第15話:僕が犯した最大の過ち【後編】~エヴァン視点~
無事婚約破棄が終わり、泣きながら部屋から出ていくルーナを目で追う。一体どういう事だ?ルーナはクラーク殿下が好きなのではないのか?もしかしてまだクラーク殿下や陛下から話を聞いていないのか?
そう、僕は最後に僕に言ったルーナの言葉
「エヴァン様、私はあなた様に出会ったあの日から、ずっとあなた様をお慕いしておりました。8歳であなた様と婚約できたあの日は、本当に嬉しくて、夢の様でした。あれから7年、こんな形でお別れする事になってしまった事、正直悲しく思います。それでも私は、エヴァン様と婚約できたこと、そしてあなた様の傍にいれた事、とても幸せに思います。本当にありがとうございました」
それが頭から離れない。それにルーナは泣いていた。もしかして僕は、何か間違っていたのだろうか?いいや、そんな事はないはずだ!
その場から動けない僕の肩を叩き、父上が出ていく。とにかく部屋に戻ろう。フラフラと立ち上がり、部屋に戻った。そして僕は泣いた。本当にこれでルーナは僕のものではなくなったのだ。
その現実が辛くて、どうしようもない気持ちになった。正直これからどうやって生きていけばいいのかも分からない。そんな思いから、僕はその後3日間、家から出る事が出来なかった。
それでも僕は公爵令息だ。このまま引きこもる訳にはいかない。そんな思いで、4日目、学院へと向かった。既に僕たちの婚約破棄の噂が学院中に広がっていた。
ただ、誰も僕を責める事はしなかった。中にはなぜか感謝してくる令息までいたのだ。そういえば、ルーナの姿がない。そう思っていると、ルーナもずっと休んでいるらしいと友人が教えてくれた。
どうやらショックで休んでいる様だ。もしかしてルーナは僕の事を?いいや、そんな事はない。現にルーナは僕の家から提示した慰謝料を拒否している。きっと後ろめたい気持ちがあるから、拒否したんだ。そうだ、そうに決まっている!
そして婚約破棄から1週間後、久しぶりにルーナが姿を現した。相変わらず美しいルーナ、もう僕の婚約者ではないのだ。既にたくさんの婚約申込が来ていると聞いている。皆バカだな、いくらルーナにアプローチしても、彼女はクラーク殿下の元に嫁ぐのに。
そんな中、先生がクラーク殿下と現れた。そして明日国に帰るとの発表があったのだ。そうか…明日ルーナを連れて国に帰るのか。そう思ったのだが…
どうやらクラーク殿下には婚約者がおり、国に帰ったらその女性と結婚するらしい。ルーナもその事を知っていた様で、普通に話しをしている。
一体どういう事だ?クラーク殿下はルーナと結婚するつもりだったのではないのか?いてもたってもいられなかった僕は、クラーク殿下のお別れ会が終わると同時に、クラーク殿下に話しかけた。
「クラーク殿下、あの…少しお話をしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「ああ、構わないよ。私に何か用かい?」
穏やかな眼差しで僕を見つめるクラーク殿下。
「あの…ナタリー嬢からクラーク殿下はルーナを連れて国に帰ると聞いておりましたが、違うのでしょうか?2人は愛し合っているとも伺いしましたが…」
「私とルーナ嬢がかい?確かにルーナ嬢とは仲良くさせてもらっていたが、僕には心から愛する女性が自国にいるからね。それにルーナ嬢だって、君を心から愛していた。僕とルーナ嬢は愛し合うなんて、大嘘もいいところだ。そもそも既に婚約者がいる令嬢に手を出すほど、私が愚かだと君は考えていたのかい?それは心外なだ」
「申し訳ございません…そんなつもりでは…」
「冗談だよ。そうか…だから君は、急にルーナ嬢に冷たくしたんだね。でも、ナタリー嬢がどんな女性か、君だって知っているだろう。それに公爵令息の君なら、少し調べればその話が大嘘だって、すぐにわかったはずなのに…君がそこまで愚かだなんて、思わなかったよ」
はぁ~と、ため息を付くクラーク殿下。確かにクラーク殿下の言う通りだ。僕はあの女の言い分を鵜呑みにして、ろくに調べもしなかった。
「ルーナ嬢はずっと悩んでいたよ。君がどうして急に冷たくなったのかってね…それにしても、まさかそんな理由だったなんてね」
クラーク殿下が苦笑いしている。
「とにかく、これ以上ルーナ嬢を傷つけないでくれよ。それから、ハドソン殿下にも話したけれど、ナタリー嬢は王妃にはふさわしくないね。今回の話を聞いて、増々そう思ったよ。そんな令嬢の嘘に、まんまとハマるだなんて…」
クラーク殿下が残念な者を見る目で僕を見ている。本当に僕は、なにをやっていたのだろう。
「それじゃあ、私はもう行くよ。とにかく、これ以上ルーナ嬢を傷つける事だけはしないでくれよ」
そう言い残して去って行ったクラーク殿下。まさかナタリー嬢に嵌められていたなんて!
そして何の罪もないルーナを1年もの間無視し、婚約破棄までして傷つけた。
「僕は一体何をしているのだろう…本当に僕は愚かだな…一番大切な人を傷つけ、自ら手放すだなんて…」
自分のあまりの愚かさに、涙が溢れて来た。本当に僕は何をしていたのだろう…




