誰かの 望
そう言われると
力が湧き、
もう一踏ん張り、
数田さんの支えもあってなんとか踏み止まれた。
勢い余って数田さんに覆い被さった。
さっきとは逆で、今度は俺が数田さんを押し倒す様な形。
「ご、ごめん!!」
「無事で良かった。」
安堵したように柔らかく笑う数田さん。
俺はすぐに退いて立ち上がり、数田さんに手を差し伸べた。
数田さんは手を取らずに自分で立ち上がった。
「間に合ってよかった。」
「どうしてここに?」
「あなたが死んだら、彼が悲しむから。」
その笑顔には俺が焦がれたものが確かにあった。
「ほら、望月くんも行った行った。」
「数田さんは?」
「私は御鏡ちゃんから戸締りを任されてるから。」
鍵を取り出し見せる。
「だからここから早く出てもらわないと。
あ、もちろんドアからね。」
数田さんを背にして屋上を後にした。
気になる事やら腑に落ちない事だらけだが、今は大人しく現場に向かう。
階段の途中で御鏡さんとすれ違った。
彼女は薄ら笑いで
「償いはこれからですよ。」
そう言った。
現場に着くと悠也を抱えて歩く周助が居た。
「大丈夫か!?」
「なんとかな」
「おう、望。お前も手伝え。」
周助とは逆側の悠也の肩を支えた。
「たく、なんであんなとこから飛び降りてんだ」
「演劇の練習だってば。秋悟も言ってたろ?」
悠也は周助に気づかれないように俺に目配せをした。
「にしても体張りすぎだろ。なぁ、望」
「…まったくだ。見てるこっちは本当に死ぬかと思った。」
「お前は何してたんだよ?」
「バカだから、居残りしてた。」
「何だよそれ」
呆れる周助。
我ながら会心の言い訳だった。
保健室には誰も居なかった。
秋悟が代わりに鍵を取ってきて開けた。
「寝てろよ、先生は後から来るから。」
「荷物は持ってきてやる。」
「望、見張りは頼むぞ。」
「え?」
「ほっとくと危なっかしいし、薫が来るかもしれない。」
「あいつなら香さん連れて帰ってたはずじゃ?」
「まあ、万が一だ。念には念を。」
「じゃあ俺も残った方が「いいから行くぞ」
秋悟に引っ張られていく周助。
「なあ、」
「…」
返事のない悠也に語りかける。
「本当に、
演技だったのか?」
「…」
「いつから、
いつまで、
何の為に、」
「 、
誰の為じゃない、
俺の為、
いつからか、
俺の為に、
いつまでも、
俺の為だけに、
その為に 、
演技でも 、 なんでもする」
それは、
誰の為でもない、 」
これは俺の_  ̄ だから」
鈴木修也、鈴本悠也、
今の彼はどっちだ、
「夢は見れたのか?『今際の 』 _」
「俺はこうして生きている 、
誰も ̄_なかったから 、夢は…」
「でも、そこまでして見たい夢があったのか? 」
「俺、じゃない、
彼女、が、
彼女に、
」
「尚更、お前が…「それが彼女の願いで、
俺の望だった。」
「…それじゃあ俺は誰に償えばいいんだ?」
「… … 」
「償いに、終わりなんてない。」




