朝食を準備しよう
―私はあの人に呪いをかけた。それを忘れてはいけない。―
軽い気持ちで行った儀式はなんの奇跡か私の推しを現世に召喚してしまった。
昨日はあまりのことに動転していて考えもしなかったがお貴族様な彼、ジェイミーがこの庶民的なアパートで満足するだろうか?
いや、普通に考えてはしないだろう。
だけど、私の付け加えた設定のお陰か作中は冷徹非道な彼もデレデレとまではいかないが優しいので特に文句などは言われなかった。なんなら、ベッドを譲ろうとしたら断固拒否されて床で寝る始末で……。
(解釈違いだ!そんな優しい男じゃないだろ!!)
でも、優しくされて嬉しいという気持ちもあるので私はあさから消化不良だ。
複雑な思いを抱きつつ、ジェイミーのために朝食を用意するために早起きする。
正直、昨日はドキドキして殆ど寝れなかったので眠くて仕方ないのだけど寝汚い女だなんて思われたくはない。
これが乙女心ってやつなのかな?
超モテる友人に男たちを総取りされてきた為にイマイチ恋愛事に恵まれなかった私はそんな事を思いながら台所に行こうとして立ち止まる。
床にジェイミーが寝ている。
(イ、イケメンすぎる!!!!!)
思わず叫びそうになるのを手で抑え込む。
いつもきっちり撫で付けてある銀髪が崩れてなんだか幼い印象を与えている。
イケメンなだけでなく、かわいいだと?
反則すぎる!
思わず膝から崩れ落ちそうになるがこんな狭い場所でそんな事したら推しの上に伸し掛る事になるので何とか耐える。
は、早く台所に行かなきゃ!
息も絶え絶えに震える足を叱咤し、両足に力を入れると私は台所の方をキッと睨みつける。
決して足元を見ないように。
……あれ?これ、推しを跨がないと台所いけなくない?




