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第69章:大喧嘩

「減らず口を…口数の多いやつは嫌いだ。深淵魔法-夜影の騎士(ナイトオブナイト)-!」

魔導師が魔法を詠唱すると、彼の足元から闇が湧き上がり、見る見るうちに無数の兵士へと形を変えた。

それらは影絵のように真っ黒な兵士で、それぞれが剣や斧、槍といった武器を構え、ざわめきと共にトルティヤを囲い込むようにじわじわと迫る。


「囲まれたよ!」

サシャ(トルティヤ)は周囲を見渡し狼狽する。


「慌てるでない…砂鉄魔法-砂宝剣(サンドサーベル)-!!」

そう呟くとトルティヤは魔法を詠唱する。

彼女の目の前に砂鉄が集まり、カチカチという音と共に巨大な刀へと形を変えた。


トルティヤは砂宝剣を操ると、凄まじい勢いで鋭い横なぎを払った。

横なぎを受けた闇の兵士は、紙のように次々と斬り裂かれて消えていく。


「これしきで防げると思うな」

だが、闇でできた兵士は無数に現れ続け、トルティヤが砂宝剣を振るう剣筋の合間を縫うようにトルティヤに襲い掛かってくる。


「ちっ…こざかしい」

闇の兵士が持つ剣や斧はトルティヤの肉体を狙い、次々とその皮膚を少しずつ削っていく。

トルティヤの肉体からうっすらと血が流れ始めた。


「どうした?トルティヤならば、これくらい余裕で抑えきれるだろう?」

魔導師が更に魔力を高める。

闇の中からは兵士がわらわらと際限なくあふれ出た。


「仕方ないのぉ…無限魔法-宵闇の桜(よいやみのさくら)-!」

次の瞬間、トルティヤから鮮やかな色の鋭い花びらが無数に舞い、次々と兵士を斬り裂いていった。


「からの…無限魔法-白き大嵐(ホワイトテンペスト)-!!」

トルティヤは矢継ぎ早に魔法を放つ。

嵐を纏った白い雷が轟音と共に魔導師めがけて放たれた。

それは周囲の闇の兵士を巻き込み、塵に変えながら次々と打ち消していった。


「ほう。トルティヤの魔法をここまで再現する猛者がいるとは…」

白い雷が魔導師の目の前に凄まじい勢いで迫る。

しかし、魔導師は冷静だった。


「ドーン!!」

白い雷は魔導師に直撃する。

あたりに凄まじい衝撃音と爆風が巻き起こる。

そして、雷は、そのまま近くにあった柱に暴風が直撃し、柱は音をたてて崩れていった。


「…どうじゃ。これでもワシじゃと認めぬか」

トルティヤは砂煙を見つめ、勝ち誇ったように呟いた。

しかし、無限魔法の連発でその顔はうっすらと汗が滲んでいた。

それは、サシャの肉体への負担が大きいことを示していた。


「確かにトルティヤの魔法、トルティヤに近い魔力、そしてその話し方…本人に限りなく近いな。それでも…」

砂煙の中から魔導師が姿を見せる。

彼の全身をもやもやとした灰色のベールが包み込んでいた。


「混沌魔法…荒廃の死灰デソレーションアッシュ。認める訳にはいかぬな」

魔導師がそう呟くと、灰色のベールはふっと霧になって消え去った。


「(ちっ…このままでは埒が明かないのぉ。この肉体では魔力にも限界がある)」

トルティヤは一考する。

サシャの体ではクロウリーを完全に圧倒できないと判断したのだ。

そして、精神世界にいるサシャに向かって口を開く。


「小僧、また肉体を借り受けるぞ」

トルティヤはサシャの手を強く握る。


「え?いいけど、このままでも…」

