演技
誤魔化さなきゃ
取り繕わなければ
手遅れな状況からでも
今からでも
嘘を突き通さなければ
約束は守られない
守られなければいけない約束が
「……。」
黙って首を横に振る。
俺の反応に怪訝な顔をする医者。
それからの質問全部に首を振る。
時々嗚咽を挟みながら、
演じるように、
「何も、覚えてません。」
心を閉ざす様に。
「そうか。ごめんね。
ゆっくり休んで、何かあったら遠慮なくすぐに呼んでね。」
「はい。」
やっと諦めた医者に、
やっと頷いた。
医者が代わりに配膳を下げてくれたので、いよいよやることが無くなった。
医者は去り際にカーテンを閉めていったので隣の悠也の様子がわからない。
恐らく生きていて、恐らく無事なのであろう。
それくらいしか今は分からない。
何も分からないから、このまま寝たふりをしていようと思っていたら、隣のカーテンが開く音がした。
面会だろうか?
聞き覚えのある声だった。
「まだ寝てるな。」
「そりゃそうだ。」
「生きてるよな?」
「刺したのは逆だったって話だからな。」
「そっかそっか。
にしてもなんでだろうな?」
「なんでなんだ?」
急にカーテンを開けられた。
そこには秋悟がいた。
「知ってるか?望?」
「何を?」
「お前は何を知っている?」
質問を返された。
恐らく見抜かれている。
「あんな下手くそな演技で誰が騙せるんだよ。
先生は分かった上で引いたんだからな。」
演技の指導を受ける。
「…。」
秋悟の後ろには周助がいた。
いつもの2人が見舞いに来た様だ。
「修也は無事だ。」
「。…」
知っている。
「恐らく心臓を刺したかったんだろうが、綺麗に左右逆だった。」
知らない。
「なんでだ?」
知っているし、知らない。
まっすぐ目を見つめられ、何を言っても誤魔化せない。
「…『何でか』なんて俺が知りたいくらいだ。
ばあちゃんが倒れて大変だって言うのに。」
秋悟に胸ぐらを掴まれた。
「なあ、おい。
何でだ?」
声色は変えずに言う。
周助に気づかれない様に。
その目は据わっていた。
「ああ、本人に聞いてみればいい。
生きているのなら起きた時に。」
掴む手にさらに力がこもる。
「なら、お前に聞く。
望、ばあちゃんが倒れて、友達が倒れている中、お前は何を やっていた?この足はなんだ?何故だ?」
有無を言わさない矢継ぎ早の質問。
殺気もこもっているであろう瞳。
見下し睨みつけ怨みを纏っている。
そこまで恨まれる覚えはない。
心当たりならある。
『結局、生きているのだからそれでいいじゃないか?』
そんな事を言えば殴られるだろう。
かと言って今際の夢を説明しようにも俺自身がわからない事だらけだ。
きっと上手く言葉にできない。
「秋悟、落ち着けよ。」
観念した矢先の
夢でも聞いた声。
「周助、悪い、先生を、呼んでくれ」
「おう、わかった!」
「廊下を、走るなよ。」
ぎこちない喋り方。
気づけば秋悟は手を離していた。
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
更新ペースは相変わらず遅くなってますが、
生活に余裕が出来ればもう少し頻度が上げられると思います。
頑張ります!




