コッチャン放浪記「笑いの行き先」
石畳の道を、コッチャンは歩いていた。
背中には風。
腹の奥には、まだ少しだけ残っているあたたかさ。
フワンたちの店で過ごした時間。
アマリュウに追い出されそうになって、
それでも、みんな見てくれて、
最後には――笑ってくれた。
コッチャン
「……やるしかないぴん」
ぐっと拳を握る。
コッチャン
「俺ぴっぴは、笑いとすべりの神だぷん……!」
胸を張る。
コッチャン
「世界中、笑わせてやるぱーーーん!!」
――数分後。
小さな村の広場。
人はそこそこいる。
チャンスだ。
コッチャン
「こっちゃんですごっちゃんです☆
どすこいどすこい!!」
腰を落とし、全力の四股。
腕を広げ、堂々のポーズ。
完璧な入り。
……沈黙。
通りすがりの人が、一瞬だけこちらを見て、すぐに目を逸らした。
遠くで犬が吠える。
風が、少し強く吹いた。
コッチャン
「……」
誰も、笑っていない。
コッチャン
「ときめき☆マーガリン!!」
ハートマークを作る。
コッチャン
「ランデブーあんたぶー!!」
全力でバツ印。
コッチャン
「大丈夫?いやバッティング♪」
見えないバットを振り抜く。
……沈黙。
パン屋の煙突から煙が上がる音だけが、やけに耳についた。
コッチャン
「……ウケないぺん」
足元で、
もふ。
と、小さな声。
モフリオンが一匹、くるくると浮いている。
コッチャン
「……お前だけかぴん」
モフリオンは、ふわっと跳ねて――
「もふ!」
と鳴いた。
その瞬間、ぽん、と一匹増えた。
コッチャン
「……増えたぽん……」
さらにもう一匹、
ぽん。
ぽん。
コッチャン
「……ぷふっ……めっちゃウケてるぽん???」
思わず、吹き出す。
コッチャン
「……いいぺん」
顔を上げる。
コッチャン
「必ずみんな、笑わせてみせるぷん☆」
その時だった。
子ども
「ねえ!」
振り向くと、三人の子どもたち。
目をキラキラさせて、こっちを見ている。
子ども
「今のもう一回やって!!」
子ども
「変なやつ!!」
子ども
「バッティングのやつ!!」
コッチャン
「……え?」
一瞬だけ固まる。
コッチャン
「任せるぽーーーん!!」
全力で、もう一度バットを振り抜いた。
すると――
「キャハハハハハ!!」
「あっはははは!!」
転げるように笑う子どもたち。
涙を流して、腹を抱えて爆笑している。
その音は、小さかったけれど。
確かに、そこにあった。
コッチャン
「……」
少しだけ、目を見開く。
コッチャン
「……笑ったぴんな……!」
子どもたちは、うなずきながらまた笑った。
足元では、モフリオンが
ぽん、ぽん、ぽん、と増えていく。
コッチャン
「……上等だぷん☆」
胸を張る。
コッチャン
「俺ぴっぴの笑いは、ちゃんと届いてるぺん……!」
空を見上げる。
コッチャン
「次は、もっとでっかく笑わせるんだぱーーーん!!」
モフリオンたちが一斉に、
「もふーー!!」
と鳴いた。
笑いとすべりの神は、まだ旅の途中。
だけど――
その一歩は、確かに誰かを笑わせた。




