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第74章:黒の騎士

目の前に、チップ交換カウンターらしきテーブルが見える。

初老の男性職員が、ニコニコとした貼り付けたような笑みを絶やさず、客と応対している。


「ブリリアントカジノにようこそおいでくださいました。チップのご交換はこちらで承っております」

初老の職員は笑みを絶やさず、サシャ達に話しかける。


「チップが欲しいのじゃ!」

トルティヤは一切の躊躇いなく職員に話しかける。


「かしこまりました。チップ1枚につき1000ゴールドからになります」

職員が立っているテーブルには色とりどりのチップが並べられている。


「では…今持っている全財産…12万ゴールド、全て換金じゃ!」

トルティヤは腰に下げていた金貨袋をバサっとテーブルの上に置く。

ずっしりとした音と重みが響く。


「え?ちょっ…トルティヤ!?それはまずいよ!」

トルティヤの行動にサシャは慌てふためき、思わず言葉が漏れる。


「何がまずいのじゃ?ケチケチせず全額賭けるのじゃ!その方が面白かろう」

トルティヤがまた無茶苦茶なことを言い始める。


「いやいや、それはダメだよ。全財産だよ?負けたら一文無しになっちゃうんだよ?」

サシャの顔は青ざめ、トルティヤを諭すように、必死の声色で呟く。


「一文無しになったら、小僧と小娘から借りればよいのじゃ!」

トルティヤは全く遠慮がないように呟く。


「それは人としてだめだよ…」

サシャはトルティヤを諭すように呟く。


「お主は…本当に面白くないのぉ」

トルティヤは頬を膨らませている。

サシャの説得に納得ができないようだった。


「ほら!ハギスの時みたく、どこかに魔具が売っているかもしれないじゃないか!大金があった方が、すぐ魔具も買えるだろ?」

サシャはハギスの時のことを思い出し、咄嗟に話す。


「…むぅ。確かに一理あるのぉ…」

トルティヤはサシャの言葉を聞き、一考する。

そして、じっと金貨袋に視線を向けると、金貨袋を手に取る。


「すまぬ。やはり、6万ゴールドだけをチップに換金にしてくれぬか?」

トルティヤは渋々と言った感じで金貨袋から金貨を6枚取り出す。


「かしこまりました…。チップは籠に入れてお渡しします。こちらの籠に入れてお持ちください」

職員は慣れた手つきでチップを数え、黒い籠を手渡した。

籠の中には色とりどりのチップが収まる。


「うむ」

トルティヤはチップが入った籠を手に取る。

それは、ずっしりとした重みがある。


「僕は…とりあえず1万ゴールドにするよぉ」

アリアは少し緊張した面持ちで呟くと、金貨を差し出した。


「俺は3万ゴールドにしようか。軍資金としては十分だろう…」

リュウも冷静に判断し、チップとゴールドを交換した。


「ふふふ…私は…」

そう呟くとシャロンはポーチから巨大な金貨袋を取り出す。


「20万ゴールド…賭けるわ」

シャロンはなんの躊躇いもなく職員にゴールドを手渡す。


「わぁ…」

サシャ達はシャロンの大胆な行動に目を丸くする。


「(あの破廉恥女…随分と大胆に行くのぉ)」

トルティヤはその様子をじっと見つめる。

すると、それを見た職員が慌てた様子でシャロンに耳打ちをする。


「お客様…あなたは海兵隊ですよね?そんな方が白昼堂々とギャンブルなんて…大丈夫なんですか?」

職員は心配そうな表情をしながらシャロンに尋ねる。


「あら?ここ(ブリリアントカジノ)は客を選ぶのかしら?」

シャロンが不機嫌そうな表情で尋ねる。


「いや…そういう訳では…」

職員は言葉を詰まらせる。

そして、渋々といった表情を見せながらチップを手渡す。


「こちらがチップになります…ごゆっくり」

職員はため息をつきシャロンを見つめる。


「ありがとう」

シャロンはチップを受け取る。


「さて、大博打じゃ!」

