12.ようやく王様とご対面。
今私の目の前には、すごく大きくて立派で豪奢な造りの扉がある。
そして私の両隣にはライオンぷにのレオンとヘビのぷにのニール。そんでもって何故ついてきているニコよ……。
そう、ニコはあの丸いだんご虫な姿で、コロコロと転がりながら私たちについてきていたのだ。
そしてやっぱり気付かないレオン達……。
途中何度か他のぷに達とも擦れ違ったけど、誰もニコに気付かなかったよ。どんたけ低いんだ、ぷにの認識力……。
えー、前回私のS心で思い切り彼らを怖がらせてしまったわけですが、何とか飴を渡して落ち着かせ(何故か持っていたよペロペロキャンディ)、本来の目的である王様に私を会わせると言う使命を思い出してくれたようです。
今私が見ているこの扉、何でも王の間に続く扉だとか。
なんか物凄い威圧感を感じる扉である。
いかにもという感じ。
おおぅ、これはいよいよですか? いよいよですよ!
てな感じで自分で質問して自分で答えてしまう程ハイテンションだぜぃ! ヤッフーィ!
王様おっさん説がどうした! コロコロ王国なんて、王様パンダなんだよ! 宰相がレッサーパンダなんだよ!?
ぷにぷに王国だって、きっとラブリィな動物が王様なんだ! 宰相も可愛いといいな。
そう思っていると、目の前で扉がゆっくりと開いてゆく。
しんと静まり返った部屋。
真っ直ぐに続く赤絨毯。
その先にはいかにもなでっかい椅子。
そう、王様が座るっぽい感じの、所謂玉座って奴ですな。
今は誰も座ってないけれど。
すると、静かな部屋に声が響く。
「遅かったピョンね、待っていたピョン!」
「っ!!」
私は思わず叫び出しそうになるのを必死に耐えた。
だってピョンって、ピョンって!!
ピョンって事は飛ぶの!? 跳ねるの!?
って事は、もしかしてウサギ!? いやん、ラブリィ。
ウサギってどこら辺がぷにぷにだっけ?
肉球? いやいや、ウサギに肉球は無いよ?
んじゃ鼻? あのヒクヒク動く鼻!?
「お待たせして申し訳ないぎゃ」
「来る途中、不測の事態に陥ったにょろ」
「ああ、曲者が出たという話は聞いているピョン。大方コロコロ王国の密偵に違いないピョン」
ビクッとするだんご虫のぷにが視界の端っこに見えるけど、今はそれ所じゃない。
いよいよピョンのぷにがすぐ近くに。
私は何というか心の準備の為に床を見つめている。
だって、いきなり見て私好みのぷにだったらどうするよ。
声が高かったし、聞こえた声の位置で彼もコロボックルに間違い無い。(よし、王様おっさん説は消えた……)
ぜってー飛びついてるよ。変態行為しそうだよ。
よだれ垂らして鼻血吹いてげっへっへと笑っていそう……。
うん、完璧変態だね。洒落になんないね。
と言う訳で、そんな変態さんからまだ見ぬぷにを守る為に、私はあまり直視しないようにこっそり深呼吸した後、ゆっくりと顔を上げたのでした。
嗚呼 胸が高鳴る!
「………」
いやぁ、何と言うか……言葉も出ないとはこの事だね。
今私の目は死ん魚のようになっている事だろう。
うん、何これ……。散々期待させといてこれて……。
ぷにと言うものは皆等しく可愛いものじゃないの!?
そう、ピョンのぷには全然可愛くなかったのである。
何故ならそいつの容姿は……。
1.目が異様に離れている。
2.口が異様にでかい。
3.目にも鮮やかな緑色の髪は異様に薄かった。
4.そんでもって穴はあるけど鼻の突起がない。
5.そんな鼻の下にはくるんと左右に丸まった立派な髭が存在する。
うん、これあれだ。緑色してて雨の日になると元気に飛び跳ねるあれだ。
いや、確かにピョンだけれども……ぷにぷにしてるかもだけれども……。
可愛くねぇぷにはただの二等身だ……。
取り敢えず豚が主人公のジブリ作品の名ゼリフ風に言ってみたけれども。無駄に格好良さげになったけれども……。
どう見たってこいつカエルだよな?
