8.新たなぷにとの遭遇。
それはレオンと二ールが走り去る廊下の端っこ……。
なにやら得体の知れない丸い物が転がっている。
色はグレー。つやつやで硬そう。大きさは私と同じくらい。何やら節っぽい物が放射状に入っているのが見える。
それを見た私はとある昆虫を思い出した。
あれ? これあれじゃね?
なんかじめっとした場所で、石とが枯葉の下なんか見ると出てくる危険を察知すると丸まるあれじゃね?
私はその丸い物体を暫し観察する事にした。
………。
あ、なんか動き出した。
お? 今度は上部分がパカッと開いた。
ん? 開いたはいいけど、球体部分を下にして半円状に開いてるもんだから、揺りかごみたいにゆらゆらとゆれてる……。
うん、手足ばたつかせてるね。起き上がれないみたいだね、あれ。
「う~う~っ!」
必死こいて唸るそれは、だんご虫のぷにだった。
ぷにぷにほっぺを真っ赤にして、手足を一生懸命動かしている様は私に鼻血を吹かせるのに十分だと思います。
それから暫しその姿に胸キュンしていた私であったが、とうとうそのだんご虫のコロボックルはべそをかき始めた。
流石に可哀相になってきたので助けてあげる事に。
「大丈夫?」
「っ!(モゾッ)」
「ああっ! また丸まるにゃ!」
声を掛けた所すぐさま甲羅を丸めようとするだんご虫のぷにを慌てて止める。
しかしその制止も空しく彼(彼女?)はまたその名の如くグレーの団子になってしまった。
まったく……恥ずかしがり屋なのか人見知りなのか臆病なのか……その全部だったりして……。
とにかく、こんなおいしい萌え素材は放っては置けない。ぜひともお友達にならなければ!
「またそうやって丸まってもしょうがにゃいでしょ!? 起こすの手伝ってあげるから! ね?」
「………(そろっ)」
なるべく優しい声音で話しかけてあげると、数センチばかりだんごが開いた。
その隙間から此方を窺ってる気配がするので、私は出来る限り優しく微笑む。
このぷにの表情筋がどこまで作用するのかわからないけれども、目の前のだんご虫のぷににはそれなりに働いているようで、そろそろとだんごを開いてくれた。
顔は何と言うか、だんご虫の甲羅がその頭までも覆い、それが顔半分隠してしまってよく見えない。両脇から触角のようにグレーの前髪が垂れている。
それなのに可愛さがまったく損なわれないとはどういう事だ!? これもコロボックル仕様なのか!?
「い、いじめない?」
「………」
心細そうに言うだんご虫ぷににズキュンと胸を打ち抜かれました。
思わずその場に膝をつく私(orz←こんな状態です)。
鼻血を吹かなかったのは奇跡です。
目の前のだんご虫ぷには、動けないながらもそんな私を見ておろおろとしている。
うん、そんな所も萌えポイントだね☆
何かそんなだんご虫ぷにを見ていたらうずうずっとしてきた私は、徐に奴に近づいた。
「……う?」
何それ「う?」って可愛いんですけど!? 覚悟なさい!
私はこやつが動けない事をいい事に、万遍無く突っつきまくってやった。
だってだって! 「いじめない?」なんて訊いてくる時点で「いじめて下さい」って言ってる様なもんでしょうが!
私悪くないもーん。いじめてちゃんなこの子が悪いんだもーん。
ってゆーか、何この子。ものすごく悦んでない?
今もほら、「きゃっきゃっ」ってものすっげ笑顔。
何ナノ? Mナノ? やっぱりいじめてちゃん?
いや待てよ? そういやレオンとニールの時もつんつんしたらいい奴だみたいに言われたような……。
他のぷに達も泣いてる彼らを見てつんつんしてたし……。
はっ! もしかしてこうやって突っつく事が世間一般的なぷにの慰め方とか?
うーん、じゃあ頬っぺたに擦り寄ってきたあれはなんだったんだろう? いや、気持ちよかったけどね?
頬っぺたに何か……あ、頬っぺた突っついた時が一番悦んでる。やっぱり頬っぺたに何かあるのかな? まぁ、ぷにの中で一番柔らかいの頬っぺただけれども……。
なんて考えていた私は、だんご虫のぷにが此方をじっと見つめている事に気付かなかった。それも物凄い熱視線で。
― 新たなぷにとの遭遇 ―
《コロボックルの頬っぺたには何か秘密があるようです》