トルティヤはチップの入った籠を握りしめ、ニコニコしている。


「ねぇねぇ!早く遊ぼうよぉ!」

アリアは初めてのカジノにウキウキしている様子だった。


そして、サシャ達は絵合わせ箱のコーナーに辿り着く。


「えーっと…このチップをこれに入れればいいのかな?」

アリアは絵合わせ箱についている穴を探し、チップを入れる。

しかし、箱はうんともすんとも言わない。


「あれ?おかしいなぁ…。やり方が違うのかな?」

アリアは箱を見つめながら不思議そうな表情をする。


「これを引くのよ」

シャロンが箱の横についているレバーを引く。

すると、箱の中の絵柄がクルクルと音を立てて回転し始める。


「わぁ!突然動いたよぉ!」

アリアは絵柄が回転したことに驚く。


「あとは、タイミングを合わせてそのボタンを押せばいいのよ」

シャロンが絵柄の下についているボタンを指さした。


「こうかな?せーの!」

アリアが勢いよくボタンを押す。

すると、回転していた絵柄がピタッと止まる。

エビのマーク、魚のマーク、金貨のマークで絵柄が止まる。


「アハハハ!これは、ハズレじゃな」

トルティヤが止まった絵柄を見て馬鹿にすように呟く。


「むぅ!悔しいよぉ!もう一回!」

アリアが再びチップを穴に入れる。


「ふむ…俺もやってみるか」

リュウも近くの絵合わせ箱の前に立ち止まる。


「私も…少しひと稼ぎさせてもらおうかしら」

シャロンも絵合わせ箱にチップを入れ始める。


「(これは正直、期待値が低いギャンブルじゃ。やはり、ギャンブルと言えば…)」

トルティヤの視線の先には、テーブルゲームのエリアを捉えていた。

カードやサイコロで遊んでいる客の姿が見える。


「19…デイラーよ、これで勝負だ!」


「くっ…15…まだいける!引くぞ!」


「では…こちらを」

そこには二人の冒険者らしき男と、デイラーと呼ばれた男性職員がカード遊びをしていた。

デイラーは男にカードを手渡す。


「あぁぁっ!8だ!くそっ!」

赤い髪をした冒険者は悔しそうな表情を見せ、カードを叩きつける。


「では、私の札は…20ですね」

デイラーは裏返しになっていた札をめくる。

そこには、9と書かれた△のカードと、11と書かれ海兵隊らしきものが描かれた〇のカードがテーブルに置いてあった。


「馬鹿な!!これで5連敗目だ…」

もう一人の茶色のマントをした冒険者は愕然としていた。

信じられないといった表情をしている。


「私の勝ちです。もう一戦しますか?」

デイラーはにこやかな笑みで冒険者達に話しかける。


「いや、やめておくよ…今日の俺はダメだ…」


「昨日は大儲けできたのに、今日は連敗続きだな…。ツイてない…」

冒険者達は、肩を落とし、とぼとぼと席を離れていった。

その後ろ姿をデイラーは変わらない笑みで眺めていた。


「哀れじゃのぉ…」

トルティヤは、とぼとぼと歩く冒険者達を見つめ、彼らの敗北を他人事のように語る。


「そこの冒険者さん。私と一戦いかがですか?」

すると、それを見ていたデイラーがトルティヤに話しかけてくる。


「よかろう。ワシの腕前見せてやろうかのぉ!」

トルティヤは意気揚々と呟くと、冒険者達が離れた席に着く。

その顔は、やる気に満ちている。


「大丈夫なの?」

サシャは心配そうに精神世界からトルティヤを不安そうに見つめる。


「ワシに任せておけ!心配無用じゃ」

トルティヤは自信満々に胸を張る。


「お客様、いい心意気ですね。チップは何枚賭けますか?」

デイラーがトルティヤに尋ねる。


「10枚じゃ!」

トルティヤは籠からチップを10枚取り出すとテーブルに置く。


「承知しました。では、カードを配ります」

デイラーはチップを確認すると、慣れた滑らかな手つきでカードをシャッフルする。


「(ふむ…イカサマはしておらんようじゃな…。カードの動きに不自然さはない)」

トルティヤはデイラーの動きをじっと見つめる。

