いまさら
「な、何故ここが…」
「じゃじゃーん!」
何やら腰に手を回し取り出したのは受話器のような?
なんだっけ?
「え、あ、それ、あーっ!なんだっけ!あー、あー、うー」
「ト?」
秋悟が助け舟を出してくれた。
「と?えっと、と、とらんす?トランスジェネレーター??」
「ぷっ」
秋悟に笑われるのはなんか屈辱だな。
いつもの事だが。
「トランシーバーだよ、鈴木くん。」
あー
「そうだ、それだ!そうそう、トランシーバー!
惜しかったなぁ」
「かすったかも怪しいぞ」
半笑いでツッコむ秋悟。
「そこ、うるさい。ていうか、ズルくないっすかそれ?ていうか、それでどうしてここが分かったんすか?」
「君、立場分かってる?」
「あ、や、すんません。」
「別に怒ってないよ。」
前に田淵に説教したのを見ると信じられない。
「まあ答え合わせするとこういう事。」
楽しそうにボタンを押し、通信を始めた。
「もしもーし」
ん?
「はい、もしもし?」
しれっと秋悟もポケットからトランシーバーを取り出し返事をする。
「あ、見つかったの?」
そこに別に声が入って来た。
「ごめん、ちょっと静かにしてて。」
どうやら田淵のようだ。
「ひでぇ」
「ま、こういう事だよ。」
「ドッキリ?」
秋悟を見て聞く。
「お前は幸せ者だよな。」
何言ってんだこいつ。
「君が逃げるだろう見越して、予め君の周りに根回ししたんだよ。」
「マジっすか?」
「うん。」
すげぇいい笑顔、ひでぇ。
「それじゃあ行こうか?」
「分かったら、観念しろ?」
まるで悪役じゃねぇか。
「マジっすか?」
「まだ逃げる?」
これ以上は怖いので、秋悟に捨て台詞を吐いて演劇部の部室を後にした。
「お前、覚えてろよ。」
そんな訳でオカルト天文部(同好会)という名の理科室に昨日の面子で集合した。
もとい、連行された。
いわゆる任意同行ってやつだそうで、
ええ、ひでぇ扱い。
「それじゃあ早速結果を聞こうか?」
「…まあ、逃げてる時点でお察しですよね?」
「それが答えでいいんだね?」
「じゃあ、俺は霊感持ちって事で。」
「最後に言い残すのはそれだけでいいんだな?」
「あ、いや、待った!冗談だ!」
「このままじゃ平行線だね。どうする?」
何その線。
「どうするもこうするも…」
「陰府乃さんはどうすれば許せる?」
「それは…」
一体どんな無茶が飛び出してくるかと思ったが、
「…」
一瞬俺の顔を見ただけで、
「…もういいですよ。」
それだけだった。
それだけで、俺の心臓が跳ねた気がした。
「あれは、事故だった、て事で、
昼のも当てずっぽだったかもしんないし。」
陰府乃は席をたった。
「わざわざ、ありがとうございました。
私もちょっと冷静になってみます。」
待った
「それじゃあ、私は用事があるからこれで。
じゃあね、不合。」
待った!
何かが込み上げてくる。
部室を出る陰府乃を止めないと。
何かが突き動かそうとする。
でも、今更何を話すんだよ。
何かが
陰府乃はもう俺を諦めたんだよ。
俺を
あの目は•••
駆り立て
俺は
衝動が
それでも
抑えきれない
「…鈴木くんはこれで「すんません!!」
違う、謝る相手が違うじゃないか。
それでも
もはや陰府乃を追いかける事しか頭になかった。
今はそれだけだ。
勢いよく部室を出て、視界の隅に捉えた。
俺の走る音が聞こえたのか、何故か陰府乃も走り出した。
「待て!」
「嫌だ!」
一瞬足が止まりそうになった。
相手の事を考えれば。
それでも
「待てよ!」
「ウザい!くんな!」
上ずった声で拒絶する。
それでも
「陰府乃!!」
「っ!」
「七海!!!」
追いついた。
今までで一番速く走った。
だから、どう止まれば、止めればいいか分からなかった。
「!!?」
彼女が痛くないように、それだけを一瞬で考えた結果、俺は陰府乃を抱き締めていた。
「はっ、はっ、」
「はぁ、はぁ、」
お互いに荒い息を整える。
「離せよ」
「ごめん!!」
「…」
「俺、お前に謝ってなかった。
自分が悪くない、自分のせいじゃないって。」
「…」
「ごめん!あの時、お前は泣いていたのに。
俺は逃げ出した!」
「っ…!」
「だから、今は」
「離せよ…」
「こうさせてくれ。」




