西の砂漠.4
『……………!』
「ん?」
「コン?」
「チュウ?」
「本当に可愛いですねぇ。
君達は」
わずかに聞こえた人の声に、私が反応すると、そんな私に反応して、二匹が首をかしげた。
その頭を撫でてやると、嬉しそうに目を細める。
実に可愛い。
『……………!』
「っと、やっている場合では無いのでしたね。
フルー、火を消して下さい」
「コン!」
シュボッ!と火が消えると同時に、周囲が暗くなる。
しかし、僅かだが少しだけ明かりが見える。
かなり遠い、もはや点のような明かりだ。
『………………!』
声もそちらから届いている。
「これは、居ますかね?」
探していた行方不明者が居るかもしれない。
そう思って、一気に私達は加速した。
【縮地】と【大跳躍】を使い、暗闇を滑るように疾走する。
勿論、《空間把握》と《看破》、《暗器》の隠密を使用して、スケルトン達はすべて無視だ。
『……………!!!』
声が強くなった。
悲鳴か、絶叫か、何らかのハプニングに見舞われているのかも知れない。
「【ボルテック】」
速度をあげて、私は駆けた。
周囲は、水分が少し多くなってきている。
同時に、既に光はかなり近くなって来た───。
いや、追い越した。
眼前に、巨大な口。
「これは!?」
咄嗟に、身を翻して口をなんとか避ける。
動作を早くする【ボルテック】を選択しておいて良かった。
動作と同時に速度を早くする【疾風迅雷】や【速度を早くするエアブラスト】なら、口に突っ込んでいただろう。
【疾風迅雷】なら、そのまま貫通するかもしれないが。
「………!」
声が聞こえた方を見る。
そこに居たのは、大きな口の魚に蛙の足を生やした様なモンスターだった。
どうやら、私は嵌められたらしい。
頭の上の光る触覚を揺らしている。
「鮟鱇、ですかね。
まったくもって、面倒な」
「………!」
鮟鱇が、口を開いて突撃してくる。
だが、既にかわせる体制を取っている。
当たらない。
だが、正面から見ると大きな口だな………等と思う暇もなく、私は再び驚いていた。
「助け……」
口の中に、冒険者風の少年が居た。
「チッ」
すれ違い様に使おうとした【雷放電】をわざと外して、《看破》を使う。
鮟鱇の様なモンスター、誘導魚と一緒にタズマと言う名前が写っている。
行方不明者の一人だ。
「成る程。
あの距離で声が聞こえるのは、おかしいと思っていましたが、モンスターの口がメガホンの様に成っていれば、それも可能だということですか」
『助けてくれぇぇぇえええ!』
私の考えが、間違いではないと示すかの様に、口を大きく開いた鮟鱇から、もはや爆音といって指し違いない声が響く。
よく見ると、HPが4分の1程しかない。
生かされているのだろう。
獲物をより多く沢山呼ぶために。
獲物に攻撃を躊躇させるために。
獲物が仕留めやすくするために。
「ああ、今までで一番ひどいモンスターですねぇ!」
言いながら、足元の水をさわる。
「【パラライズ】!」
水面を電気が走った。
鮟鱇に、電気が届く。
バチッ、と火花が弾けて鮟鱇のHPバーに麻痺の表示が加わった。
「【エアブラスト】!」
既に切れた【ボルテック】の代わりに、【エアブラスト】を使用する。
そして、鮟鱇に近づいて、僅かに開いた口に腕を突っ込んで少年を引き摺り出す。
「フルー、ノウン!」
呼び掛けと共に、少年を放り投げる。
それを、追い付いてきたフルーが受け止める。
「そちら、頼みますよ!」
「コン!」
「チュッ!」
鮟鱇を抑えていた手に、力を込める。
グニャリとした感覚が手に広がるが、それでもしっかりと掴んだ。
「試させてもらいましょうかね、【空衝撃】!」
掴んだ手と、逆の手に意識を会わせて、魔法を放つ。
鮟鱇の目と目の間、私の眼前で放たれた【空衝撃】の結果は、目に見えて現れた。
魔法を放った右側の手が衝撃に耐えきれずに、跳ね上がると同時に、その手があった部分に大きな風穴が空いている。
覗くと、フルーに照らされている砂地が見えた。
そこで、鮟鱇がポリゴンとなる。
『critical』の表示を見る限り、偶然弱点に当たってしまったようだ。
「まあ、この感じでは、criticalだろうと無かろうと大差ない気がしますがね」
「ゴホッ、ゴホッ!」
「コン!」
「チュウ!」
咳と鳴き声に振り向くと、よろよろと立ち上がろうとする少年が居た。
あんな状態で生きていた少年の悪運を内心で誉めながら、私はフルー達の方へと向かった。
誘導魚
属性 光
砂漠の地下に潜む鮟鱇のようなモンスター
暗闇のなかで光を使って獲物を誘き寄せたり、捕まえた獲物を口のなかで叫ばせて獲物を呼び寄せるなどの狡猾な性質をしている
だが、あまりHPは高くない上に、数が少ないため、あまり会うことのできないモンスターでもある
スキル
ロープマイスターLv50 暗器Lv29 踏技Lv5 雷魔法Lv65 風魔法Lv65 空間認識Lv44 テイマーLv48 身体強化Lv29 看破Lv39 装備制限解除(数〈Lv変化なし〉
控え
酒職人Lv3 付加職人Lv3 縄職人Lv6 道具職人Lv17 採掘Lv5 大声Lv32




