リザルト
「修也、お前」
「おはよう。」
「目覚めはどうだ?気持ち悪くないか?気分は?」
「まあ、うん。悪くないよ。」
「痛み!?胸は痛まないか?」
「別に、痛くないよ。何も感じない…」
「それよりも、こんな所で喧嘩は良くないよ。」
「あ、ああ、悪かった。
ごめんな、望。」
形だけの謝罪。
状況ゆえに受け入れる。
「うん。」
すると悠也は笑った。
「良かった。」
それから大きく息をついて、また目を閉じた。
「ごめん、まだ眠いから。また寝るよ。」
「わかった、今日はもう帰る。
またな、おやすみ。」
秋悟が悠也の肩を叩いた。
悠也はまた笑った。
去り際に一瞥を残して秋悟は病室を出た。
すれ違いに医者を連れてきた周助に説明した。
「名前を呼んだんだね?」
医者に確認された。
「それなら、覚えてる可能性がある。
今回は記憶が残ってる。
何故だ?」
独り言が聞こえる。
周助は気まずくなったのか、空気を読んだのか、
ひとまず無事を喜んで帰った。
周助が帰った後に悠也は目を開けた。
医者はそれが分かっていたかのように
「おはよう、」
「こんにちは」
「君は?君の名前は?」
医者の声が微かに震えている気がした。
「…鈴 本、ゅうや。、」
医者の顔が強ばった。
「今際の、際、」
一息置いて
「『今際の夢』を知っているかい?」
ぎこちない作り笑いだった。
「はい。」
答えた。
「夢を見たのかい?」
「はい」
「覚えているかい?」
「はい。」
「内容を、教えて、くれるかい?」
「いいえ、」
「どうして?」
「…証明ができないから。です、」
「…」
「だって、先生、あなたは、信じてくれるけれど、かもしてないけれど、信じてはいけない人だから。
あなただけは否定しないといけないから。」
今際の夢。さっきから言ってるけど、何の事だ?
隣に居て、聴こえてきても置いてけぼり。
きっと、たぶん、
思い当たりはするが、確証はない。
悠也が証明できないのだから俺の思うモノは証明できないのだろう。
「やっぱり、本当に覚えているんだね
」
「はい
」
「“誰の“夢をみていたか、くらいは教えてくれるかな?
」
「望のお祖母さん、
『美希 雅』さんの」夢です」。」
納得した。
どうしてただの友達の祖母の旧姓を知っているのか?
それだけで
今際の夢を本当に見たんだと
涙が出た。
「救えたかい?」
「……俺が生きてるって事は、そういうコトです。
」
儚げに笑う悠也。
「やりきれないな。
救おうとする事それ自体は 決して 悪い事じゃない
私が言えるのは それだけだけど 」
なんて励ましていいのやら、
「はい、ありがとうございます。」
笑う悠也。
「後悔ならきっとないと思います。」
悠也が言うのなら他は口出し出来ないだろう。
「分かった。
それじゃあもう行くね。
何かあったら遠慮なく呼んでね。」
「はい。」
「大丈夫か?」
うるさくしない程度に隣に話しかける。
「そっちこそ。」
「俺はなんて事はない。
それより」
「俺も大丈夫だって。
それよりもおばあさんの葬式。」
言われるまで忘れていた。
どうしてと言いたくなるほどまったく頭に無かった。
「葬式はきちんと出る。
最後の別れだから。」
「それがいい。
俺は行けないから代わりに挨拶しておいて。」
「なんで!?」
「俺とあの人はそんなに親しい訳ではないし、
最後はもう見届けたから。
頼まれたからと言って、逝かせたのは俺だから。」
「それってどういう」
「あっ、と、、忘れてくれ。
一応、内緒だから。」
今の悠也を見ると強く責めれない。
「…胸は痛まないか?」
「ん、先生の腕は確かだから、傷は残るかもだけど、
大丈夫、痛みはないよ。
そっちこそ、足は?」
「動かすと痛いけど、自業自得だ。」
「ははは、じゃあ俺も自業自得だ。
お節介かけた罰だ。
はぁ〜…」
一息吐いた
「難しいな、人間関係って。」
「ああ。」
およそ聴かれたら恥ずかしい会話だが、
今は清々しかった。




