今際の夢;杏夜 3
思いもよらなかった。
まさかこんな方法で願いを聞き出せるなんて。
「ふーん、そういう考え方もあるのね。」
「珍しくないですか?」
「そうかな?
言われてみれば、僕は共感できるよ。」
「ありがとうございます。」
「…参考になったわ。
みんなありがとう。」
「どういたしましてー」
「意外と面白かったです。」
「貸し一つね。」
解散した後、
悠也を呼び止めた。
「願いなら言ったぞ。
不本意だが、
だから後は叶えるだけだ。」
「いや、まさか答えてくれるなんて。」
「こうでもしないといつまで待たされるか分からないからな。」
「そんなに、…
そんなに叶えたい願いなのか?」
「そうだとも、
ぜひに、
ぜひぜひとも。」
「変な言い回しだな。」
「秋悟に習った。」
「まるで他人事みたいだよな。
それを叶えたらどうなる?」
「何も変わらない。
何も変わらないさ。
ただ朝が来て目が覚める。
そして日常が続く。
お前が死ぬまでな。」
「それじゃあ俺にメリットがないじゃないか。」
「そうだな。
だから頼んでるんだ。
叶えてくれ。」
「…。
やれる範囲で努力するよ。」
「そう難しい話でもない。
そう簡単な願いでもないが。
ただ純粋で単純な…
でも俺の口からは言えない。」
「そうかい。」
「面倒かけるな。
待ってる。」
「本当にそう。
そうだな。」
それから杏夜は考えた。
考えている間に奴は自分の胸を刺した。
その行動の意味は理解し得なかった。
その行動は矛盾をしている。
面会謝絶の為、本人に問いようもない。
その場に居合わせた望月望と話しをするも朧げだった。
凄惨な現場に居合わせたのだからショックを受けているのだろう。
今回の事件はきっと、俺の関与しようない事なのだろう。
数田さんの時のように。
それで俺の何を願うのか。
また考えあぐねている所に転校生までやってきた。
しかも、双子の姉弟で美男美女。
『春原 香』と『春原 薫』
この年代でそれを放置する生徒は当然おらずひくて数多。
だのに奴はその子をわざわざ体験入部に連れて来た。
姉の方が先に連れ立って来て、それを追いかける様に弟も入って来た。
騒々しい部室で面を食らった金ちゃんだったけど、
体験入部を快諾した。
いずれ自分の目的に役立つ計算だろう。
つくづく似たもの同士の2人。
それに振り回される俺の身にもなれ。
入部届を貰う姉と
まだ他に見たい所はあるが姉が貰うならと弟。
今日1日を通して重度のシスコンだと分かったが、
ただの一方的な依存では無く、
曰く姉の香は弱視なんだとか。
本人は「見たくないものを見ない様にしたら、何も見えなくなった。」だそうだ。
そんな彼女を支えると称して寄ってくる悪い虫の排除に勤しむ弟。
甲斐甲斐しいを通り越しているが、姉弟ならそれが当たり前なのかは双子だから余計なのか、
一人っ子の俺には到底分からなかった。
もっと分からなかったのは、そんな彼女が屋上から飛び降りた事だった。
それも、奴を伴って。