イカサマがないかをチェックしているようだった。


そして、シャッフルが終わると、デイラーは上からカードをトルティヤに2枚、表向きで配る。

カードには△の5と◇の7が描かれていた。


「むぅ…悪くはない出だしじゃのぉ」

トルティヤはじっとカードを見つめる。


「私のカードはこちらですね」

デイラーの手元には〇の12に女王が描かれたカードと、1枚の裏側のカードがあった。


「(デイラーの場も12…ここは…)もう1枚引くぞ…」

トルティヤはデイラーに呟いた。


「承知いたしました」

デイラーは裏側のカードをトルティヤの手元に置き、めくる。

そこには、△の4が描かれていた。


「くっ…(合計16…面倒な数字じゃ。引くべきか…止めるべきか…)」

トルティヤは苦い表情をする。


ちなみに、トルティヤが遊んでいるカードゲームは「漆黒の騎士(ブラックナイト)」という大陸内でもメジャーなカード遊びだ。

親は表のカードを1枚、裏のカードを1枚手元に置き、子は表のカードを2枚手元に置く。

そして、手元のカードの合計値が21に近い方が勝ちとなる。


なお、値が21未満であれば、カードを追加で引くこともできるが、22以上の値になってしまうと、その時点で負けである。

ただし、お互い21以上の場合は引き分けとなる。

なお、21が出た場合は「一撃必殺(ワンヒットキル)」と呼ばれている。


「追加のカードを引きますか?それとも、勝負しますか?」

デイラーがトルティヤに尋ねる。


「ぐぬぬ…引くのじゃ!」

トルティヤは意を決し、カードを引く選択をする。


「では…」

デイラーがカードを引き、テーブルの上に新しいカードが置かれる。

そして、カードがめくられる。


「△の4。お客様の合計は20ですね。素晴らしい手です。私は…」

デイラーはトルティヤのカードを確認し、その合計を告げる。

そして、自身の裏側のカードをめくる。


そこには、◇の7のカードが描かれていた。

デイラーの合計値は19だった。


「19…よって私の負けですね。お客様の見事な勝利です」

デイラーはにこやかな笑みを見せる。


「やったのじゃ!!ワシの勝ちじゃ!」

トルティヤは高らかに叫び、ガッツポーズをする。

すると、手元に先ほど賭けた倍のチップが戻ってくる。


「おお!がっぽりだ!!」

その状況に精神世界のサシャも笑みがこぼれる。


「お見事です。よろしければ、もう一戦しますか?」

デイラーが拍手をしながらトルティヤに尋ねる。


「もちろんじゃ!!」

トルティヤは自信満々に再戦を申し出た。


「ワシの値は21!一撃必殺(ワンヒットキル)じゃ!」


「20!ワシの勝ちじゃ!」


「お強い。素晴らしい判断ですね」

トルティヤはとんとん拍子で3連勝を重ねた。

手元のチップがどんどん増えていく。


「トルティヤ、十分勝ったんだし、この辺にしようよ?」

サシャは精神世界からトルティヤに止めるように呟く。

このまま連勝が続くとは思えないと思ったからだ。

しかし、トルティヤのやる気は衰えず、むしろ増していた。


「いや!ここからが楽しいところなのじゃ!次は更に倍かけるぞ!」

トルティヤは豪快にチップを20枚賭けた。


「ふふふ…お客様、絶好調でございますね」

デイラーはそのチップを笑顔で受け取る。

その笑みは変わらないように見えたが、サシャにはどこか不気味さを孕んでいるようにも見えた。


「ではこちらで…」

デイラーがテーブルに滑らかな手つきで、カードを置き終える。

デイラー側のカードは表向きで王様が描かれた◇の13、そして1枚の裏向きのカード。

トルティヤ側のカードは△の9と〇の9だった。


「…(ワシのカードは合計18。悪くない数値じゃ。欲張っても仕方ないのぉ。ここは堅実に行くべきじゃ)ワシはこれで勝負じゃ」

トルティヤはカードを引かず、勝負をかける。


「では…私のカードは…」

デイラーが裏向きになっていた自身のカードをめくる。

