ディジルの右手が
ゲーム職人の神ディジルは、
新作ゲームの設定を考えていた。
ディジル
「あー……ここのセリフどうすっかなぁ……」
ディジル
「とりあえず……」
勇者 「みんな! 大丈夫か!?」
勇者 「いよいよ魔王との決戦だ!」
勇者 「くらえ! 必殺技!!」
ディジル
「……こんな感じか?」
しばらく沈黙。
ディジル
「……違うな」
ディジル
「ラストダンジョンなんだし、もっと“雰囲気”が欲しい……」
ディジル
「この演出では、“終焉感”が足りない……」
モフリオン
「もふ?」
ディジル
「もっとこう……」
ディジル
「魂を直接震わせるような……」
ディジルは椅子から立ち上がると、
ゆっくりと部屋を歩き始めた。
そして、完全にスイッチが入る。
ディジル
「——時は終幕」
ディジル
「幾千もの願いを背負いし旅人たちが、今……最後の扉へ辿り着く」
モフリオン
「もふ〜……」
ディジル
「紅蓮に燃ゆる禁断の城」
ディジル
「崩れゆく星の狭間で、誰にも知られぬ宴が幕を開ける——」
ゴォォォォ……
どこからともなく、重低音が鳴り響く。
ディジル
「導かれし者」
ディジル
「選ばれし者」
ディジル
「抗う者」
ディジル
「全ての運命は、この瞬間へ収束する……!」
モフリオン
「もふっ……!」
ディジル
「そして遂に邂逅する、怨敵」
ディジル
「世界を喰らう災厄」
ディジル
「決戦の行方は——神のみぞ知る」
ズォォォォォ……
ディジルはゆっくりと片手を掲げた。
ディジル
「——黒き境界より現れし飢餓の獣よ」
モフリオン
「もふ〜」
ディジル
「星々の理を喰らい、虚無を纏え——」
部屋に重低音が鳴り響く。
ゴォォォォ……
ディジル
「《アビス・モフリオン》!!」
モフリオン
「もふーーーっ!!」
バチバチバチッ!!
ディジル
「……いい」
ディジル
「今のは、かなり良かったぞ……」
モフリオン
「もふもふ!」
その瞬間。
みちる
『ディジルくーん!』
ディジル
「!!?」
みちる
『今話せるー??』
ディジル
「……こ、今宵は難あり」
みちる
『え?』
ディジル
「我は今……深淵の調律を……」
ディジル
「…………」
ディジル
「いや、違う!!」
モフリオン
「もふっ」
みちる
『なんだか、いつものディジルくんと違うね!』
ディジル
「わ、忘れろ!!」
ディジル
「今のは演出確認だ!!」




