もふもふとパンの香り
扉の鈴が、ちりんと鳴る。
「ようこそ、境界の窯へ」
フワンが扉を開け、みんなを招き入れる。
「わぁ!素敵なパン屋さん⋯!」
みちるが感激した声をあげる。
内装は、大きな窯と奥の厨房以外は
人間の世界にもありそうな、
木の温かみのある、ほっとするようなパン屋だ。
カウンターもあり、飲食スペースもある。
天井は少し高く、いくつか梁が通っていた。
「みなさん、お好きな席でお待ち下さい。
さっそくモフリオンが好きなパンを焼きますね」
フワンはカウンターの中に入り、
手際よくパン作りを始める。
ディジル、みちる、アマリュウは
それぞれ席に座ったり、寝転んだりしてくつろぐ。
「わぁ⋯いい香り〜⋯!」
みちるがうっとりする。
香ばしいパンの香りが、店いっぱいに広がった。
「なんか俺も腹へってきたな。
フワンさん、俺のも〜!」
ディジルが声をかける。
「えぇ、みなさんのパンも用意してますよ」
「⋯⋯ふぁ〜ぁ⋯」
アマリュウが大きくあくびをする。
モフリオンも
「もふぅ⋯」
と、小さくあくびをした。
「⋯そういえば、このお店って
人間にも見える、人間用の姿があるって言ってたけど
その時は、みんなの姿はどうなってるの?」
みちるが尋ねる。
「ん? 人間の姿になるよ」
ディジルはあっさり答えた。
「俺たちは自分の姿を思い通りに変えられるからな。
変身はアマリュウが一番得意だけど⋯
みちるのママも、俺のこと見えてただろ?」
「!⋯そっかぁ⋯!」
みちるの顔がぱっと明るくなる。
「じゃあ、私の家族やお友達も
普通にお買い物に来られるのね⋯!」
「そういうことだな!」
みちるとディジルは、楽しそうに笑い合う。
―――
「さぁ、焼き上がりましたよ〜」
フワンが、できたてのパンを運んできた。




