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エモラの花

ノクシアは、ゆっくりと窓の外へ視線を向ける。




ノクシア

「名は──エモラの花」




その名を口にした瞬間、


どこか空気が揺らいだ気がした。




みちる

「エモラ……?」



ノクシア

「感情を増幅させる花さ」



イネリア

「増幅……だべ?」




ノクシア

「嬉しけりゃ、笑いが止まらなくなる」


「不安なら、心が押し潰されるほどに膨らむ」




ディジル

「……めんどくせぇ花だな」




ノクシアは、くつりと小さく笑う。




ノクシア

「イヒヒ……だから“効きすぎる”のさ」



フワン

「……扱いを誤れば、危険ですね」



ノクシア

「その通りだよ」




一拍おいて、ノクシアは続ける。




ノクシア

「しかも厄介なことにねぇ」


「普通に触れようとすると──」




軽く指を動かす仕草。




ノクシア

「霞みたいに崩れて、消えちまう」




みちる

「えっ、じゃあ……どうやって取るの?」




ノクシア

「“固定”するのさ」




ディジル

「固定?」




ノクシア

「妖精の涙でねぇ」




一瞬、静まり返る。




みちる

「……え?」




ノクシア

「妖精の涙を一滴垂らせば、花は形を保つ」


「その瞬間に摘めばいい」




みちる

「妖精……?」




ぱっと顔を上げる。




みちる

「妖精……!?」



目がきらきらと輝く。



みちる

「ほんとにいるの!?」



イネリア

「いるだべ〜」


ディジル

「まぁな」


フワン

「ええ、このあたりにも時折見かけますよ」


アマリュウは静かに腕を組み、わずかにうなずく。


アマリュウ

「珍しくはあるが、存在はしている」




みちる

「会ってみたい……!」




その声は、弾むように明るい。




ノクシアはその様子を見て、わずかに目を細めた。




ノクシア

「……ちょうどいい」


「近くに“野良”が一匹いるらしくてねぇ」




ディジル

「野良って言い方どうなんだよ……」



ノクシア

「群れに属さない妖精さ」



イネリア

「はぐれだべ?」



ノクシア

「まあ、そんなところだねぇ」




ゆっくりと杖を鳴らす。




コツン、と乾いた音。




ノクシア

「そいつに会いに行くよ」


「涙をもらわなきゃ、話にならないからねぇ」




モフリオン

「もふ〜」



みちるは胸の前で手をぎゅっと握る。



みちる

「妖精……!」



その目は、期待でいっぱいに輝いていた。

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