13.一目あったその日から……。
『王様!!』
皆が声を揃えて呼んだそのぷには、私の超どストライクなラブリィぷに。しかもウサギって……。王様って……。
王様パねぇ!! パねぇよ王様!!
真っ白なウサギさんぷにの彼は、その毛の色同様の純白の服に身を包んでいる。
愛くるしいその長い耳は、内側ピンク。
そしてそのピンと並んだ耳の中央にちょこんと王冠を乗せ、真っ赤に輝くルビーの瞳は真っ直ぐに前を見据えている。
そんでもってぷにぷにと、しかし威厳を持って此方に歩いてくる。
しかし……。
此処は王の間である。
王の間というのは、他国の者も謁見にくる為、この国の栄華を誇示する為に無駄に豪華にしている場合が多い。
ここもまた例に漏れず、物凄く豪華で派手である。
赤絨毯なんて当たり前。しかも長毛のふかふか素材。
そして私たちはぷにである。異様に手足の小さい赤ちゃんクラスである。
そんでもって王様、そんな足で長毛の絨毯の上を歩いてくる。
小さい足は絨毯に埋もれる。
当然歩きづらい。
王様、前を見据えたまま。
故に足を取られる。
王様、見事にコケた。
シーンと静まりかえる室内。
……えっと……んまぁ、絨毯無駄にふかふかだからコケてもあまり痛そうじゃないけどさ……。顔が絨毯に埋もれてるよ?
「お、王様?」
カエルが恐る恐る声を掛ける。
こんな処で何ですが、皆様ちょっといいざますか?
皆様、あのジブリの名作「となりのト○ロ」をご存じと思います。大抵の人は見ているでしょう。
そしてその中の名シーン、ヒロイン妹穴に落ちて寝ているト○ロと出会うシーンを思い浮かべていただきたい。
その時ちょろっと○トロの尻尾が出くると思います。ヒロイン妹がちょいちょい触ってぴくぴくと動いていたアレです。ヒロイン妹は最終的にはビョンと飛びついていたけど。
皆様、ウサギの尻尾って丸くないんだよ。思ったよりも長いんだよ。
んでもって王様のお尻からそんな尻尾がちょこんと生えております。
やべっ、鼻血出そう……。悶えてぇ……この絨毯に倒れ込んで、思い切りごろごろ転がって悶えてぇ……。
と言うか触りたい。
そしてあの名シーンを再現したい。(飛びつくのは勿論彼自身に)
つーか、王様起きねーな。
……ちょっと位いいかな? いいよね? いいとも〜、と言うわけで……。
「大丈夫……?」
飽くまで心配そうに。
私はそっと手を伸ばし、王様の頭に手を乗せた。
思った以上に彼の白い髪は柔らかくサラサラだった。
「なっ!? 王様に向かって無礼ピョン!」
うるせーよカエル! 無礼は承知だよ!
いいんだよ! 私は今目の前にある萌えが大事なんだよ!
ふふふ、もうこうなったら好き放題やってやるぞー。
私は徐に王様の耳に触れた。
「っ!!」
「なっ、何と言うことをするピョン!」
「王様に向かってなんて大胆なことするんだぎゃ!?」
「勇気あるぷにぅにょ! ある意味勇者にょろ!」
外野が色々と煩いが、耳には入らない。今私は耳の感触に夢中だからだ。
はぅっ、何これ。ベルベットの触り心地。それにあったかい……。
そしていよいよ魅惑の尻尾にそろそろと手を伸ばす。
だがそれは叶わなかった。王様が徐に立ち上がったからだ。
うん、睨まれてるね。
顔真っ赤にして睨まれてるね。
んでもって少しばかり目が潤んでるよ?
恥ずかしかったのかな? 恥ずかしかったんだね。
つーか、すっげカワッ!! カワワワワワッ!!
…………。
すげーなおい。咬みまくりじゃねーか……。
ぷにの代名詞とも言えるその言葉も、過ぎると言えなくなるもんなんだな……。(←因みに可愛いと言いたい)
ああっ、顔が緩む! 絶対今ほにゃっとした顔してるよ。
そんでもって手が勝手に動いて王様の頬っぺたをツンツンしています。
王様びっくりしてお目目が落ちそう。
「ケ、ケロー!! 王様になんて事してるピョン!! 馴れ馴れしいにも程があるピョン!!」
うるせーよカエル!!
お前にはひっくり返ったって馴れ馴れしくしないから安心しろぃ!!
つーか、このツンツンするのって相手を慰めるんじゃなかったっけ? 何も間違っちゃあいないよ?
そうだよね? あれ? 違う? 頬っぺたをツンツンするのはお友達になって下さいだって?
………。
いや、何も間違っちゃいないよ?
むしろ大親友になりたい……いやそれ以上がいい……え? それって恋人じゃね?
………。
ここここ恋人だってー!?
「不敬罪で頬っぺたツネツネの刑だピョン!!」
「そ、それはあんまりだぎゃ!!」
「いくら何でも刑が重すぎるにょろ!!」
「………(ガタガタ)」
私が一人で勝手に焦っている間に、カエルの奴がそんな事を言ってきやがりました。
ビシッと指差し、ポーズだけは無駄に格好付けるそいつに、レオンとニールは青い顔をして、「せめておやつ抜きの刑に!」なんて言ってる。
ニコはまた丸まったままで震えてるけれども……。
うん、お前たち……それって全然怖くないからね?
と言うわけで、私は「だから何?」と言うような目でカエルを見やりながら、王様を突つき続けてやった。
すると、カエルは口をぱくぱくとしながら次第に顔を赤くして、キッと此方を睨みつけてきた。そして何事か言おうとした時である。
また、凛とした声が響き渡った。
「止めよ、ケロヨン!」
「っ、しかし王様!!」
「よいのだ、ケロヨン。中々新鮮な体験である。それにこれはこれで悪くない」
「………」
一見シリアスな雰囲気だけれども、私はその時笑いを抑えるのに必死になっていた。
やべー、吹く。
吹いたら最後、暫く笑いが止まらなくなる自信がある。
だってケロヨンて……プクク。
このカエル名前ケロヨンだって……ブフッ。
まんまじゃねーか。ぴったりはまりすぎだってケロヨン。
つーか王様の口からケロヨンて……。
私はケロヨンをなるべく視界に入れないように、ひたすら王様を見つめ続けた。
すると、王様もこっちをじっと見ているではないか。
そうすると、必然的に見つめ合う事になるんだけど。
何だろう?
笑いの発作は止まったのに、胸の高まりが止まらない。
あ、これってもしかして……。
― 一目会ったその日から…… ―
《恋の花咲いちゃったかもしれません》




