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今際の夢  作者: lycoris
今際の追憶
116/140

香と罰

目を覚ました。

それでも覚えていた。

それよりも前が見えない。

目を開けたのに暗い。

あれからどれだけ眠っていたのだろう?

今は夜だろうか?

周りは暗いが物音はいつものお昼時のような、

誰かが歩き回る音、

何かを引いている音、

機械の音、

布が擦れる音、

時計の音、



自分の吐息と、

鼓動だけは分かる。


座り心地と手の感触から恐らくまだベッドの上。

記憶が正しければ隣に彼が居たはず。

  気配はない。

誰もいないのだろうか?

 やはり気配はない。

どれだけ人を探すそぶりをしても誰も何も反応がない。

周囲の音は聞こえるはずだが。

まるで自分が居なくなっているような。

世界に置いていかれたような。

どこにも居ないような。

おかしな感覚。

 なら、

それなら、

いっそ、


ベッドから身体を起こす。

覚えてる限り歩き回ってみよう。

そうすれば自分の存在を否が応でも確認出来る。

安全性には欠けるが、いまは他にすることもないし。



「待って。」

「行っちゃダメ。」

……

「ここから動いちゃダメ。」

振り返らなくても分かる。

「ダメだよ。」

お利口さんの自分の声。

「いかないで」

グズれば誰かが助けてくれる。

「イかないで」

泣けばみんなやめてくれる。

「イカナイデ」

自分勝手で周りを振り回す女。


そんな女に誰が振り向くだろうか?

彼は、振り向いてくれるだろうか?


そんな醜い私の光は、どんな色だろうか?

やっぱり鈍くて暗い色なのかな?

君の目に私はどう写るかな?


手触りを頼りに壁を伝って廊下に出る。

「香ちゃん?」

薫の声。

「ねぇ、薫。ユウヤを見なかった?」

「え、誰?」

「同い年くらいの男の子。」

「あの子?」

「どこ?」

「あそこ」

「連れていって。」

「どうして?」

「私今、目が見えないから。」

「え?え??」

「いいから連れていって、ほら。」

困惑しながらも私が差し出した手を引いて彼に向かった。


「香ちゃん。」

「ん、。ありがと。

ユウヤくん、」

「…君は?」

「覚えて



「おはよう」

「……!ぁ」

「香ちゃん!」

「落ち着いて。

香ちゃん、具合は大丈夫かな?

起きれる?」

「ぁ…、ぁ。、…」

「手を、握れるかな?」

差し出された先生の手を触った。

この手は何本に見えるかな?」

見えない。

なんとなく2を象った。

「うん。!

良かった。!!」

え?

「大丈夫だよ、薫くん。」

「はっ、本当!?良かった。!!」

何が?

「良かった良かった。

じゃあ僕は一旦離れるから、後は頼むよ、薫くん。」

「はい!」

「何かあったらすぐ呼んでね。」


「あ、お母さん達は今向かってるって!

もうすぐ着くと思うよ!」

「薫?」

「何?何?」

返事をする薫が見えない。

「外が眩しいからカーテン閉めてくれない?」

「うん、わかった!」

カーテンを閉める音。

明暗は変わらず。

「どう?」

「ありがとう。」

「うん!」

「ごめん、ちょっと寝かせて。」

「わかった!」


そうしてまた、目が覚めた。

「香!!」

母親の声。

それとゴツゴツした父親の手。

相変わらず泣きじゃくる声は薫。


聞けばあの後1日眠っていたらしい。

体に異常はなく、目も若干見える。

ぼやけてはいるが、だいたいは見える。

治るかは分からない。らしい。


ともかく_しばらくは誰かに頼らなければ生きていけない。

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