境界線にて
ただ立ち尽くす望。
その後ろで絶望に咽び泣く薫。
俺は罪を償えなかったのか?
これが罰なのか
あるいは報いか
俺が修也に願った5つの内2つ目。
動機は単純。
恋愛がしたかった。
恋に憧れていた。
漠然としたそれがどういうものなのか知りたかった。
ただそれだけの好奇心で、人が、死んだ。
俺が殺した。
誰でもよかった。
でも都合が良いのが香だった。
いきなり俺と恋仲になっても、転校してきたばかりで他の女子に比べれば違和感は少ない。はずだった。
俺の幼稚な願いで、
甘い考えでその香が死んだ。
それも悠也を巻き込んで。
俺のせいだ。
いっそ、俺もここから飛び降りれば…
フラフラと落ちた場所まで進む。
その足は近づくにつれゆっくりと、歩幅も狭くなる。
怖い
コワい
こんな高さから2人は飛び降りたのか。
視線を下にやると、
2人を中心に生徒が集まっていた。
ここから、今から、
落ちたら誰かを巻き込んでしまう。
これ以上誰かを巻き込んで殺す訳にはいかない。
最後は一人で死なないと。
視線をそのままにしていると集まっている生徒が誰かわかる。
周助、秋悟、田淵、谷谷谷谷先輩、
いつも悠也の周りに居た人らがよりによって、、
最後を看取るなんて、、、
「長生きしろよ。望。」
背中に修也の声がした。
気がした。
振り返ると
涙と鼻水に塗れながら、仇を討たんとせまくる薫。
その形相は今までの比ではない。
視線は合ってるのに目が合わない。
乱れた呼吸と宙を彷徨う手。
その手は俺の首を求めているのだろう。
動けない。
死にたくない。
死んではいけない。
このままだと殺される。
分かっている。
のに、やはり、動けない。
今までと変わらない。
抵抗もなく、
ただ押し倒され、
身体半分が投げ出される。
きっと落ちはしないと確信があった。
何故ならその手で殺さなければいけないはずだから。
「バカ!!やめろ!!!」
また背中から声がした。
今は振り返れない。
「おい!!薫!!!」
下にいる何人かがこちらに呼びかけている。
だが薫は動じず、変わらず、
俺を殺そうと絞めている。
そろそろ限界、力が抜けてきた頃、
「春原くん!!お姉さんなら!生きてるよ!」
今度は薫の背後から呼びかける声。
さすがに気が逸れた薫。
「よく下を見て!生きてるから!!」
「!ぇ…?ぁ?!え、ぇ…?、?」
「早く行ってあげて!!!」
「ぁ…!!!ぁ」
俺を放って駆け出す薫。
緊張がとけ、踏ん張りも効かなくなった。
落ちる
そう思った俺の手を声の主が取った。
「生きて!」
「あなたは生きなきゃいけない!そうでしょ!?」
「それが!あなたの償いだから!」
声の主は数田さんだった。




