雪景色
ガガガガガガピーピーピーピー
朝4時、外から聞こえるその音は楽しさの欠けらも無い
大人たちが行う雪遊びの音だった
その音に叩き起された私は、不快感と罪悪感を抱えながら、
また今日を始める。お茶を飲み、ご飯を食べ、歯を磨き
制服に着替えて、毎朝決まった時間に家を出る。
なんの面白みもない私のルーティン
それを15年続けている私は社会適性があるのか、どれい根性なのかわからなくなる。
歩き始めて30分もするといつもの面子が挨拶をする。
「寒いね、」 「今日の漢字テストの勉強やった?」
「彼氏が最近冷たいの」、
一斉に投げかけられる言葉は全て右から左へ流れて行った。
みんなは私のことを聖徳太子かなんかだと思っているのだろう。私は「おはよう」と声をかけ全ての会話を終わらせた。
雪で埋もれた歩道は4人で歩ける訳もなく、1列になり声を空に飛ばして会話しながら歩いた。小学生の集団登校を思い出すがあの時から私は何も変わっていない気がした。(体重や知識の量は変わったとは思うが)大通りに出てやっと4人でまとまって歩けるようになると、周りには同じような服を着た男女が楽しそうに会話をし、学校に吸い込まれてゆく、私たち4人ももちろんその1部なので同じように学校に吸い込まれて行った。4人のうちふたりとはクラスが違うので、残ったのは私ともう1人の子だけだった。「しずく〜今日の漢字テストどうしよ〜」
「知らないよ。国語まではまだ時間があるから詰め込みがんばって」私に投げかけられた言葉を一蹴して、私は荷物を片付けた。こんな冷たい言葉を吐く私を友達に選ぶのは自分でもどうかしていると思うが、彼女曰く、私には私なりのいい所があるらしい。「しょうがないからこっち来て、」先程の冷たい態度を少し後悔した私は、彼女に優しく呼びかけ、一緒に漢字テストの詰め込みを行った。(私は既に頭の中いっぱいに詰め込んでいたので、得れるものは何も無くただ時間を失うだけだった)
15分後、「ありがとうしずく!これで何とかなると思う!」そう自信満々に彼女は宣言し、いつもより少しだけ胸を張って歩き、自分の席に戻って言った、私は軽いため息をつきながら1時間目の数学の準備をする。ノート、筆箱、教科書、下敷き、参考書、私はいつもこの5つを使って授業を受ける。参考書は要らないと言う人もいるが、私は1度学んだことはできる限り深く理解したいので、いつも参考書と教科書を照らし合わせてどちらにもペンを走らせる。鐘が鳴り、中肉中背に度がきついメガネをかけた先生が入ってくるのを合図に起立礼着席の三拍子が行われる。そこに敬いや、礼儀の感情はなく、ただの儀式として行われているため時間の無駄でしかないのだが、ここは日本だ。これを省かれることはない。
50分後、教室の上の方にある電子機器から大きな鐘の音が鳴った。授業の終わりを告げるチャイムだ。その音を皮切りに、いつもの儀式が2秒間行われ、すぐに雑音で空間が満たされた。
椅子が床と擦れる音、友達を呼ぶ大きな声、ドアを開けて出て行く先生のため息、色んな音が私の耳に届いた。
「あ〜疲れた〜、次は国語か〜」大きな独り言が私の横を通る刹那私の前には、優葉が立っていた。朝から漢字テストのことしか声に出していない彼女の声は、名前のごとく優しく生き生きとした声をしている。その声を私はずっと前から綺麗だと思っていた。「朝覚えた漢字はまだ頭に残ってる?」そう問いかけると彼女は「大丈夫!きっと!多分、十中八九、」と返事をした。
だんだんと自信がなくなっていく言葉に多少の不安を覚えつつも「私が教えたんだから大丈夫だよ、最後の復習しよっか」と前向きな言葉をかけ、ふたりで1冊のワークを見直す。楽しい時間はそう長く続くものでもなく、すぐにさっきと同じ音が、教室を包み込む、活気のあった教室の温度が一気に下がる。
漢字テストを怖がっているのはみんな同じようだ。
先程の男とは裏腹に、今度はこじんまりとして定年まじかの女の人が紙袋と教科書を持って教室に入ってくる。儀式を終えた私たちに先生は紙を配る。無音の教室の中に、ピッとタイマーの音が響く、その瞬間ガリガリとシャーペンが紙の上で踊りだす。数分後、ぴぴぴぴぴぴとけたたましい音が教室に響く、踊っていたシャーペンたちは次々と倒れ、後ろから前へと紙が回され最終的に教卓へと吸い込まれてゆく。その後はいつもと同じ授業が行われ、鐘が鳴り、先程より大きな雑音が教室に響き渡る。無理もない、今日は午後から新入生説明会があるため、二時間目で帰らされるのだ。3、4時間目の時間は生徒会の皆様が説明会の会場準備をするらしい。可哀想だと私は思った。学校から吐き出された私は朝と同じ道を通り学校に戻った。いつもと違って今日はやけに静かだった。優葉たちは各々予定があり、今日はひとりで帰ることになった。静かさが新鮮な感じた私はいつもより少しだけ遠回りをして家に帰った。いつも通り家のドアを開け、中に入り、暖房の温かみを感じようとしたが、鍵はあかなかった。私は思い出した。今日私は鍵を持って家を出ていない。今頃鍵は机の上で昼寝でもしているのだろう。どうしたものかと私は少し考えた。親が帰ってくるまで数時間ある。雪が降り積もる中親の帰りを待っていては私は凍死してしまう。いつもとは違う展開に困惑と感動を同時に抱えながら家の近くの大きなショッピングモールに足を運んだ。私だって一端のJKなのだ。遊びに興味がない訳でもないし、別に完全な真面目ちゃんという訳でもない。遊びに行く時はいつも優葉たちと一緒だったので、たまには1人を満喫するのも悪くない。そう思い寒い中足を運んだ先がここだった。私の体力ではこれ以上遠くへ行く気が起きなかった。
