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生きてゐるタワーマンション  作者: 葉方萌生
第五話 妻のスマホ

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―沙綾とのチャットのやりとり―


<9月15日>


隼也【ごめん、今日の六限目に生徒が授業中に倒れてしまって、病院に付き添ってる】16:02



隼也【帰りが遅くなるかもしれない】16:03



隼也【今ちょうどご両親が来てくれた。もう少しだけ病院にいると思う】17:15


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 六限目の授業はちょうどその時間に空きコマだった三島先生に助けてもらい、俺は上山と一緒に救急車に乗り込んだ。

 病院に着いてしばらくして上山のご両親がやってくる。

 俺にへこへこと頭を下げてきたが、むしろ上山が倒れたのは自分のせいだという気がして、罪悪感が込み上げる。


「先ほど医者から陽太(ようた)の容体を聞かされましたが、そんなに悪くないそうですので、先生はお帰りください」

 

 上山のお父さんのほうが、俺にそう言ってくれた。

 内心ほっとしつつ、やっぱり心に棘が刺さったように、チクチクとした痛みが抜けない。


「あの、お父さん、お母さん」


 そのまま帰ってしまうのは気が引けて、俺は教室での出来事を二人に伝えた。


「陽太くんは、授業中に僕の顔を見て驚いた様子で……その後、気絶してしまったんです。僕が原因のような気がして。その、この度は申し訳ありませんでした」


 俺がバッと頭を下げると、二人は「いえいえ」とすぐに声を上げてくれた。


「先生が原因ではないと分かっていますから。お気になさらず」


 ご両親のその言葉が、胸に沁みた。

 その後、上山をご両親に任せて、俺は病院を後にする。

 時刻は十八時前。沙綾がちょうど家に帰っている頃だろうか。

 上山のことで放心状態になっていた俺だったが、外の風に当たっていると徐々に自分を取り戻してきた。

 スマホで沙綾とのチャットを見るも、そこには「未読」の二文字が並んでいる。彼女は俺からの連絡にまだ気づいていない様子だ。

 今日は家で沙綾とゆっくり話したい気分だ。

 最近彼女に対して疑念を抱くことが多かったが、昼間のハプニングのせいというか、おかげというか、彼女とちゃんと話したいという気持ちが湧き上がっている。

 俺は呼吸を整えながら、自宅までの道を歩いた。

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