サシャはトルティヤの意図を完全に理解できずにいた。


「勝てなくはないじゃろうがジリ貧になる。それに、あの石頭はワシが直々に顔を出さねば気が済まないらしいのぉ。魔具のために、ワシの言うとおりにするのじゃ」

トルティヤはサシャに自身の判断の理由を説明する。


「…分かった。気を付けてね」

サシャはトルティヤの言葉を受け入れ、彼に笑みを見せた。


「分かってくれるならよいのじゃ」

そう呟くとトルティヤは魔法を詠唱する。


「天に泣きて天を憎め。滅びの歌を奏で全てを無に帰せ」

トルティヤが魔法の言葉を紡ぐ。


「…!」

次の瞬間、サシャは水晶に閉じ込められ、その上から厳重に鎖が巻き付いた。

そして、サシャの肉体が光りだす。


「次はなんだ?」

魔導師はじっとトルティヤの方を凝視する。


「…うむ。やはりこの肉体の方がしっくりくるのじゃ」

光が止むと、サシャの肉体はトルティヤの本来の肉体へと変化していた。

白い長い髪、紅い瞳、そして背中にはトレードマークの黒い翼をした堕天使の姿がそこにあった。


「…トルティヤ」

魔導師は真の姿を現したトルティヤを見て、ボソリとその名前を呟いた。


「これで分かったじゃろう?100パーセントワシじゃ!」

トルティヤは魔導師に胸を張り自信満々に告げた。

クロウリーにトルティヤ本人であることを認めさせようとする。


「否。まだ小生は認めておらん…」

すると魔導師は再び魔法を詠唱する。

明らかに動揺しながらも、戦う意志を見せる。


「粉塵魔法-紅蓮狂乱(ぐれんきょうらん)-!」

魔導師が魔法を放つと、炎を内包したような鮮やかな赤い粉塵が凄まじい速さで飛来し、トルティヤの周辺だけでなく、倒れているアリアやリュウの周りにも漂い始める。


「(これは!?…まずい!!)」

トルティヤは粉塵の性質と、その狙いに気づき、対抗するように魔法を唱える。


「偽物は爆発四散するといい」

魔導師が粉塵に魔力を込め、爆発を促す。


「チュドーン!!!!!」

次の瞬間、赤い粉塵が一斉に爆発した。

祭壇全体が揺れ、衝撃波が洞窟全体に響き渡った。

あたりを凄まじい爆風と灼熱の炎が包み、それは全てを焼き尽くすかのような威力だった。


「…これでお終いだな」

魔導師は爆心地の砂煙の方向に視線を向けた。

やがて、砂煙が少しずつ晴れる。


すると、爆心地の近くに、三つの繭があった。

一つはトルティヤを包んでいた繭、そして残りはアリアとリュウを包んでいた繭だ。

トルティヤを包んでいた繭は半分ほど焼け焦げていたが、リュウとアリアがいた場所には無傷の繭があった。


「…糸魔法-信奉者の聖域-。ギリギリじゃったわい」

爆心地の近くにいたトルティヤの左半身は、炎の直撃を受けてところどころが火傷で赤く焼けていた。


「仲間をかばったか…トルティヤらしくないことを」

魔導師はトルティヤの火傷を見て嘲るように呟いた。

そして、追撃をかけんと言わんばかりに杖を構え、魔法を唱える。


「深淵魔法-宵闇の呪縛(ダークネススネア)-」

魔導師の杖の先から黒く歪な塊が放たれる。


「当たらなければ問題ないのじゃ」

トルティヤは左半身の痛みを堪えつつ、黒い塊を視認し後方に高速で回避する。


「治癒魔法-六花の朝露(りっかのあさつゆ)-」

魔導師の魔法を回避しつつ、トルティヤは魔法を唱える。

すると、緑色の光が現れ、トルティヤの火傷部分に触れる。

