老兵の鎖使い(別視点)
サガさん視点でお送りします。
儂は今、歓喜に包まれている。
今なお感じ続けている焦りや不安を取り除く唯一の手段と対面しているからだ。
怨敵との対面しているからだ。
「【空激砲】!」
「【地龍骸】!」
ラクドから放たれた空気の砲撃と儂の龍の頭蓋がぶつかり合った。
砲撃が龍の一部を貫通し、こちらに届くと同時に龍の頭突きがラクドを捉える。
逆方向へ、各々吹き飛ばされた。
相討ちだ。
だが、両者ともに防御が間に合っている。
「ぬおオ!」
儂の右の二本の鎖が地面に突き刺さった。
ガリガリと音をたてて地面を削り、勢いをなくす。
ラクドも同様にナイフを地面に突き立てて勢いをなくしている。
「ラクドォォオオ!!!」
左の鎖の二本を束ね、一つの太い鎖にする。
横凪ぎした。
「【跳躍】」
ラクドが飛び上がりかわされた。
じゃが、
「その程度で終わりな訳無かろうが!」
左をはずせしても右がある。
右の二本の鎖を地面から引き抜き、ラクドへ飛ばす。
鎖が蛇行し、ラクドへ向かう。
「落とせ【ダウンナイフ】」
しかし、鎖は落とされる。
いや、落とされるだけではなく、鎖は重くなっていた。
手繰ろうとしても、思うように動かない。
隙が出来たと思うのが後か先か、攻撃が来た。
「【ペストペイン】」
赤黒い煙を放ちながら、五本のナイフが飛来した。
咄嗟に左の鎖を操り弾くが、一本抜けて足に刺さる。
「ぐぬぅ!?」
体に異変。
確認すると、『毒状態』と『出血状態』の両方が掛かっている。
だが、どの状態異常も耐性がある。
構うものか。
「【パラスコールド】」
「【破城鎚】!」
更に飛来する緑色の煙を纏う十本のナイフを一掃する。
その一本が偶然遠くへ飛ばされ、一人の盗賊に刺さった。
その盗賊は、小刻みに震えながら刺さった位置から凍り付く。
『麻痺状態』と『凍結状態』だ。
「(やはり、バトラーの戦いかたとよく似とるのぉ。
見ておいて、やはり正解じゃったか)」
元々、ラクドが暗器使いだと言うことは知っていた。
そして、ナイフ使いだと言うことも。
だから、バトラーのスキルを見て、戦闘を見れば何か対策ができると思っていた。
「(じゃが、やはりスキルレベルが高いのぉ!)」
発動できる状態異常が二つとは恐れ入る。
それは、バトラーが二回攻撃するのを一回で行っていることになるからだ。
しかし、
「(本人の技量がバトラーに比べて低いわ!)」
【破城鎚】を強引にかわしたせいで、体が流れている。
いい的だ。
「【鎖玉】」
分けられた四本の鎖の先が球体を形取る。
そして、各々を別の角度から殴りかからせた。
「ぐッが」
腹や顔、背中に球体がめり込む。
ラクドが殴り飛ばされた。
「止めじゃ!」
二本の鎖を引き戻し、地面に突き刺して儂自身が浮き上がる。
そして、ラクドの頭を掴み上げる。
「【拘束】」
ジャラジャラという音と共に鎖がラクドに巻き付いていく。
「あ、ぐ」
掴んでいる頭から声が聞こえた。
まだ、意識があるらしい。
ちょうどいいので、言いたいことを伝えよう。
「殺さないのは、儂の慈悲じゃ。
しかし、お主を許す気はない。
欠片もじゃ。
じゃから、永遠に岩の中で養分になっておれ。
【土魔法禁術、鉄鋼処女】」
壁にラクドを叩き付け鎖をほどく同時に、唱えた魔法が姿を表す。
鉄で出来た感情のない女の姿をしたその魔法は、意識のないラクドを抱くと、ラクドもろとも壁の中へ吸い込まれていく。
【看破】で見ていたラクドのHPが緑から灰色に変わった。
そこから、下がることもなければ上がることもない。
それは、ラクドが意識を冷ましても同じだろう。
「終わりましたか?」
無数の氷の棺を背後にバトラーが儂に話し掛けてきた。
肩には針鼠、横には黒い狐がいる。
そちらに目を向けて儂は、言った。
「おお、すまんのぉ。
待たせてしもうたか?」
今まで感じていた焦りや不安は、すでになかった。
ラクドは、バトラーより暗器のスキルレベルだけ高い劣化だと思ってくださいな。
別視点なのでスキルは無しです。