そこには、〇の6が描かれており、デイラーの合計値は19になった。


「むむむ…ワシの負けか…!」

トルティヤは苦虫を嚙み潰したような表情をする。


「私の運がよかったようですね…。惜しかったです。いかがしますか?もう一戦されますか?」

デイラーが笑みを見せ呟く。


「も、もう一戦じゃ!負けられんのじゃ!」

トルティヤはムキになっており、感情的になっている。

再びチップを20枚、力強くテーブルに置いた。


「21…一撃必殺(ワンヒットキル)。私の勝ちですね」


「20…僅差ですが私の勝ちです。お客様、運に見放されているようです」

トルティヤはそのまま3連敗してしまい、手元のチップがみるみる減っていく。

そして、残りのチップが30枚になる。


「ぐぬぅ…デイラーの掌の上で転がされておったか…!!」

精神世界でトルティヤは悔しそうな表情を見せ、地団駄を踏んでいた。


「あぁ…言わんこっちゃない!もうチップが30枚しかないよ!」

チップの枚数を見て、サシャは精神世界で慌てた表情を見せる。


「大丈夫じゃ!次こそ勝つのじゃ!」

しかし、トルティヤはムキになっており、サシャの言葉に耳を貸さない。

その目は勝利に飢えてギラギラしている。


「けど…運に見放されているよ…」

サシャはトルティヤの言葉にがくっと肩を落とす。


「ワシが負けっぱなしなんて…ありえんのじゃ!残り30枚を全て賭ける!」

トルティヤは堂々とチップを30枚、テーブルの中央に押し出した。


「背水の陣という訳ですね…。その覚悟、見事です。私もお客様の覚悟に応えなければなりませんね」

デイラーはチップを受け取ると、変わらないはずの笑みが少しだけ歪むように見えた。


そして、最期の戦いが始まり、周囲の空気は張りつめる。

デイラーは慣れた滑らかな手つきでカードをシャッフルし、カードを配る。


「(むぅ…これは…)」

トルティヤは配られたカードを見て、顔をしかめる。

テーブルには表向きで◇の王様が描かれた13と△の4だった。


「さ、いかがされますか?お客様の手は17ですね」

デイラーの手元には表向きで△の10が描かれたカードが置いてある。


「(17…普通なら勝負に出るところじゃが、さっきから臆して負けておる…。デイラーの表は10…。勝負に出るにはリスクが高いか…ならば…)カードを1枚引くのじゃ!」

トルティヤはゴクリと息を呑む。


「承知いたしました」

デイラーが山札に手をかけ、カードをトルティヤの手元に置く。

互いの表情に緊張が走る。


そして、カードがめくられる。


「△の4…!お客様の合計は21、一撃必殺(ワンヒットキル)ですね。お見事です!」

めくられたカードは△の4だった。

カードの合計値は21。一撃必殺(ワンヒットキル)だった。


そして、デイラーは自身の手元の裏向きのカードをめくる。

そこには、〇の4が描かれていた。


「14…もう一枚引きましょう」

デイラーも山札からカードを1枚引く。

これで21が出れば引き分け。

それ以外ならトルティヤの勝ちだ。


「…」

トルティヤの心臓が高鳴る。

そして、カードがそっとめくられる。


そこには△の10が描かれていた。


「数字は合計24…よって私の負けですね。お客様の見事な勝利です。おめでとうございます」

デイラーは笑みを見せながら小さく拍手をする。


「やったのじゃ!!」

トルティヤの緊張の糸が解け、安堵と喜びが入り混じった大きなため息をつく。


60枚のチップがトルティヤの手元に置かれる。

プラマイゼロで元に戻っただけだったが。


「ほっ…勝ったんだ…。けど、最初とチップの枚数が変わらないじゃないか…」

精神世界でサシャは安堵のため息をつきながらも、ぼそりと呟いた。


「枚数なんぞ、どうでもいいのじゃ!勝つか負けるか。ギャンブルはそこが楽しいのじゃろうが!」

トルティヤが頬を膨らませる。

結果より過程が大事だと言いたそうな表情をしている。


