6話
しかし、元々短かった話をボリューム増やすのって地味に大変ですねー…。
描写を増やせば何とかなるさ、って楽観してた自分を殴り飛ばしたい(吐血
相変わらず拙い文章のままですが、お楽しみになられれば幸いなのです。
「ふぅ…」
俺は大きく息を吐きつつ、肩をほぐし、目元をほぐし。
しかし、15歳風情でこんな事務仕事の職業病を患うとは思わんかったぞ。
等と軽く現実逃避しつつ机上にある数枚の書類を片付け始める。
――海から帰って来て、数日。
帰って来てから次の日の仕事始めで俺達を待っていたのは、異様な数の従業員希望者で。
それらを捌くのに一週間近くを費やしていた。
どうやら、父さんがシンさん――創世神、を雇い入れたと言う噂を聞きつけ、
父さんの持つ関連会社ほぼ全てに異形の存在が大量に雇ってくれ、と殺到しているらしい。
俺の所も、それのあおりを食らって、本日だけでも8人のヒトと面接していた。
いや、仕事にならんのだが。スケジュールは埋まりっぱなしだし。
更に云うと、本気でバイトをしたいって思ってる者も居るかも知れんから面接そのものは断れんし。
「お疲れ様です~」
「あ、すいません。ありがとうございます、亜摩さん」
「いえいえ~。これぐらいの事はしますよ~」
そんな疲れたサマに、労いの言葉を掛けながら俺の前に冷たい飲み物を差し出して来てくれる亜摩さんである。
……幾ら慣れてきたとは言え、まだまだ物を知らない俺にとって、こういう時に居てくれるのはとても有難い話だ。
「――しかし~、良かったのですか~? 今の方、十分に使えそうな人じゃないですか~?」
「や、彼女はどう考えてもバイト応募に来た、と言うよりは俺そのものに興味を持ったクチだと思いますし」
……そして、俺がシンさんを殴り飛ばした件も神魔双方に伝わっているようであり、
神・魔界で“神を撲殺せしめる者”と言う不名誉な二つ名が一人歩きしてる、
と言う話をライアさんやウリエルから聞いて、またもや胃を痛めたのは公然の秘密となっている。
……頼むから勘弁してくれ、いや本当に。
「……流石に、今から『英雄的な死者達』に選定されるのは嫌ですよ、俺は」
「あ、あはは~……」
……因みに先のバイト応募で来た女性はブリュンヒルデ、と言っていた。
単なる普通の一般人である俺に一体何を求めようとしたんだ、あの『死すべき者を選ぶ者』様は。
……とりあえず、これから暫くは魂を刈り取られない様に夜道には気を付ける事にする。
確か北欧神話的には、戦死とか事故死でも刈り取るらしいからな……。
「それ以前に、今の状況で雇う意味は余り無いですしね。
ウリエルとガブリエルさんを入れた時点でギリギリラインでしょう。
もうちょっと事業を拡張するなら兎も角」
「確かに、そうですよね~……」
――そうなのだ。シンさんから開放されたガブリエルさんは、何故か知らんが俺の所に転がり込んで来た。
貴方様がわたくしの新たな主様です、と言われたが、自分的には有り得ないと思い断ったのだが……
無理やり職場に押しかけて来て、夜間の方の雑務処理に収まってしまった。
……頼むから面倒事は他所でやってくれと願いたいんだが……無理なんだろうなぁ。
「ま、まあガブさんはああいう方ですし~……」
俺の表情でガブリエルさんの件を思い出した事を察し、気遣いの言葉を掛ける亜摩さんである。
本気で彼女に救われている気がするな。
……と、そんな彼女の表情がふっと曇り。
「――でも、ガブさんの行動力と言うか~、そう言うのは羨ましいですね~。
私、ずっと流されっぱなしだったので~……」
「? どういう事ですか?」
しみじみと呟く亜摩さんに、俺は疑問の声を投げる。
その問い掛けの言葉に、少々気まずそうな声音でぽつぽつと話し出してきて。
「えっと~……。実は私~、かなり無理やりにお稲荷さんに格上げさせられたのですよ~……」
「それは、初耳ですね?」
「まあ、言ってませんでしたし~。
――先代様が、『世界を見てくる』と言って私に権限を譲り、出て行って……早350年です」
「……ちょい待てい先代殿」
微妙におかしい台詞に思わず突っ込みを入れてしまう。
……つうか自分の領地を適当に任せて旅に出て数百年も放浪してるヤツって何だ?
そんな俺の突っ込みに苦笑しながら、亜摩さんは続ける。
「その頃の私は、生まれて10年程度の狐霊だったのです~。
当時は先代様の神通力のお陰か、珠螺火神社と言えば、かなりご利益のある神社だったのですけどね~。
私に代替わりしてから、神通力が目に見えて衰えた所為で、一気に廃れて行ってしまいました~……。
私も流されっぱなしはどうか、と思って神通力を扱える様、修練を続け努力はしたのですが~、中々上手く行かず~…」
そこまで言い終えた後、亜摩さんは身体全部を使って落ち込んでしまう。
キツネ耳とか尻尾もしおしおと萎れている様に見えるのは目の錯覚だろうか?
……しかし。亜摩さんって、話に聞いた以上に見事な落ちこぼれだったのか。
そんな俺の思考を読んだのか、彼女は微妙に拗ねた表情で、睨みつけてきた。
「――瑠伊耶さん~? 何を考えていたのですか~?」
「ぇ、あ、いやえっと、その……」
確かに睨んでいるのだろうが、貴女のようなほんわかな美人さんがそれをしても可愛らしいだけですよ、亜摩さん?
あまりに年不相応な子供っぽい仕草に何と言うかその……見惚れてしまった俺は、しどろもどろに言葉を濁し。
いかん、頬が地味に熱い。
そんな俺の反応を別の意味合いに捉えたらしい亜摩さんは更に不機嫌になってしまう。
「む~、もぅ瑠伊耶さんなんて知りません~っ」
「あ、えっとその……すいませんっ!」
「つーん」
いやそんなに可愛らしく拗ねんで下さい。
後キツネ耳と尻尾まで拗ねた様にツンツンにしないで下さい。
というか、先に気のせいだと思っていたのは気のせいではなかったのか。
耳と尻尾が感情に合わせ思いっきり反応する様ってのは可愛すぎますって本当に。
――変な方向に思考が逸れたのをまたもや察したらしい亜摩さんは、もうどうしようもないレベルで不機嫌になってしまい、
それからかなりの時間を、彼女の機嫌を治す為に費やす事になってしまった。
そのお陰か、今日一日全く仕事が進まなかった上に、
何時の間にやらその不機嫌の理由が俺が亜摩さんを虐めたという話になってしまい、
ライアさんに女の敵、としこたま殴られてしまうが、まあ自業自得以外の何者でもない気がするので、その制裁は甘んじて受ける俺であった。