ぶらぶらとモール内を散策していると気になっているコスメを見つけた。「お試し用」と書かれた製品の蓋を開け、手首に塗ってみる。色も私に合うし、お値段も手頃だったので、即購入を決意した。その後私はカフェの横を通って映画館に向かった。気になる映画があったのでこれを機に見に行こうと思った。ふとカフェの中を見てみると、見慣れた顔があった。桜花だった。桜花の前には同い年くらいの男の子が座っていた。おそらく彼氏だろう、何か話している様子だったが私には聞こえるわけもない。ただ2人の顔を見るにいい話では無さそうだ。私は気づかないフリをして横を早歩きで通り抜けた。映画館に着いて、チケットを買い、大きなスクリーンと数え切れないくらいの椅子を見下ろせる席に着いた。私は映画を観る時は1番後ろで見るのが好きだ。特に理由は無いが強いて言うなら前の人の頭や、後ろの人の雑音が聞こえないのが好きなのだろう。1時間半近くたって、映画のエンドロールも終わり、ポツポツといたお客さんたちが各々感想をいいながら明るいモール内へと戻っていく。私は優越感と達成感に浸りながら見てよかったなと1人呟いた。独り言なんていつぶりだろう。誰にも聞こえることはないその声は間違いなく独り言だった。親が帰ってくるまで残り3時間、まだ時間を持て余すので、1階のペットショップに言った。私の家にペットはいないが、ペットショップにいる猫を見るために足を運んだ。その時先程のカフェの横をまた通ることとなったが、桜花の姿は消えていて、男の子だけが残っていた。どうやら別れたらしい。明日は桜花の愚痴を聞かされるんだろうな、と思い少し明日が楽しみなった。ペットショップに着き、子猫が戯れる姿を愛しさと哀れみと罪悪感が入り交じる感情を無視して、15分ほど眺めた。(もっと見ていたかったが、これ以上見ていると罪悪感が限界突破してしまうので無理やり足を動かした。)あと二時間と少し、何をしようか迷っていると、大広場で幼児向けアニメのショーをやっていた。普段は気にもとめずに素通りしているが、今日は時間も有り余っているし、昔みていたアニメだったので、懐かしさを感じながらショーを満喫した。幼児とその保護者の中に混じった、制服姿の女子高生は誰がどう見ても違和感でしか無かった。気づけば空も暗くなっていて、親が帰ってくるまで残り1時間半くらいになっていた。あともうひとイベントあれば帰ることができる。ただ私にはもう為す術がない。お金も残り1000ほどしか残ってないし、何よりもう見て回る場所もない。私は仕方なくウィンドウショッピングをした。靴、服、カバン、下着、モール内の全てのファッション店を見て回ると、いい時間になっていた。外に出ると乾いた空に綺麗な星空が広がっていた。私は星座をあまり知らないが、オリオン座だけは知っていたのでそれが見えたことに感動を覚えた。上ばかり見ていても家に帰ることはできないので、目線を下に落とした。車のライトが珠々繋がりとなり、暖かい家族の元へ帰っていくその奥では白さを失った雪が静かに地面にふしている。いつもより新鮮に感じた景色を目に焼き付けながら私は家に帰った。既に親は家にいて私を暖かく迎えてくれた。いつもは私の方が先に帰っているので、これもまた新鮮に感じた。外が冷えきって、みんなが寝静まる頃私も例にならって寝る準備をしていた。歯を磨き、お茶を飲み、目覚ましをセットし、冷えきった布団に身をくるみ、私の体温で布団が温まるのを待つ。布団に入って20分後布団は私と同じ体温を持つようになり、雪道を歩いた疲れから私はすぐに眠りについた。静かな夜を切り裂くように、ガガガガガガ、ピーピーピーピーと音が鳴る。私を叩き起すには十分な音。冬になると毎日のように聞く音。その音に、不快感と感謝を覚え私は身支度をする。お茶を飲み、ご飯を食べ、歯を磨き、制服に着替えて家を出る。毎日見ているはずだった。雪景色はいつもより光り輝いてる気がした。今日の優葉はどんなことを話してくれるんだろう。桜花はどんな愚痴を言うんだろう。弥菜はどんな反応をするのだろう。いつもよりみんなに会うのが楽しみだった。外に出ると、昨日より少しだけ暖かい風が吹いた。
この度は私の作品を読んで頂き、ありがとうございます。
これからも不定期で作品をあげていこうと思いますので良ければまた足を運んでくれることを願っています