その時、楽しそうな声と共に、アリアとリュウ、シャロンがやってくる。

彼らの手には、たくさんのチップが入った籠が抱えられている。


「あ!トルティヤ!こんなところにいたんだ!探したよぉ!」

アリアが駆け寄ってくる。

その顔は満面の笑みをしていた。


「いないと思ったら、札遊びをしていたのか…」

リュウも落ち着いた様子で近づいた。

彼の籠にもチップがたくさん入っていた。


「あら、漆黒の騎士(ブラックナイト)を遊ぶだなんて…なかなかチャレンジャーじゃない?」

シャロンがトルティヤをからかうように呟く。


「お主達、なんじゃそれは?大量のチップではないか!」

トルティヤは目を丸くし。三人の籠を見つめる。


「お嬢ちゃんったら、絵合わせ箱で777(トリプルセブン)を引いたのよ」

シャロンがアリアの肩に手を置き呟く。


「ト、トリプルセブンじゃと!?」

トルティヤは大きく目を見開き驚いた表情を見せる。


「えへへ…実はね…」

アリアが事の経緯を楽しそうに話す。


トルティヤが漆黒の騎士で遊んでいた頃。


「あちゃ…これが最後のチップになっちゃったよぉ…」

アリアはあれから当たりが出ずにいた。

そして、最後のチップを手に取ると絵合わせ箱に入れる。


「…」

アリアはじっと回転する絵柄を見つめる。

そして、直感的にボタンを押した。


「あ!」

アリアが驚きの声を上げる。

そこには、七色に輝く「7」が横一列に並んでいた。

派手なファンファーレが絵合わせ箱から鳴り響くと、ジャラジャラと大量のチップが下部分から落ちてくる。


「ちょっと…嘘でしょ」

シャロンはアリアの引きに驚きを隠せない。


「なんか当たったよぉ!」

アリアは大喜びする。


「アリアも当たりを引いたのか」

すぐ後ろの絵合わせ箱で遊んでいたリュウが近づいた。

彼の絵合わせ箱からも金貨が三つ並んだ絵柄が表示されており、手には大量のチップが入った籠を持っていた。


「うん!なんか数字の7が並んだんだ!」

アリアは無邪気な笑みでそう告げた。


そして、現在。

トルティヤはその話を聞いて目を丸くしていた。

口を半開きにし、信じられないといった顔をしている。


「な…なんじゃと…(小娘め、絵合わせで相当確率が低い777(トリプルセブン)を当ておるとは…。しかも小僧まで当たりを引くとは…!ワシがあんなに苦労したというのに!)」

心の中で悔しさが込み上げる。


「私はからっきしだったけどね…ま、マイナス3万ゴールドくらいだから痛くもかゆくもないわ」

シャロンは当たりを引けなかったようだが、元手が多いのか余裕の表情を浮かべていた。


「アリア…すごい豪運だ…」

トルティヤと精神世界のサシャはアリアの運の良さに驚きを隠せない。


「トルティヤの首尾はどうだったの?結構稼げた?」

アリアは純粋な表情をしてトルティヤに尋ねる。


「も、もちろん勝ったわい!ワシにかかれば朝飯前じゃ!」

トルティヤは少し動揺したようにしつつも、強がるように話す。

実際は、プラマイゼロだったが、そこはひた隠しにする。


「俺も結構、稼がせてもらった。刀を買う資金の足しにはなっただろう」

リュウが籠に入ったチップを持ち上げる。


「ぐぬぬぬぬ…!」

精神世界でトルティヤが声にならない声をあげている。


「ト、トルティヤ…この辺にしとこう!十分楽しんだだろう?ね?」

サシャは悔しさで今にも暴走しそうなトルティヤを宥める。


「いや!ここからが本番じゃ!ワシも絵合わせをするのじゃ!さっき勝てたから行けるじゃろう!」

だが、トルティヤはサシャの意思を無視して、ムキになった表情で絵合わせ箱の方に急に方向転換した。


「トルティヤ…あぁ…こりゃダメだ…。止められない…」

サシャはがっくりと肩を落とし、トルティヤの暴走を止めることはできないと悟った。

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