望と 悠也と 蕨と
「よお。」
「ん、おお、
いらっしゃい」
「蕨ちゃんいる?」
「居るけど、お前、部活はどうしたんだよ?」
「サボり。
先輩には内緒な。」
「てっきり部活が終わってから来るかと思ってたけど…
先輩怒ると怖いって、田淵が言ってたぞ?」
「ああ、大丈夫、僕には怒らないから。」
「?
なんでだ?」
「それが僕と田淵との違い。
それだけだよ。」
「どうしたんだ、今日はやけに…」
「?」
「嫌な予感がする。」
「人の顔見て言うなよ。」
ま、当たってるけど。
「じゃあ、お邪魔します。」
「蕨ちゃんに何の用だ?」
「まあ、ちょっとな。」
駄菓子屋の奥、望月家へと案内される。
二度目だ。
そしてこれで最後になる。
襖を開けると、
和室に横たわる蕨ちゃん。
その口にハンカチを加え、
その胸に包丁を突き立て、
その目に涙を溜めて、
静かに 静かに 横たわる。
「?!?!」
「蕨ちゃん!!!」
「……。」
「蕨ちゃん!!蕨ちゃん!!」
「…望。
そこを退いてくれ。」
「お前!蕨ちゃんが!!」
「誰かに連絡してきて、
ここは俺がみてるから。」
「…!
分かった!分かった!!待ってろよ!!!」
「待たせて、ごめんね。
「……」
「今、イくから。
「…」
「呼んできたぞ!
!?!?」
「おい!、おい!!、
なんでだ!?なんでお前まで!!」
「ぅる、ぃな」
「!!
おい!しっかりしろ鈴木!」
息も絶え絶えに手元に人指し指を添える。
「ふっ、っ、
僕、はっ、すず、もと、だ、
ふっ、ぅ最後に、 最期、に、
の、ぞっ、ぅ、む、は、長い、きっ、ろ、ょ、…
っ、れで、、す…、…。で、…、。。_。」
だめだ、
ダメだ
駄目だ、
逝くな
行くな
イくな
!
なんでだ!
どうしてだ!?
これもそうなのか?
今際の夢?
ありえない
ありえないって谷谷谷谷先輩が言ってた!
そんなのは
そんなものは
ただ死にゆく者に夢なんて
死んでいく人間に夢だなんて、
それは、ただ、
ただの、生きてる人間の自己満足だ!
そんなものに、命を賭けるだなんて、
命を、
、
…、
…きない、
出来ない、
俺には出来ない、
これから先、生きていたって、
命を差し出すなんて、
俺が生きていくよりも、
お前の方が、
お前に出来て俺に出来ない。
それなのに、どうして俺が生きてる?
死ぬべきなのは俺の方なのに、
どうして俺が生きてる?
『 』はまだ死なないかもしれない。
『 ちゃん』はまだ死なないかもしれない。
俺はまだ生きてる。
どうしてそうなる?
どうしてこうなった?
俺は、
オレは、
望月 望は、
どうして生きてる?
ただ佇む間に、
やがて人が駆けつけ、
鈴本 悠也と志田 蕨は運ばれていった。
望月 望は彼らとは別に運ばれた。