火傷はみるみるうちに消え、皮膚の色が元に戻っていく。


「…器用なやつだ」

だが、魔導師は連続で黒い塊を放つ。

数を増やして回避を困難にするという魂胆だった。


「いつまでそんな技を使っておる…」

トルティヤは翼で空中を自在に飛び回り、迫りくる黒い塊を全て回避した。


「今度はワシの番じゃ…」

トルティヤが魔法を唱える。


「無限魔法-真・氷雷虎(しん・ひょうらいこ)-」

次の瞬間、咆哮と共に紫色の雷を纏った巨大な虎が5匹現れる。

それらは氷と雷が融合したような、力強い輝きを放つ虎だった。


「行くのじゃ!」

トルティヤが合図を出すと、氷の虎は一斉に魔導師に襲い掛かる。

氷の虎は地面を蹴り、跳躍する。


「どこまでもトルティヤの真似をしおって…」

魔導師が更に魔力を高める。

体から赤色の禍々しいオーラが立ち昇る。


「混沌魔法-無垢なる渦動(イノセントスパイラル)-!」

魔導師が持つ杖の先端から白と黒の魔力が混ざり会う。

次の瞬間、灰色の凄まじい破壊力を持った螺旋状の光線が、空気を切り裂き氷の虎をめがけて次から次へと放たれる。


「ガゥゥ…」

無垢なる渦動の直撃を受けたうち三匹の氷の虎が、悲鳴を上げて消滅した。しかし、攻撃の合間を縫って、残りの二匹が魔導師向かって猛然と飛び掛かる。


「ガブッ!」

氷の虎の牙がついに魔導師の肩と足を捉える。

噛み付かれた箇所からは、冷気と痺れが広がる。


「くっ…(魔力が乱される)」

魔導師は体が痺れて動けずにいる。

更に、噛まれた箇所が凍り付き始めた。


「魔力で凍結を阻止しおったか。やりおるわい」

トルティヤはその様子を見つめると、追撃の魔法を唱える。


「お主が本物のクロウリーなら死ぬことはあるまい…今、ワシが出せる全力の魔法じゃ…無限魔法-真・堕天撃滅砲しん・だてんげきめつほう-」

トルティヤの目の前に灰色の巨大な魔法陣が現れる。

そこから、全てを破壊せんとする威力を秘めた、一本の黒と白の螺旋状のレーザーが放たれる。

それは、轟音と共に空間を歪ませながら魔導師に向かって飛んでいく。


「まだ…終わって…いない!!」

魔導師は気合いで雷による麻痺を解き、急ぐように魔法を唱える。

全魔力を杖先に集中させる。


「塵沌魔法-無へ還す者の一撃リベレートクリティカル-!!」

そして、魔導師はありったけの魔力を込めて、空気を震わせるような一撃を放った。

それは、灰のように薄暗く、しかしながら無数の光の粒が集まったような、キラキラと輝く光線だ。

まさに、闇と光、そして粉塵が見事に合わさった魔法だった。


「その魔法…お主は…やはりクロウリーじゃな!!この感覚、久々じゃのぉ!!」

トルティヤの魔力が更に高まる。

全身から魔力が迸し、感情が昂ぶり、その紅い瞳がカッと見開かれる。


「…トルティヤ」

その時、魔導師の脳裏にとある日のことが、鮮やかに過る。


-130年前 サージャス公国 ルーデルン遺跡にて-


荒涼としたサージャス公国の山間。

その中にある古びたルーデルン遺跡の奥深くにトルティヤはいた。

石造りの壁には古代文字が刻まれ、神秘的な雰囲気が漂っていた。


「これが…世界を示す円盤(ワールドディスク)

遺跡の最深部、朽ちた台座の上に置かれた光を放つ円盤を、トルティヤは手に取っていた。

手にしたトルティヤの顔に、僅かな驚きと満足の色が浮かぶ。


世界を示す円盤(ワールドディスク)

