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今際の夢  作者: lycoris
the end of the world
133/140

今際の夢;杏夜 3

思いもよらなかった。

まさかこんな方法で願いを聞き出せるなんて。

「ふーん、そういう考え方もあるのね。」

「珍しくないですか?」

「そうかな?

言われてみれば、僕は共感できるよ。」

「ありがとうございます。」

「…参考になったわ。

みんなありがとう。」

「どういたしましてー」

「意外と面白かったです。」

「貸し一つね。」


解散した後、

悠也を呼び止めた。

「願いなら言ったぞ。

不本意だが、

だから後は叶えるだけだ。」

「いや、まさか答えてくれるなんて。」

「こうでもしないといつまで待たされるか分からないからな。」

「そんなに、…

そんなに叶えたい願いなのか?」

「そうだとも、

ぜひに、

ぜひぜひとも。」

「変な言い回しだな。」

「秋悟に習った。」

「まるで他人事みたいだよな。

それを叶えたらどうなる?」

「何も変わらない。

何も変わらないさ。

ただ朝が来て目が覚める。

そして日常が続く。

お前が死ぬまでな。」

「それじゃあ俺にメリットがないじゃないか。」

「そうだな。

だから頼んでるんだ。

叶えてくれ。」

「…。

やれる範囲で努力するよ。」

「そう難しい話でもない。

そう簡単な願いでもないが。

ただ純粋で単純な…

でも俺の口からは言えない。」

「そうかい。」

「面倒かけるな。

待ってる。」

「本当にそう。

そうだな。」



それから杏夜は考えた。

考えている間に奴は自分の胸を刺した。

その行動の意味は理解し得なかった。

その行動は矛盾をしている。

面会謝絶の為、本人に問いようもない。

その場に居合わせた望月望と話しをするも朧げだった。

凄惨な現場に居合わせたのだからショックを受けているのだろう。

今回の事件はきっと、俺の関与しようない事なのだろう。

数田さんの時のように。

それで俺の何を願うのか。


また考えあぐねている所に転校生までやってきた。

しかも、双子の姉弟で美男美女。

『春原 香』と『春原 薫』

この年代でそれを放置する生徒は当然おらずひくて数多。

だのに奴はその子をわざわざ体験入部に連れて来た。

姉の方が先に連れ立って来て、それを追いかける様に弟も入って来た。

騒々しい部室で面を食らった金ちゃんだったけど、

体験入部を快諾した。

いずれ自分の目的に役立つ計算だろう。

つくづく似たもの同士の2人。

それに振り回される俺の身にもなれ。


入部届を貰う姉と

まだ他に見たい所はあるが姉が貰うならと弟。

今日1日を通して重度のシスコンだと分かったが、

ただの一方的な依存では無く、

曰く姉の香は弱視なんだとか。

本人は「見たくないものを見ない様にしたら、何も見えなくなった。」だそうだ。

そんな彼女を支えると称して寄ってくる悪い虫の排除に勤しむ弟。

甲斐甲斐しいを通り越しているが、姉弟ならそれが当たり前なのかは双子だから余計なのか、

一人っ子の俺には到底分からなかった。



もっと分からなかったのは、そんな彼女が屋上から飛び降りた事だった。

それも、(ゆうや)を伴って。


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