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フワン
俺の名前はフワン。
パン職人の神だ。
俺は、不器用だ。
人間だったころ、
うちは米しか食えなかった。
腹は満たされる。
でも、どこか足りなかった。
初めて食べたパンの味を、
俺は今でも忘れていない。
あの香り。
あの柔らかさ。
あの、あたたかさ。
——ああ、世界には
こんなものがあるのかと思った。
俺の人生、色々あった。
うまくいかないことも、
守れなかったものもある。
それでも俺は、
パンを焼き続けてきた。
捏ねて、待って、焼いて。
ただ、それだけを。
俺はパンで、
みんなを守りたい。
腹が満たされれば、
少しだけ優しくなれる。
温かいパンがあれば、
少しだけ前を向ける。
俺は、
パンに無限の可能性を感じている。
今日もまた一人、
俺のパンを求めて客がやってくる。
扉の鈴が、ちりんと鳴る。
「……なんだ。お前かよ、モフリオン。」