直近に起きる大きな事件や災厄が起きる場所を示す魔具として知られていた。


「さて…ここにもう用はないのぉ」

トルティヤは目的の魔具を手に入れ、出口に向かおうとした時、背後から声がかけられる。


「そこの!ちょっと待てよ!」

背後から赤いローブを羽織った青年が、トルティヤに声をかけてきた。

年の頃はトルティヤとそう変わらないか、少し幼く見える。

その瞳には生意気な光が宿り、口元には自信にあふれた笑みが浮かんでいた。


「なんじゃお主は?」

トルティヤは青年に声をかける。


「それは古代の財宝だろ?俺によこせよ!」

青年は視線を合わせるなり、無茶苦茶な要求をする。


「嫌じゃ」

しかし、トルティヤはそれを一蹴する。


「ふざけるな!この遺跡は俺が先に探索していた!だから俺のものだ!」

青年はトルティヤに言いがかりをつける。


「そんなこと知らん。ワシが宝箱を先に見つけたのじゃ。だから、お主に渡す義理もないのぉ。それに、お主がワシより先に遺跡に入ったという根拠もないしのぉ」

トルティヤは青年を無視し、一歩も立ち止まらずに出口に向かって歩き続ける。


「ぐぐぐ…確かに…」

青年はトルティヤの冷静な言葉に論破され、悔しそうな表情を見せる。


「分かったらワシの前から消えよ。目障りじゃ…」

トルティヤは冷静な声色で青年に呟く。


「待てよ!だったら、俺と勝負だ!俺が勝ったらそれをもらう…文句ないだろ?」

それでも青年はひくことなく、トルティヤに勝負を挑んでくる。


「はぁ…(この手の輩は一度黙らせておいた方が得策じゃのぉ)」

トルティヤはため息をつきながらも口を開く。


「よかろう。その勝負受けてたとうではないか」

トルティヤはニヤリと笑った。


「じゃが、ここでは狭すぎる。外に出てからじゃ」

トルティヤは場所を移すことを提案する。


「いいだろう…外に出た瞬間に、逃げんなよ!」

青年は念を押すように叫ぶ。


こうして、トルティヤと少年は遺跡の外へ出た。


遺跡の外は爽やかな風が吹いており、太陽が燦々と大地を照らしていた。

見渡す限りの緑と荒地が広がる開放的な空間だ。


「ワシが勝ったら有り金を全部渡すのじゃ。それでよかろう?」

トルティヤは青年に尋ねる。


「いいだろう…!」

青年はそう呟くと、迷わず杖を構える。

彼の顔には自信が浮かんでいた。


風が一瞬強くなる。

それが二人の勝負の合図だった。


「俺から行くぜ!深淵魔法-黒の奇術(ブラックマギア)-!」

青年の杖から闇が凝縮され、歪な形をした黒い鳩が数羽、トルティヤめがけて凄まじい速さで飛来する。


「ただの手品じゃな。火魔法-神聖なる煌鳥セイントスパーキングバード-!」

トルティヤは相手の出方を伺うと言わんばかりに、指先に魔力を集め、燃え盛る火の鳥を数羽、黒い鳩に向けて放つ。


「ボボン!」

火魔法と闇魔法が空中でぶつかり、小規模の爆発が起きる。


「これで終わらんぞ!土魔法-大地の大巨人(グランドタイタン)-」

トルティヤが魔法を唱えると、足元の地面がゴゴゴと重厚な音を立てて盛り上がり、巨大なゴーレムへと形を変えた。


「その生意気な小僧をひねりつぶすのじゃ」

トルティヤはゴーレムに命令を下すと、ゴーレムはゆっくりと片足をあげた。


「へぇ…アンタも複数魔法使用者(マルチマジカリスト)ってわけね。面白い…!」

青年はニヤリと笑うと、トルティヤが複数魔法使用者(マルチマジカリスト)であることに気づき、興味を示す。

そして、次の魔法を素早く繰り出す。


「閃光魔法-光鉱の護幕(ブリリアントカーテン)-!」

すると青年の頭上に光り輝く鉱石でできたカーテンが猛烈な速さで出現する。


「からの…深淵魔法-黒針(ブラックスピア)-!」

そして、カーテンの上に闇で象られた鋭い棘が無数に生えた。


「…」

ゴーレムの勢いが止まらず、そのまま棘が生えた壁を踏みつける。

だが、それはゴーレムの力を利用したカウンターとなり、壁の棘が突き刺さり、そのままゴーレムの足を粉々に破壊した。

ゴゴーッと土砂が崩れる音が響き、ゴーレムは塵となった。


「ほう…ガキのくせにやるではないか。お主、名前は?死ぬ前に聞いといてやる」

トルティヤは小馬鹿にするように拍手をすると、青年の名前を尋ねた。


「ガキって…お前が言うなよ。まぁいい、俺はクロウリー…クロウリー・シェルクロム!天才魔導師様だぜ!」

偉そうに腕組をしながら、クロウリーと名乗った青年が叫ぶように呟いた。


