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ディジル

俺はディジル。

ゲーム職人の神様だ。

数字は俺だと言ってもいい。


五歳で全てのプログラミングを理解し操り、ゲームは俺の生きがいだった。


もちろん、世界を作るくらいにはな。


でも——元は人の子だ。


親に大切なゲーム機を捨てられた。

怒り、悲しみ、そして発狂した俺は、自分だけのゲームを作った。


ありとあらゆるものを、世界ごと作った。


やがて俺は、ゲーム職人の神になった。


たまたま生まれた存在——モフリオン。


浮かんでいて、ふわふわで、お菓子の家をかじる聖なる獣。

迷惑なやつだが、大事にすると飢えから守ってくれる。


そして喜ぶと分裂して増える。


モフリオンは、基本、神にしか見えない。


人間に見えるように作った個体もいるが——

通常の個体は、人間には認識できない。


そう、見えるはずないんだ。


「えっ、かわいい」


夕方の公園。

その一言で、世界の前提が崩れた。


目の前の少女が、宙に浮かぶモフリオンを指でつついている。

ありえない。

見えているはずがない。


思わず声が出た。


「……見えるのか?」


少女はきょとんとした顔でこちらを見る。


「うん?」


その瞳は、何も疑っていない。

当然のように、そこにいるものを見ている。


モフリオンが、少女の肩へふわりと乗る。

彼女は笑う。


「すごく、かわいいね」


まただ。

その言葉。

数値化できない評価。

論理に基づかない肯定。


「……お前、名前は?」


「みちる」

にこっと笑う。


「あなたは?」


一瞬、迷った。

神の名を、人間に明かすべきか。


けれど、なぜか隠す気になれなかった。

「……ディジル」


「へぇ〜、かっこいい名前だね、ディジルくん⋯!」


胸の奥が、わずかにざわつく。

これは何だ。

バグか?

例外処理か?

それとも——


その日。

俺の完璧な世界に、ひとつの“未定義”が生まれた。


それが、みちるだった。

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