かいだん
「きり〜つ、れ〜い、さよなら〜」
「はい、気を付けてね。」
帰りの号令を終えて、教室を出る。
昼の騒ぎが嘘かの様に、午後の授業は静かだった。
まあいつもの事だが、俺も含めクラスの半分くらいは寝てた。
すっかり忘れてさあ帰ってゲームでもしようと思っていると階段で道を塞がれた。
「よっ。」
「よう。」
なんだ、用事か?
「…」
「じゃあな。」
「まあまあまあ、待ちたまえ。」
「誰だよ。」
「え、あ、俺は田淵「ツッコミだよ。」
あ、ああ、分かってたとも、もちろん。被せボケってやつだよ。」
嘘っぽい。
「んで、何用?」
「ああ、ちょっと来てくれ。」
「どこに?」
「まあまあ。」
後について来いと言わんばかりに濁す。
しょうがないからついて行く。
まあ行き先は大体想像つくけど。
まあ、ですよね。
「ささ。」
連れて来られたのは理科室兼こいつらの部室。
「入部はしねぇよ?」
「今日は別件。」
諦めてはなさそうだな。
別件というのに興味を惹かれ入ってしまった。
「よう。また会ったな。」
「あ」
振り返って逃げようにも田淵が塞いでいる。
「どけ!」
「俺の絶対防御を超えられるかな?」
「は、ちょ、ふざけんな!」
「悪い!すまん!」
強引に出ようとしていると肩を掴まれた。
「まあまあ、逃げることないじゃないですか、先輩。」
「痛い痛いから。」
腕を掴まれ捻られる。
痴漢冤罪を受けてる気分だ。
そんな俺の気も知らずに、空いてる椅子に座らされた。田淵は入り口に立ったままだ。
俺の横には金治さん、正面に昼間の女子と御鏡さん。
「逃げようとするって事は、後ろめたい事があるって事じゃん?やっぱり。」
うわぁ、めんどくさ。
「こういう風になりそうだったから逃げたかった。」
「ふーん。で?」
で?とは。
「言っとくが本当に見てないからな。」
「往生際が悪い!」
「だから、アレはあそこに居た奴が言ったから!」
「あそこには私しか居なかったけど?」
「居ただろ、もう1人!」
「居なかった!」
「居た!ここの生徒じゃない男子が!」
「はぁ!?」
「絶対、居た。」
退けない、嘘じゃない。
絶対に見間違いじゃない。
なおも言い争おうとする女子を御鏡さんが止めた。
「じゃあ先輩が見たのはどんな子でしたか?」
「…他校の制服着てたくらいしか覚えてない。」
血だらけだったのはさすがに見間違いかもしれない。
それに信じてもらえないだろうし。
ただでさえ記憶が曖昧なので、詳細に思い出すのに苦労した。
「その制服って…」
「分かるの?」
「…そいつは、どんな奴だった!?」
「これ以上は思い出せないって!」
「そこが重要なんだろ、使えない奴だな!」
「んだと!?」
「はいはい。
二人とも一旦落ち着こうか。」
金治さんが手を叩いた。
その表情は笑ってない笑顔というやつだった。
「話が進まないの、嫌いなんだよね。」
「すみません…」
「…」
恐怖は感じないが、従うしかない気がした。
「それで」
「俺は、そいつが言ったのを、繰り返しただけです。」
「陰府乃さんはそれを信じる?」
「…いいえ。」
「へー、だってさ。」
「え、あの。」
「鈴木くんは嘘ついてるの?」
「あ、いや、俺は嘘なんて…」
「だってさ。」
「え、や、でも、私は不合と2人でこいつのとこに行ったし。」
「だってさ。」
「いやいや。教室に入ってきた時にはその男子も一緒で3人だったろ。」
「はl?だから
ゴンッ
「「!?」」
「あまり物には当たりたくないんだけどね。
何度も同じ事を言わせないでくれるかな。」
金治さんは正面を向いたまま笑ってる。
どうやらさっきの音は膝で机を蹴ったようだ。
「「はい」」」
「要するに、鈴木が見たのは幽霊って事じゃね?
お前霊感持ってんのかよ?
うらやましー」
と口を挟んだ田淵に
「杏くん、黙ってて。後でお説教だから。」
「え?」
指を指して制した。
「俺は、別にこれと言って霊感なんて…」
無くは無い、ような気はしないでも無いけど、
墓地の近くが異様に寒く感じられたり、
誰もいない空間に少し嫌悪感を感じで気持ち悪くなったりするくらいだが…
「私は確かに不合と2人だった。なんならあんたのクラスメイトに聞いてみたら早いんじゃないの?」
「確かに、一理あるね。」
金治さんがまとめた。
「じゃあ、鈴木くんは明日にでもクラスメイトの何人かに確認を取ってみてよ。
それで大体のオチが付くでしょ。」
「…はい。」
何故だか自信が持てなかった。
「じゃあ話し合いはこれで終わりでいいかな。」
「明日、絶対聞いて来てよ。」
「…おう。」
「じゃあ2人とも今日は帰っていいよ。
僕は杏くんのお説教があるから。
またね。」
「「はい」」
陰府乃が出て行ってから、大体の事を御鏡さんから聞いた。
彼女が何者か。
俺との因縁は。
ようやく納得したが、あの男子生徒だけが未だ腑に落ちないままだった。
私に霊感はないでしょうが、感じたことのある範囲で。




