願いを叶えるモノ
なんて事ない
昔話だ。
今の俺が学生なのと同じに
彼らにも学生の時分があった。
彼が学生の頃、彼女は教師だった。
これはそんな彼の懺悔だった。
君と話せて良かったよ。
話せて楽になったよ。
ありがとう、ありがとうね。」
「俺も、です。…
そうか…
改めて出直すよ。
そうじゃないと彼がうるさいだろうからね。
そうじゃなくても、」
「きっと、待ってると思います。
そうだといいな。
ああ…」
手を挙げて去っていく背に手を振った。
それしか出来なかった。
「おかえりや、望。」
「ただいま、ばあちゃん。」
「みんなは?」
「帰ったさね。」
「そう、…」
「あの男の人はどうしたんだぃ?」
「また来るって。」
「そう…」
本当に覚えてない?
忘れたの?
言葉を飲み込んだ。
次の日、いやに目覚めが良かった。
今日も店番の手伝いだ。
「ばあちゃん?
ばあちゃん、
ばあちゃん!?」
呼びかけても返事がない。
急いで様子を見に行くと、うずくまっていた。
弱々しくか細く
途切れ途切れ
震えか痙攣か
最後に
最期に
喘ぐように
息を放った
救急車が来るまでの間、ばあちゃんを寝かしつけた。
突然だった
何もかも
悠也と桂さんが突然来た。
訳を話したのに、顔を見せてくれと言って聞かなかった。
先日、桂さんから昔話を聞いたばかりで断れなかった。
後悔ばかりだと言った。
最期に話がしたかった。
ただ謝りたかった。
感謝を伝えたかった。
そう、言う桂さんに悠也は笑いかけた。
俺に任せてと言って、2人を置いて台所まで案内させられた。
「望、後の事は頼んだ。
自分でもどうなるか分からない。
でもやっぱり最初からこうするしかなかったのかもな。
いい夢を
今際の夢を
」
膝立ちで天を仰ぐ悠也は、
笑って右胸に突き立てた包丁を躊躇なく押し込んだ_
その姿はまるで拝むような
祈りのような




