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15.ピンクの扉はハネムーンへの扉?

 一目で恋に落ちたあのぷにと、手に手を取り合って愛の逃避行………なーんつって☆ てへペロ♪


 えー、私は今、ぷにな王様とお城の廊下を走っております。

 何分、体がぷになもので、大した距離は走ってないように思われます。


 あれから、言い争っている他ぷに達をそのままに、手を差し伸べてくる王様に従って、その手をとった訳ですな!

 そして、ソロリソロリと部屋を出て、こうして逃げてる訳ですな!


 何せ閉じた扉の向こうで『あー! 王様がいないピョン!』とか『あの子もいないもん!』とか聞こえたから。

 そんでもって、すぐに追いかけてきたもので。

 後ろを振り向けば、『待てー!!』とぷに達が追いかけてくる。


 ちんまい足で、ぷにぷにぷにぷに。


 可愛いったらありゃしない。

 だがカエルよ。お前は全然可愛くねー……。

 もーなんなの? 何で白目向いてるの?

 口開けて、必死の形相で走ってるてめーをぷにとは認めねーよ?

 あ、転けた。ハッ、ザマァ!!


 そしてニコや。

 君は確かにだんご虫だ。

 そうやって丸まって追いかけてくる中では確かに早い。

 けどね、思うんだ。

 今、結構な早さで転がってるね。

 あともう少しで追いつくね。

 でもほら、徐々に道を逸れてるよ。

 逸れて逸れて……あ、柱にぶつかった。



「め、目が回るもん……」



 だんご虫の甲羅で、どうやらダメージは皆無のようであるが、思った通り目を回したようである。

 残るはレオンとニールだ。

 彼らは『待てー!』と確実に追いかけてくる。

 ヤベーこのままじゃ追いつかれる。

 そんな事を思って焦っていると、



「こっちだ」



 王様が、グイッと私の手を引っ張る。

 や、やだっ、王様かっこいい。

 その振り返った凛々しい顔に、思わずキュンとする。


 かっこいいより可愛いはずなのに。

 かっこいいより可愛いはずなのにっ!


 何故か二回言ってしまった……。


 そうして辿り着いたのは一つの部屋だった。

 ガランとして何もない石造りの部屋。

 だからこそ目立つソレの存在。

 石造りの灰色のその中で、一際目立つサーモンピンクのソレは、異様なまでの存在感を放っていた。

 そう、ソレは色鮮やかなサーモンピンクの扉。


 あれ? これってあれじゃね?

 ほら、開けると行きたいと思った場所に行けちゃう、未来の便利道具じゃね?

 襖に続いてあの猫型ロボットつながりなの?



「ここは王族だけに許された秘密の部屋だ」



 悶々と考えていたら、王様がそんな事を言った。

 その顔は真剣そのもので、目の前に滑稽な扉が存在するだけに、今一シリアスになり切れていない(私の中で)。



「あ、あの扉って?」

「あれは王が伴侶を見つけた際に、その者と共にくぐらなければならない扉だ」

「え!?」



 は、伴侶!? って事は、私って王様の伴侶? 奥さん? ワイフ? 妻?

 …………。

 やべっ、嬉しくて……嬉しくて、鼻血を通り越して吐血しそう。



「その名を“婚姻の扉”と言う」

「ぶふっ」



 いや、どー見てもど○でもドアだよ!? そんな大層な名前じゃねーよ!? でも嬉しー!



『王様ー!! 何処だぎゃ!?』

『この部屋にょろか?』



 レオンとニールの声が、部屋のすぐ外で聞こえる。

 いや、レオンとニールだけじゃないな。

 少し遠くから『ピョンピョンピョン!』『もんもんもん!』って聞こえる。

 って、何なのソレかけ声!?

 勿論それは王様にも聞こえているわけで……。



「迷ってる暇はない。行こう!」

「あっ」



 私の返事を待たずして、グイッと引っ張られる。

 斯くして、私はそのサーモンピンクの扉をくぐった。



 …………

 ………

 ……

 …



「ん……」



 急激な意識の浮上に、私は小さく声を漏らす。

 目を開ければ、見覚えある天井が広がっていた。



「あれ? 私の部屋……」



 手を見れば、ぷにぷにじゃない普通の手だった。

 頭に手をやってみても、髪の毛と丸い頭部。何処にも猫の耳など存在しない。

 念の為、お尻の方もチェックしてみても、やはり尻尾などなかった。



「あー……夢かぁ……」



 ちょっと残念のような、ホッとしたような。

 そうだ。これが現実ってものさ。

 そもそも夢じゃなきゃ、ころぼっくるに恋なんかしねーよ。初恋は破れるもんなんだよ。

 あれ? 何だろ。鼻の奥がつんとしてきた。

 そっかー、王様居ないんだー……グスッ。



「んん……」

「え?」



 何だかしょっぺーなーと鼻を啜っている私の耳に、聞き覚えのない声が聞こえた。それもすぐ近く。

 今私はベットに横たわっていて、どうやらその声はベット脇の床から聞こえたようなのだ。

 私はおそるおそるベット脇を覗いてみた。

 まず最初に目についたのは白い色だった。

 白い髪に白い服。マントっぽい物を纏っており、何だか高貴なオーラを感じる。

 伏せる目を飾るのは、髪と同じ白く長い睫。

 それが震えたと思ったら、瞼が押し上げられ、中から紅玉ルビーを思わせる透き通った赤い瞳が現れた。


 イケメンだった。超絶イケメンだった。


 紅い瞳を確認した途端に顔を引っ込め、ベットの上で呆然とする私。

 だって、あれ? なんか見覚えね?

 不振人物とか不法進入とか言う前に、物凄く見覚えある配色に頭の中にウサギでぷにな王様の姿が浮かぶ。

 しかしながら、今見た人物はどう見ても八頭身。

 もう一度確かめようと、私はまたベット脇を覗き込んだ。



「あっ」



 ばっちりと目が合う。

 あちらの目が見開かれたと思ったら、こちらに向かって微笑み掛けてきた。



「そなた、あの黒猫だな?」

「え?」

「フム、不思議な感覚だが、こちらの方がしっくりくる」



 彼は体を起こすと、自身の手を握ったり開いたりして感覚を確かめているみたいだった。

 今の彼の台詞を聞くに、やはりこの人はあのウサギでぷにな王様に間違いないようだ。

 王様は一頻り自身の感覚を確かめた後、私を見て何とも妖艶に笑ったのだ。

 思わずゾクリとしてしまう。

 魔性の微笑み。

 まさにその言葉がぴったりなほどに色気があった。

 恐らく、世の女性が見れば皆が皆、虜になってしまうようなそんな微笑み……。

 だが何故か、私はついさっきまであれほどまでに感じていた、あのトキメキを一切感じることはなかった。

 だから思わず言ってしまったのだ。



「私の王様はどこ?」



 しかも睨みながら。


 だってだって、ぷにじゃないぷには最早ぷにと呼べないわけだから、もうあのぷにぷにを味わえない訳で、ぷにがぷにしてぷにを……って、ぷにがゲシュタルト崩壊っ!!


 そう、その時私は、きっと混乱していたんだと思うよ……。




― ピンクの扉はハネムーンへの扉? ―

≪いいえ、八頭身になって萌えアイテム(耳と尻尾)を消し去る扉です≫


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