は運動場だが、雨なので体育館。
座ってるより立ってる方が楽なんだけど。
とは言っても、どうせ先生の話なんてろくに聞きもしないでボーッとしてるのは変わらないが。
今日もどこかの誰かが偉業を成して表彰される
『風雛 景』
呼ばれた名前に聞き覚えがあった。
顔を上げて、表彰されている生徒を見る。
要約すると、彼女の描いた絵がコンクールで金賞を取ったのだと。
それって、ひょっとして俺がモデルになった奴か?
そういえば、描き上がった絵を見せて貰ってなかった。
それほど凄い絵なのか。
どうやら彼女は美術部のようなので放課後行ってみよう。
なんだか少し照れ臭いけど。
雨の匂いがする渡り廊下の先、別校舎の1番角の美術室。
「どんな絵なんだ?」
「見てないから知らん。」
さすがに一人で行くほどの勇気はなく、暇だった周助を誘った。
「まあでも金賞なんだろ?」
「うん、みたいだけど。」
「知り合いだろ?」
「いんや。」
「じゃあなんでモデルになったんだよ。」
「知らん。」
「…それを確認しに行くわけね。」
「まあそういうこと。」
美術室のドアを開ける。
見知らぬ生徒に一同が興味を示す。
教室を見渡して探すが見つからない。
近くにいた同じクラスの子に声をかけた。
「なあ、風雛さんって今居る?」
「先輩は〜」
周りを見渡す。
「今日はまだ来てないっぽいけど。」
「分かった、ありがとう。」
「何か用だった?」
「いや、噂の絵を見たくって。」
「あー。」
少し間を置いて、
「本物はここにはないけど、写真ならあるよ。」
教卓の引き出しから、見本と書かれた学校新聞を取り出した。
「勝手に開けていいのかよ。」
周助がツッコんだ。
「へーきへーき。」
そしてそのまま教卓の上に広げられたカラーの写真を見た。
気持ちが悪い?
吐くわけではないが立っていられないほど。
目が熱い?
瞼を開けていられないほど。
胸が締め付けられるような。
息苦しい?
全身に寒気が走るような。
寒い?
写真を見た。
青い絵の具のついた筆を持つ手と、描き途中の絵。
絵の中の絵。
その絵には俺であろう男子生徒が描かれ、
そこに淡い白で、線がワザとらしく何本か引かれている。
その男子生徒と手を繋ぐ少女のようなシルエット。
伸びる影は一つ。
影の隣、誰も居ない空間がオレンジと赤のグラデーションで塗らり潰され、
その周りと空の色が繋がっている。
その少年の目には、描いている側の光景が映る。
「はー、すげぇなぁ。」
「でしょ?こんなの私じゃ描けないよ。
それに本物はもっと凄いよ。」
「生で見たの?」
「うん、展覧会に行って。」
「わざわざ行ったんだ。」
「勉強の為にもね。
本当に凄かったんだから。
引き込まれるってこういう事かってくらい。」
「ほー…
て、随分引き込まれてんな。」
周助が肩に手を置く。
「え?
あ、ああ。なんて言うか、凄いな。」
「でしょ?でしょでしょ?」
「お前は何描いたんだよ?」
「えー、これとは比べられないよ。」
「まあまあ、見せてみ、見せてみ。」
「えー、嫌だってば。」
「どうしたの?」
そこに知らない女子生徒が来た。
「あ、部長。風雛先輩知らないです?」
「探してるの?」
「はい、この人達が」
周助がクラスの子に睨まれる。
「どうもー。」
会釈する周助に合わせた。
「こんにちは。」
「ああ、どうも。
風雛ならそろそろ来るんじゃないか。
金取ったから褒賞もあるしな。」
「何が貰えるんですか?」
周助が躊躇なく聞いた。
「まあ、部費と紅茶セットかコーヒーセットか、だと思うけど。」
「「マジっすか!?」」
クラスの子と周助がシンクロした。
「ティーセットは絵にもなるし。」
「すげー」
「やったー!」
「学校から貰えるんですか?」
「そうだよ。」
「へー。」
何かが引っかかった。
そこに、当人が来た。
おかげでそれを忘れてしまった。
「おっす。」
「おっす。」
「先輩、おっす!」
美術部の挨拶は体育会系だったのか。
美術部のクラスの子のキャラが掴めない。




