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今際の夢  作者: lycoris
今際の夢
16/140

寒くて甘くない

「はぁ…」

ため息をつきながら帰る。

手持ち無沙汰な手をポケットに入れて。

今日は無駄に疲れたなぁ〜…

薄っすら見える月を見上げる。

こんな時間まで学校に居たのは久しぶりだな。

今回は赤点無しだったから、前回の補習以来かも。


だらだら歩いていると、(わらび)ちゃんを見かけた。

こんな冬だって言うのに涼しそうな格好をして。

それにこんな時間に1人で出歩いているなんて。

少し跡を追ってみたがすぐに見失った。

あれ?どこ行った?

あれ?ここどこだっけ?

あれ?すぐそこは知ってる道なのに?


あれ?


_______


「んっ」

度々、手にザラザラした感触がする。

「ぁん?」

猫が俺の手を舐めていた。

撫でようとしたら(かわ)された。

猫は少し距離を取ってから、自分の顔周りを掃除し始めた。

ちょっとでも触ろうとすれば手を止めてこっちを警戒する。

よく見ると首輪が付いてる。

その癖にこんな警戒してるのかよ。

ま、猫なんてそんなものか…

「ん…」

それにしても力が入らないな。

いつの間にこんなとこにもたれて座ってたっけ?

何やってたっけ俺?

「あれ?」

「ニャー!」

女の子の声がすると思ったら猫はそれを聞いて逃げ出した。

猫すら逃げ出す女の子。

近づいて来る。

手は少し動かせる癖に首すら動かない。

誰だ?

「こんなところで何してるんですか?」

聞き覚えがなくもないような声。

「ぁ…、…っ…」

口も舌も動かない。

眼を動かしても映るのはウチの学校の制服だけ。

「あの、大丈夫ですか?」

「…っ

 … 」

差し出された手。

今持てる全ての力を集中してその手を、


取れなかった。


惜しくもない。

「…あ____」

腕がほんの少ししか上がらない。

(まぶた)も重くなってきた。

こんな時だってのに、(つめた)い。

すごく寂しい気持ちがする。


「あの!本当に大丈夫ですか!?」

女の子は俺の手を取った。

「ひっ!」

だがすぐに離した。

暖かかったなぁ…

「あ!!」

また手が握られる感触がした。

暖、か、い、?

「ダメっ!!」



夢を見ている。

誰かと手を繋いで歩いている。

誰だろう。

この手を握るのは誰?


目が醒めると手は温もりがあった。

今度は力が入る。

誰かの手の感触がする。

身体を起こすと知らない部屋に居た。

どこだ?

「起きたか。」

誰だ?

「…」

「…」

机で勉強してた女の子と目が合う。

「んで、あんた誰?」

先に聞かれてしまった。

「俺?…鈴木 修也。」

今日はよく自己紹介する日だ。

「何してたの?」

「え?…っと?なんだっけな…?」

思い出せないな。

今日あった事もほとんどぼんやりだ。

「たしか…学校から急いで帰ってて、その後…?

なんだっけ?」

「ウチが知るわけないじゃん。」

まあそうだよな。

「思い出せないな…。

ここはどこなんだ?」

こんなセリフを言う日が来るとは。

「ウチん()。」

「…なんで?」

「知らないよ。そいつに巻き込まれたの。」

首で差した先を見ると、女の子がベッドに突っ伏して寝ていた。俺の手を握ったまま。

かすかに見覚えがあるな。

「すごく心配してたよ。」

「そうなんだ。」

急に小っ恥ずかしくなってきた。

だって向こうが手を離してくれないんだもん。

「んで、そろそろ帰ってくんない?」

あ、そういえば。

「悪いな。所で今何時?」

女の子を起こさないように慎重にベッドから降りる。

「11時。」

「マジ!?」

俺の大きな声で手を握ってる女の子が起きた。

「マジ。だから帰ってくんない?」

「わ、分かった。」

その前に一旦状況を整理しよう。


学校からの帰り道。

そこからの記憶が無いが、

気が付いたら知らない女の子の家で、

かすかに見覚えのある女の子に、

手を握られながら寝ていた。


ふむ。

サッパリだ。

まあいいや、帰ろう。

フと、握られていた手が離れた。

「あ」

振り向くと、たしかオカルト天文同好会に居た御鏡さんが居た。

どうやら彼女がずっと俺と手を繋いでいたようだ。

「おはよう、ございます。」

握っていた手を後ろに隠して挨拶した。

「お、おはよう。」

その手でわざとらしく頭を掻きながら返した。

「…」

「あ、七海(なみ)ちゃんおはよう。

ありがとう。」

「いいよ、気にすんな。」

「ううん。今度絶対お礼するよ。」

「おう、じゃあ期待しとくわ。」

「あ、じゃあ俺もなんかするよ。」

「…」

え、なんで俺だけノーリアクション?

「邪魔してごめんね。私も帰るよ。」

「こんな時間だしウチに泊まってくか?」

「え、いいの?」

「1日くらい気にすんなって。」

…まあ男の俺はさっさと帰りますよ。

荷物を探したが、そういえば無いのを思い出した。

掛けてあった俺の学ランを着た。

「じゃあ、お世話になりました。俺は帰るよ。」

「おう。気を付けろよ。」

「さようなら、また。」

…二人ともいい子なんだな。

浅はかな期待は所詮、儚い物のようだ。


知ってる道までの道程(みちのり)を聞いて、

補導されないように注意しながら帰った。

当然、帰ったらめちゃくちゃ叱られた。


そんな訳で「陰府乃(よみの) 七海(なみ)」ちゃんですね。

御鏡ちゃんの友達で一人暮らし?です。

根は良い子です。

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