その時、ぷ〜んと虫が飛んできて目の前を通り過ぎた。と思ったら、ピョンのぷにが目にも留まらぬ早さで舌を伸ばして虫をキャッチした。そして虫は消えた……。
はい! カエル決定!!
つーか、きもっ!! いらねーよ!? そんな要員このぷにの世界にはいらねーよ!?
「フム、この者がお前達が言っていた奴かピョン?」
「そうだぎゃ」
「何でも迷子らしいにょろ」
カエルは偉そうに髭をいじくりながら、私を上から下にジロリと見てきたかと思うと、ハンと鼻で笑って来やがったのであります。
え? 何これ? すっげムカつく……。
殴ってもいいですか?
つか殴りてぇ……完膚無きまで殴り飛ばしてぇ……。
カエルのクセに! 髪の色からしてアマガエルのクセに!
「迷子とは……本当に迷子か怪しいところピョン」
「それってどういう事だぎゃ!?」
「フン、案外こいつがさっきの曲者かもしれないピョン」
「そ、そんな! それはないぅにょ。だってその時一緒にいたから間違いないにょろ!」
「さぁ、どうだか……何も単独の犯行とは限らないピョン。仲間という事もあり得るピョン」
カエルの目が半眼になっている。めっちゃ疑ってます的な目つきだ。
仲間ではない。
ついさっき何となく婚約者となってしまったけど、断じて仲間ではない。
はい、そこ! ビクッとしない!
仮にもスパイなら常に平常心を持ちやがれ!
「見たところ、その者は黒猫のようピョン。昔から猫は泥棒すると決まっているピョン」
「……はい?」
「違うぎゃ! こいつはいい奴だぎゃ!!」
「確かに猫だけど、この子はそんなことしないにょろ!!」
え? ちょいちょいちょい、待て待て待って?
今何つった? ね、猫? 黒猫?
……は? 私が?
まさかと思って、私は右手を頭に、左手をお尻に向けてみた。
柔らかくてふさっとした物が付いていた。
…………。
ふぉーぅ!? な、何じゃこりゃー!!
何と言うことでしょう。私の頭とお尻に獣耳と尻尾が……。
鈍っ!! 私鈍っ!!
今頃気付くなんて、これもぷにの認識力のなせる技なのか……。
あー、でも自分の物ながらこの感触気持ちいい……。
猫耳と尻尾、つやつやでふさふさで触り心地が最高だった。
「フン、どうだか。悪い事した奴は皆自分はやってないって言うピョン」
いや、私は一言も言ってねーよ? つか全然喋ってねーよ?
カエルこの野郎! 何様だよお前! あ、王様か。
でも認めねーよ?
私はお前がラブリィなぷにの世界の住人だなんて、認めねーよ? しかもこんな性格の悪い王様だなんて断じて認めるわけにはいかない!
だってぷには皆性格可愛くなくちゃいけないんだ!
意地悪でも腹黒でも、そこに萌えが無くちゃいけないんだ!
「何を騒いでおるのだ!」
その時、全ての声を打ち消す様なりんと響いた声に、其方を振り向いた私は一瞬時間が止まった気がした。
真っ白なふわふわな毛並み(髪の毛)、深紅のくりくりだけど凛々しいお目々、ピンと立った長い耳、愛らしいぷくぷく頬っぺに生意気そうに引き結ばれたちっちゃいお口。
…………。
パ、パねぇ……。
何なんだこの愛くるしい生き物は。
それは私の心にズキュンとどストライクな白うさぎのぷにだった。
暫く惚けていた私だったのだけれど……。
あれ? なんか二つあるうさ耳の間に王冠の様な物が……。
『王様!!』
あわあわと慌て始めたぷに達が、声を揃えて叫んだのだ。
― ようやく王様とご対面 ―
《ここまで長かった……》