「て、天才…ぷぷぷ…」

だが、それを聞いたトルティヤは肩を震わせ、笑いを我慢している。


「な、なにがおかしいんだ!?」

クロウリーは顔を赤くしてトルティヤに尋ねる。


「天才…じゃと。アッハハハ!ワシに向かって…アッハハハハハ…!笑いが止まらぬわい!」

トルティヤはクロウリーを指さして大爆笑する。


「そ、そうだ!俺は天才なんだぞ!魔法だって三つも使える!お前は二つ!つまり、お前より俺は天才ってことなんだよ!」

クロウリーは早口でまくしたて、必死に自分の理論を展開する。


「おもしろいやつじゃ…実はワシも天才でやらしてもらっててのぉ。キャラが被ってしまったが故に、ついつい笑ってしまった」

トルティヤは笑いを収め、クロウリーに告げる。


「だけど、お前は魔法を二つしか使えないんじゃ?というより、普通の複数魔法使用者(マルチマジカリスト)は二つしか使えないはずだろう!」

クロウリーはトルティヤの言葉にさらに困惑し、問い詰める。


「誰が二つしか使えぬと言った?」

トルティヤはそう呟くと、笑いを完全に収め、真剣な表情になる。

そして、次の魔法を詠唱する準備に入る。


「斬魔法-逢魔の鍵爪(おうまのかぎつめ)-」

トルティヤが魔法を放つと、不可視の鋭い斬撃が放たれる。

それは、威嚇するようにクロウリーのすぐ真横を狙って放った。


「…!!」

その斬撃はクロウリーのすぐ真横を凄まじい速さで通過していった。

彼は何が起きたのか理解できずにいた。

そして、そのまま斬撃は、奥にある大木に直撃する。


「メキメキメキ…」

大木は悲鳴のような音を立てて真っ二つに斬れ、メキメキと音を立てて折れていった。


「…三つ目の魔法!?俺以外にもそんな人が…」

クロウリーの表情に驚愕と焦りの色が濃く見える。

トルティヤの実力が予想を遥かに超えていたことに気づき始める。


「まだまだ行くのじゃ!ワシの魔法はこれだけではないわい!雷鳴魔法-雷光千鳥(らいこうちどり)-!」

次の瞬間、トルティヤからバチバチと音を立てて雷で形成された巨大な鳥が素早い速度でクロウリーに迫る。


「四つ目だと!?」

クロウリーは状況に慌てるも、冷静に回避行動に移る。

雷鳥が彼の横を通り過ぎる。


「これで避けたと思うたか?」

トルティヤはニヤリと呟く。


「なに!?」

クロウリーがトルティヤの声に誘われて後ろを振り向く。

そこに、先ほど真横を通過していったはずの雷鳥が、軌道を変えてこちらに向かってきていた。


「ほれ、お終いじゃ」

そして、雷鳥はクロウリーに直撃する。


「ぐぁぁあああ!」

クロウリーは鳥の直撃を受け、体中を電撃が走り、悲鳴を上げる。


「…はぁ、ぐっ」

クロウリーは地面に倒れ込む。

全身が痺れ、呼吸が乱れている。


「どうした?ワシより『天才』…なんじゃろ?」

トルティヤがゆっくりとクロウリーに近づいてくる。


「へっ…そんな魔法の攻撃…」

しかし、クロウリーはゆらゆらと体を震わせながらも立ち上がる。


「俺にとってはモーニングルーティンみたいなもんだ!」

クロウリーは息を切らしながらも、強がりを言って立ち上がった。

その目にはまだ強い戦意が宿っている。


「ほう。その辺の雑魚とは違うようじゃな」

トルティヤはクロウリーのタフさに感心し、後ろに下がり距離をとる。


「さ…まだここからだぜ!」

こうして、二人は草原で再び向かい合った。

互いの実力を認め合いながらも、戦いは続く。


そして、現代。


「(あれから三日三晩戦い続けた。お互いの魔力が尽きかけるまで…あの時と同じように、今また、決着をつけようとしている) 」

魔導師は魔力を更に高める。

全身から魔力が迸り、凄まじいオーラが立ち昇る。


「これで…終わりじゃ…!!目を覚まさんかい!クロウリー!!!」

トルティヤの魔法の威力が更に高まり、トルティヤの魔力が最高潮に達する。

そして、魔導師に向けて放つ光線が一段と大きくなり、魔導師の魔法を明確に上回った。


「…ふっ。無念。あの時と同じ結末か」

魔導師はそれを悟り、静かに呟いた。

そして、トルティヤの放つ光線が魔導師の魔法を力強く飲み込んでいく。

光と闇がぶつかり合い、空間が歪み、魔導師を光線が襲う。


「ボーン!」

次の刹那、祭壇にけたたましい爆音が響いた。

轟音と衝撃波が洞窟全体を揺るがし、砂煙が天井まで舞い上がった。

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