10.この世界の犯罪はとても軽いと分かりました。
「結婚式はぷにぷに様式ところころ様式どっちにするもん?」
なーんて言われちゃいました、どーも私です!
言われた後しばらくは(どーゆーことぉ!?)とパニくって石の様に固まっておりました。
その間も、だんご虫ぷにのニコは色々と私に語りかけていたのですが私の頭には入っておりません。何か適当に相槌だけは打っていたのは覚えています。
そして気付けば私たちはお城の廊下の隅っこに仲良く並んで座っており、手には何故かクリームたっぷりのケーキがありました。
それはニコの手にもあり、どうやら半分こされているようです。
ですがどうしたことでしょう。私の目の錯覚でしょうか?
ニコの手の中にあるケーキの方が 明 ら か に 大きいような?
そしてそっちにだけ真っ赤に色づいたぷりぷりつやつやのでっかい い ち ご が乗っているような?
いえいえ、別に私が食い意地を張ってその様に言っている訳ではござんせんよ?(甘い物大好きだけれども……フルーツの中では苺が一番大好きだけれども……)
ただね? こういう場合は、仮にもプロポーズした相手には、でかい方を譲るもんではなかろうか?
「う? 僕がそっちでいいもん? って訊いたら、いいって頷いていたもん?」
あれ? もしかして口に出して言ってた?
て言うか、私が茫然自失としていた時かぁ! 曖昧に相槌を打っていた時にそんな質問するなんて、確信犯めぇ!
「う?」
くぅぉぁぁぁあああ! な、何だね君は!
その「う?」って! 首を傾げてのおまけにちっちゃい口でケーキを頬張るからぁ! リスみたいに頬っぺた膨らんでるしぃ! クリームもそんなにくっつけてぇ!
母性がっ! なまじ赤ちゃんっぽい外見だから、私の奥底に眠る封印されし母性が目覚めるっ!!
んな事されたらっ、んな事されたらぁ!
「もうしょうがにゃいなぁ……」
とか言って、ハンカチ取り出して君のぷにぷにのほっぺについたクリームを拭ってしまうじゃないかっ!
そうしたらニコが、
「ありがとうだもん!」
とか言って、恥ずかしそうに照れた笑みを浮かべて、
「そっちこそ付いてるもん」
なんてニコが私の頬っぺたに付いたクリームを拭ってくれて……。
………。
ありぇー? これ今まさにしてねぇ? そんでもって、何か物凄く甘酸っぱくねぇ?
え? え? 何これ!? 何か物凄くときめくんですけどっ!? 萌えとは違う胸キュンが!
ぷになのにっ!? ぷに相手なのにっ!?
ああっ!! 恋愛の経験値が無いばっかりにっ!!
このままじゃ、ぷにぷにだかころころだか訳の解らない様式で結婚式を挙げる事にっ!!
そんで愛を誓ってコロボックルの世界に永住か!?
………。
何でだろう、嫌じゃない……。
もう少し、この甘酸っぱい感じを体感したいような……。
ああっ! 恋愛経験が無いばっかりに!
こんな所で経験値をあげようって魂胆か!?
せこいっ! 我ながらせこいよ私!!
そんな訳で、このまま話をしてみることにしました。
「ねぇ、ニコってころころ王国から来たんだよね?」
「そうだもん。王様から言われてきたんだもん」
「ふーん、どんな王様にゃの?」
「パンダだもん」
「ふーん、パンダかぁ……」
「宰相様はレッサーパンダだもん」
「………」
パ、パンダだとぅ!?
今さらっと聞き流そうとしちゃったけど、何その王様、物凄く見たいんですけど!? それにレッサーパンダって……。
確かにどっちもころころっとしているけれどもっ!
それに何より、王様から言われて来たって言ってたけど、ニコって何気に偉い地位のぷになのか!?
「ち、ちなみに、王様ににゃんて言われて来たの?」
「ぷにぷに王国の王様は、どんなおやつを食べてるか調べてこいって言われたもん」
「………」
私は思わず自分の手元にあるケーキを眺めていた。
い、いやいやいや! コレがまさかソレだなんて、ねぇ?
あははーと乾いた笑いを漏らしながら、私は訊ねてみる。
「しょ、しょれで、どんなおやつって報告しゅるの?」
「クリームたっぷりの大きな苺の乗ったとっても美味しいショートケーキって報告するもん」
って! まさにコレじゃねーかぁぁぁあああ!!
ソレがコレだったよぉぉおおお!!
「さっきはうっかり見つかって、危なく捕まる所だったもん」
こいつが曲者かぁぁぁああああ!!
レオン、二ール! ここにあなた達の追っている曲者がっ!
「捕まったら、頬っぺたつねつねの刑に処せられるもん。僕、そんなの耐えられないもん」
軽っ!!
何だその軽い刑は!?
ニコ、想像してるのか頬っぺた押さえてプルプルしてるけれども。んでもって顔を青くして涙目なんだけれども。
それ見て萌えっとなんかしてないんだからねっ! 勘違いしないでよねっ!
― この世界の犯罪はとても軽いとわかりました ―
≪ツンデレなセリフを言う自分はとても寒いと感じました≫