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イネリアが帰ったあと
「逃げ足だけは一人前であったな」
アマリュウが笑う。
「からかいすぎですよ」
フワンは淡々と生地を捏ねる。
「我は雨を降らせただけだぞ?」
「必要以上に、でしょう?」
アマリュウは、ほんのわずかに目を細めた。
「必要の定義は、誰が決める?」
窯の火が、ぱちりと鳴る。
「えぇ、アマリュウ様には敵いませんよ」
フワンは笑っているのか、いないのか。
「なんじゃ、つまらん。なぁ、モフリオン」
「もふ?」
白い毛玉が首を傾げる。
「パンはいらないんですか?」
「あぁー。また今度なー」
軽い声だけを残して、姿が揺らぐ。
(……いつ帰るんだ、この神)
窯の火が、もう一度だけ鳴った。




